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雨の木(レインツリー)
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バリ島の西端からフェリーに乗り込んで青い海をわたり1時間、ジャワ島の東端に着く。南下してバニュワンギの町を通り抜けた先にそれはあった。雨の木(レインツリー)が生い茂る公園。地元の観光名所なのか入園料がかかり飲食店もいくつかあった。レインツリー、本物のレインツリー。見るのはおそらくこれが初めてだ。雨の木といえば自分には大江健三郎。読んだことがなかったので帰国後、初版の単行本を取り寄せてみた。お気楽作家、大江。初出はいずれも文學界と新潮だ。あの頃、リアルタイムで読む可能性があったかといえば、可能性はゼロだったと即答できる。私の当時の心理状態は一切の文学的なるものを拒絶していた。もしあの頃、リアルタイムで大江を読んでいたら、あるいは大江を読む心の余裕があったなら自分の人生はそのあとどう展開していたのだろうと思わないでもないが、もうすべては終わったことだ。いま読む大江は予想通りだった。高安カッチャン、と昔の同級生の名を何度も気軽に連呼し、その生きざまと死を風刺しながら、師についてはフィクションの中でさえ名前を出すのが恐れ多いようでイニシャルにとどめ、神のように祭り上げる。これこそ大江の卑しき心性だろう。
二枚舌をストレスなく使いこなせるようになるまで自分はいったい何年かかったのだろう?大江のように若い時からそうだったら人生はもっと楽だったろうか?
それとも問題はそこにはなかったか?ひとかどの社会人になろうとして必死でもがき試行錯誤の連続で、心の余裕がなかっただけではなかったか?
熱帯の雨はツカエル。熱帯の夜の雨に理性が狂い、誘惑に負ける宣教師に始まり、この雨の木を聴く女たち、とか。
バニュワンギの雨の木にはツリーハウスが取り付けられ、一度に10オラン、つまり10人まで樹上の人になって良いという。国内から来た色黒い娘たちが思い思いに自撮りしながら若さを振り撒いていた。大江の想像力を借りるならば、この中の数名は理不尽な性暴力の被害者であり、にもかかわらず被害にあった己を受容しているのであり、私もまた旅先の夜に彼女たちを襲わないとは限らない、とでもなるのだろう。
二枚舌をストレスなく使いこなせるようになるまで自分はいったい何年かかったのだろう?大江のように若い時からそうだったら人生はもっと楽だったろうか?
それとも問題はそこにはなかったか?ひとかどの社会人になろうとして必死でもがき試行錯誤の連続で、心の余裕がなかっただけではなかったか?
熱帯の雨はツカエル。熱帯の夜の雨に理性が狂い、誘惑に負ける宣教師に始まり、この雨の木を聴く女たち、とか。
バニュワンギの雨の木にはツリーハウスが取り付けられ、一度に10オラン、つまり10人まで樹上の人になって良いという。国内から来た色黒い娘たちが思い思いに自撮りしながら若さを振り撒いていた。大江の想像力を借りるならば、この中の数名は理不尽な性暴力の被害者であり、にもかかわらず被害にあった己を受容しているのであり、私もまた旅先の夜に彼女たちを襲わないとは限らない、とでもなるのだろう。
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