鉄風雷火のフレームライダー ~少女たちの機影は遥か~

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戦闘記録 アンジェラとアナトリア

記録中断:二人の“渡り鳥” 

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 依頼を終えた二人は、自分たちの保有する海上拠点へと帰還し、駐機場所に機体を収容する。
 そして、低速に維持したまま開かれた遮蔽扉の向こうへと進入させた。コクピット内部の電子画面に、拠点のセキュリティとの相互通信が完了したことと、帰還を歓迎する旨の、人工知能からのメッセージが表示された。

 駐機場所の内部は、格納庫と整備工場が一体化したような構造になっており、MFやMLを始め、中型の船舶の収容まで行える程度の広さを誇っている。
 天井部分に設置された運搬用のクレーンアームが、機体の進入に合わせて移動しつつ、これを捕捉。そのまま整備用スペースへと牽引していった。
「ん、よし。お疲れ様ー」
「お疲れ様」
 機体の牽引が終了し、動きが止まったことを確認した二人は、手、足、頭を覆う装置を解除してからコクピットを出る。解放されたハッチからは潮風と、微かな油の匂いが漂い、それは外に出た時も同様だった。
「よっと……。これから何しようか?」
「まずはシャワーと水分補給ね。それからは、まあ、のんびりする?」
「そうだね。私は読書の続きかな。読んでない本を消化しておきたいから」
 そのような話をしつつ、カツンカツンと音を響かせながらタラップを降りていく。その後方では、工業用アームや洗浄装置などが自動的に動作を行い、統制を受けながらの機体の整備が始まろうとしていた。
 そんな、少しずつ騒々しくなりつつあった状況とは関係ないとでも言うように、二人は端の階段へと姿を消していくのだった。

 格納庫から上の居住区へと足を運び、それぞれ自室でシャワーと着替えを済ませる。
 その後、アンジェラとアナトリアは、アンジェラの意向で設けられた、読書用の休息所で合流していた。
「アナも読書に来たんだね」
「ええ。まあ、私にも積んでいる本があったから、ちょうど良いわ」
そして互いに、隣同士に並べられた椅子に腰かけ、持ち寄った本を横の台座に置いた。
 ゆったりと椅子に体重を預け、空を見上げるように姿勢を整える。
「ふぅ……。さてと」
 アンジェラは、横の台座に置かれた本の中から一冊を取り、広げる。表紙には『鳥追う冒険者』と書かれている。
「うん……」
 アナトリアも、アンジェラの動きを見届けた後で同じように本を取り、広げる。その表紙には『騎士団の護り』と書かれている。
 それから本を広げた二人は、周囲の鳥の声や波の音、遠く空を行くジェット機の音などを聞きながら、十数分間ほど黙々と読書を続け、時たま、くすりと笑ったり興味ある内容に頷いたりと言った、自然な反応はしていたものの、互いに言葉を交わすことも無かった。
 そして、それから少し後にこと。
「ねえ、アンジー」
 言葉の交流を最初に再開したのはアナトリアだった。彼女は、読んでいた本にしおりを挟み、台座上に戻していた。
「うん?何?アナ」
 一方のアンジェラは未だ読書を続けており、目線は本の文章に注がれている。
「仕事に出る前の、信頼とかの話なんだけど」
「ああ、そんな話もしたね。気にしなくて良いよ。何とはなしに、そう思っただけだから」
 まるで言葉を流そうとするように、アンジェラは軽い調子で受けたが、アナトリアは、どこか神妙な表情を浮かべ、静かに息を吸い込んだ。
「私は忘れないよ。アンジーを」
 その上で静かに、だがはっきりと、言葉を口にする。
「……」
アンジェラの、ページを捲る手が止まった。
「これから何度、アンジーが再生処置を受けても。私はアンジーの友達だよ」
 再び、アナトリアが言葉を口にする。しかし今度は、多少力強く。
「……そっか」
 その言葉から再びページを捲る音が始まるが、読書に没入するのではなく、言葉に耳を傾ける方に集中している。
 そして。
「うん。私も忘れない。アナのこと」
 静かに、同時に愉快そうな雰囲気で、そう口にするのだった。
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