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最後の授業
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「よし、これで俺の教えられる事はすべて教えた。亜子、お疲れさま」
普段厳しい表情が多い狐太郎がおだやかな笑顔で言った。亜子は、ほっとため息をつきながら答えた。
「ありがとう、狐太郎くん」
亜子は今日、やっと狐太郎の陰陽師の訓練を終了したのだ。亜子が狐太郎に訓練してもらっている間、狼牙は音子と遊びに行っている。もうそろそろ亜子たちのいる教室に戻ってくる事だろう。狐太郎は微笑んで付け足した。
「じゃあ亜子、最後にいつもやっている術返しの術をもう一度やってみろ?」
「はい」
亜子は、もう意識しないでも手が勝手に動くほど術返しの術の印をむすばされていた。この術は、陰陽師の術者が、亜子に攻撃の術を発動させた時、相手の術を返して相手を倒す術だ。
この術を、狐太郎は何度も何度も亜子に教えた。狐太郎は亜子が素早く手で印をむすんだ事を嬉しそうに見てから言った。
「よし。ずいぶん術の発動スピードが上がっている。これでどんな陰陽師から強力な攻撃の術を受けても、亜子は必ずはね返せる」
「ええ、わかったわ」
狐太郎は顔を引き締めて言った。
「いいか、亜子は俺たちのクラスで一番妖力が強い。きっと天狗の大将の親父さんの力を受け継いだんだな。だから、亜子がクラスの皆を守ってくれ」
狐太郎は度々このような事を言った。亜子からすれば妖狐の半妖の狐太郎も他のクラスメートも妖力が強いと思うのだが、狐太郎はいつも亜子が一番妖力が強いというのだ。亜子はうなずいて答えた。
「わかったよ、狐太郎くん。狐太郎くんはクラスの皆が大切なんだね?」
亜子の言葉に、狐太郎は驚いた顔をしたが、やがて微笑んで答えた。
「ああ、俺は亜子たちクラスの皆を友達だと思ってる」
「皆だって狐太郎くんの事を大切な友達だって思ってるよ?山彦くんだって」
山彦の名前が出て、狐太郎は苦笑した。最初は狐太郎にトゲトゲしかった山彦は、次第に狐太郎と打ち解けるようになった。
狐太郎は山彦に一つの提案をしたのだ。山彦の父と悟の父が奪われた山を取り戻すには、お金を稼いで合法的に取り戻してはどうかと言ったのだ。
山彦は思いの外この提案に乗り気で、どうしたら高額な金を稼ぐ事ができるのか、狐太郎に相談するようになったのだ。
狐太郎は最後にいつも同じ事を言った。
「亜子、狼牙の事頼むな?」
「うん、任せて」
いつもの約束だ。もしかすると狐太郎は狼牙を置いてどこかに行ってしまうのかもしれない。亜子は言葉の意味が知りたくて、しきりに狐太郎に質問するが、いつもはぐらかされて答えてもらえないのだ。
ふと亜子はイタズラ心が出て、狐太郎に言った。
「狐太郎くんはいつも私にお願いばかりね?だから今日は私のお願い聞いて?狐太郎くん、お願い。キツネに変化してみせて?」
亜子のお願いに狐太郎は顔をしかめたが、しぶしぶしょうだくしてくれた。狐太郎の身体が急に小さくなる。服だけが残り、その中からモゾモゾと子ギツネが顔を出した。
「キャァ!可愛い!」
亜子は小さな子ギツネを抱き上げて頬ずりした。その直後、ガラリと教室のドアが開いて、狼牙と音子が入って来た。狼牙は大声で言った。
「あ!コタ。キツネ!」
狼牙は狐太郎がキツネになった事が嬉しいらしく、亜子から狐太郎を受け取ると、嬉しそうに頬ずりした。
普段厳しい表情が多い狐太郎がおだやかな笑顔で言った。亜子は、ほっとため息をつきながら答えた。
「ありがとう、狐太郎くん」
亜子は今日、やっと狐太郎の陰陽師の訓練を終了したのだ。亜子が狐太郎に訓練してもらっている間、狼牙は音子と遊びに行っている。もうそろそろ亜子たちのいる教室に戻ってくる事だろう。狐太郎は微笑んで付け足した。
「じゃあ亜子、最後にいつもやっている術返しの術をもう一度やってみろ?」
「はい」
亜子は、もう意識しないでも手が勝手に動くほど術返しの術の印をむすばされていた。この術は、陰陽師の術者が、亜子に攻撃の術を発動させた時、相手の術を返して相手を倒す術だ。
この術を、狐太郎は何度も何度も亜子に教えた。狐太郎は亜子が素早く手で印をむすんだ事を嬉しそうに見てから言った。
「よし。ずいぶん術の発動スピードが上がっている。これでどんな陰陽師から強力な攻撃の術を受けても、亜子は必ずはね返せる」
「ええ、わかったわ」
狐太郎は顔を引き締めて言った。
「いいか、亜子は俺たちのクラスで一番妖力が強い。きっと天狗の大将の親父さんの力を受け継いだんだな。だから、亜子がクラスの皆を守ってくれ」
狐太郎は度々このような事を言った。亜子からすれば妖狐の半妖の狐太郎も他のクラスメートも妖力が強いと思うのだが、狐太郎はいつも亜子が一番妖力が強いというのだ。亜子はうなずいて答えた。
「わかったよ、狐太郎くん。狐太郎くんはクラスの皆が大切なんだね?」
亜子の言葉に、狐太郎は驚いた顔をしたが、やがて微笑んで答えた。
「ああ、俺は亜子たちクラスの皆を友達だと思ってる」
「皆だって狐太郎くんの事を大切な友達だって思ってるよ?山彦くんだって」
山彦の名前が出て、狐太郎は苦笑した。最初は狐太郎にトゲトゲしかった山彦は、次第に狐太郎と打ち解けるようになった。
狐太郎は山彦に一つの提案をしたのだ。山彦の父と悟の父が奪われた山を取り戻すには、お金を稼いで合法的に取り戻してはどうかと言ったのだ。
山彦は思いの外この提案に乗り気で、どうしたら高額な金を稼ぐ事ができるのか、狐太郎に相談するようになったのだ。
狐太郎は最後にいつも同じ事を言った。
「亜子、狼牙の事頼むな?」
「うん、任せて」
いつもの約束だ。もしかすると狐太郎は狼牙を置いてどこかに行ってしまうのかもしれない。亜子は言葉の意味が知りたくて、しきりに狐太郎に質問するが、いつもはぐらかされて答えてもらえないのだ。
ふと亜子はイタズラ心が出て、狐太郎に言った。
「狐太郎くんはいつも私にお願いばかりね?だから今日は私のお願い聞いて?狐太郎くん、お願い。キツネに変化してみせて?」
亜子のお願いに狐太郎は顔をしかめたが、しぶしぶしょうだくしてくれた。狐太郎の身体が急に小さくなる。服だけが残り、その中からモゾモゾと子ギツネが顔を出した。
「キャァ!可愛い!」
亜子は小さな子ギツネを抱き上げて頬ずりした。その直後、ガラリと教室のドアが開いて、狼牙と音子が入って来た。狼牙は大声で言った。
「あ!コタ。キツネ!」
狼牙は狐太郎がキツネになった事が嬉しいらしく、亜子から狐太郎を受け取ると、嬉しそうに頬ずりした。
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