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門司港へ不時着

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黄島は、青山を担いで、メカに乗り込み、爆発に巻き込まれた。しかし、コックピットが頑丈に作られていたため、メカが浮き輪代わりとなり、黄島は、門司港に辿り着いた。

黄島は、メカの中で、目を覚ました。
「う…。お、俺は?」
黄島は、コックピットから、外へ出た。そこは、黄島にとっては、全く分からない港町だった。

一方、九州の地で悪事を働かせる鬼軍団が、門司港に姿を現した。
「この港町に支部を作り、日本進出を企てるのだ!」
そこへ、バイクを派手にかき鳴らして、五人の戦士が現れた。
「レッド一号!」
「ブラック二号!」
「ブルー三号!」
「イエロー四号!」
「ピンク五号!」
「燃える暴走魂!五つ星戦隊バクソウレンジャー」
その闘いの様子は、不時着した黄島も目の当たりにした。
「この街にも、正義のヒーローがいるのか。」
闘いは、バクソウレンジャーが優勢だったが、
「おのれ、鬼爆弾!」
鬼軍団は、バクソウレンジャーに爆弾をしかけ、勢いで、ブラック二号が爆風に巻き込まれた。
「うわっ!」
そして、戦闘ヘルメットが飛ばされ、素顔のまま、黄島の前に倒れた。
「あ、青山?」
黄島は、ブラック二号の顔を見て、困惑した。それは、闘いに敗れ、亡くなった青山の顔に似た男だった。しかし、ピンチを救わない訳にはいかず、男を抱え上げ、安全な場所へ逃げた。

男は、黄島に運ばれている途中で気がついた。
「お前は?」
黄島は、
「俺は…、悪党だ。」
と、曖昧な返事をした。
「悪党、鬼軍団の一味か?」
「そんなことより、お前は、青山、じゃねえよな?」
男の質問を遮って、黄島が聞き返した。
「青山?俺は、黒岩だ。」
「そっか。やっぱ、人違いだ。」
黄島は、愉快そうに笑った。その様子を見た黒岩は、
「お前、本当に悪党なのか?そうは見えないぞ?」
と、いかにも味方かのような素振りで話した。そして、黒岩は、住家のないという黄島を、五つ星戦隊の基地へ案内した。

「黄島っていうのか。俺は、赤井だ。よろしくな。」
五つ星戦隊のリーダー、赤井が、黄島に紹介した。
「ところで、青山っていうのは?」
黒岩は、自分と間違えられた青山という人物が気になっていた。
「…俺の味方、ギャングスターの仲間さ。」
「ギャングスター?まさか、東京を支配していた悪党か?」
黄島が、赤井の言葉に頷くと、赤井は、以前に東京の街を支配したと言われる伝説を思い出し、少し警戒した。
「でも、メトロレンジャーの力で、ギャングスターは崩壊したんじゃ。」
五つ星戦隊の隊員の一人が、ギャングスターの謎を突き止めた。
「ああ。倒れた青山を連れて、メカごと爆破したんだ。けど、俺だけこの街にさ迷っちまったみたいで…。」
「赤井、どうするんだ?俺は、こいつが悪党だと思えない。出来れば、匿ってやりたいんだ。」
黒岩が、赤井に相談すると、赤井は、
「…じゃあ、しばらく黒岩が面倒見てやれ。」
と、黒岩が黄島を呼び込むように、指示した。

黒岩の部屋へ案内された黄島は、表に出ていたバイクの様子や、部屋の内装を見て、過去の暴走族時代の自分を思い出した。
「…何だか、暴走族みてえだな。」
黄島が、ボソッと呟くと、
「どうして分かるんだ?」
と、黒岩は、正体を垣間見られた気持ちで、不思議に思った。
「俺も、昔は暴走族でな。バイクとトラックだけは、経験あって、だから、何か共感できるものがあったんだ。」
「じゃあ、出で立ちは、俺たちと同じなんだな。五つ星戦隊も、昔は暴走族だった。でも、黄島は、どうして悪党なんかに?」
黄島が暴走族だったことを知った黒岩は、同じ過去を持つもの同士で、疑問を投げかけた。
「死んだ青山に憧れてたのさ。東京を手に入れるって夢に情熱を抱いてた、青山に。」
黒岩は、黄島にある情熱を感じて、特別な感情を覚えた。黄島も、青山に似た黒岩に、特別な感情を抱いた。
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