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後悔
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響はブルブルと身体を震わせた。自分は一体何をしようとしていたのか。関田を殺そうとしていたのではないか。まるで無感動に、虫の足をむしり取る子供のように。
ジュリアはゆっくりと、掴んで離さない響の手を関田の腕から離した。関田はぐったりとしていた。痛みのあまり気絶したようだ。ジュリアは軽々と関田を仰向けにすると、右手の脇に足を差し込んで、引っ張った。コクッという音がする。外れた関節が入ったのだ。
ジュリアは関田の服をちぎって、三角巾を作り、右手を固定した。ジュリアは響の背中に軽く手をそえた。響はギクリと身体を震わせた。ジュリアが優しい声で言った。
「響、救急車を呼んで?関田は歩道橋の階段から落ちたの。肩を脱臼したから整復して応急処置をしたといいなさい」
響は操られたように、ジュリアの言葉に従い、携帯電話を取り出した。
響はジュリアに手を引かれながら、やっとの事で自宅に帰宅した。ジュリアはいつものように食事をねだったりはしなかった。響をベッドに座らせると、ぶかっこうな塩おにぎりと、インスタントのみそ汁を出してくれた。
響がみそ汁を飲むと、とても温かかった。自分の身体がとても冷えていた事に気づいた。ジュリアの作ってくれた、塩だけのおにぎりも美味しかった。ジュリアにもう寝るようにといわれ、いつものように座布団をしいて横になった。
だが響は電気を消されても、眠る事はできなかった。響は自分が怖かった。自分は一体、関田に何をしようとしたのか。響は関田を殺そうとしたのだ。何のちゅうちょもなく、虫を殺すように手を下そうとした。
身体中を震えが襲った。響は吸血鬼になって、人間よりもはるかに強くなった。おそらく拳銃で撃たれても、真剣で斬られても、響は死なずに相手を倒す事ができるだろう。相手を瞬時に殺す事ができるといっても、殺していいというわけではない。
響には命を奪う権利など持っていないからだ。毛布にくるまりながらブルブル震えていると、声がした。
「響、眠れないの?」
ジュリアの鈴の鳴るような声が耳に入った。響は、蚊の鳴くような声で、そうだと答えた。ジュリアは言葉を続けた。
「じゃあ私のベッドにいらっしゃい」
響は、ジュリアの声に操られるようにベッドに潜り込んだ。ジュリアが寝ているベッドは温かかった。ジュリアは響の肩まで毛布をかけると、響の胸をポンポンと叩いた。まるで母親が幼子にするような仕草だった。
響は母親に大事にされた事がなかったので、このような事をされた記憶はないが、ささくれだった神経がおだやかになっていくのを感じた。ジュリアは子守り唄を歌うように言った。
「ねぇ、響。私は吸血鬼よ。響よりももっと強いわ。響を殺そうと思えば一瞬で殺せるわ。だけどそれをしない、何故かわかる?」
響が何も言わないでいると、ジュリアは微笑んで言った。
「響が大切だからよ?」
氷のように固まった心が、じわりと溶け出したような感覚を覚えた。響はジュリアに何か言わなければと思ったが、何も言葉が出てこなかった。ジュリアは、響の気持ちなど熟知しているとでもいうように、ポンポンとリズミカルに響の胸を叩きながら言った。
「響が今感じている気持ちはね、響が人間を大切に思っているからなの。響は吸血鬼になったわ。でも元は人間、人間は響にとって近しい友人になったの。だから響は、友人である人間を殺めようとして怖くなった。この気持ちをずっと持ち続けていれば、響はずっと大丈夫」
ジュリアの歌うような言葉を聞きながら、響は眠りに落ちた。
ジュリアはゆっくりと、掴んで離さない響の手を関田の腕から離した。関田はぐったりとしていた。痛みのあまり気絶したようだ。ジュリアは軽々と関田を仰向けにすると、右手の脇に足を差し込んで、引っ張った。コクッという音がする。外れた関節が入ったのだ。
ジュリアは関田の服をちぎって、三角巾を作り、右手を固定した。ジュリアは響の背中に軽く手をそえた。響はギクリと身体を震わせた。ジュリアが優しい声で言った。
「響、救急車を呼んで?関田は歩道橋の階段から落ちたの。肩を脱臼したから整復して応急処置をしたといいなさい」
響は操られたように、ジュリアの言葉に従い、携帯電話を取り出した。
響はジュリアに手を引かれながら、やっとの事で自宅に帰宅した。ジュリアはいつものように食事をねだったりはしなかった。響をベッドに座らせると、ぶかっこうな塩おにぎりと、インスタントのみそ汁を出してくれた。
響がみそ汁を飲むと、とても温かかった。自分の身体がとても冷えていた事に気づいた。ジュリアの作ってくれた、塩だけのおにぎりも美味しかった。ジュリアにもう寝るようにといわれ、いつものように座布団をしいて横になった。
だが響は電気を消されても、眠る事はできなかった。響は自分が怖かった。自分は一体、関田に何をしようとしたのか。響は関田を殺そうとしたのだ。何のちゅうちょもなく、虫を殺すように手を下そうとした。
身体中を震えが襲った。響は吸血鬼になって、人間よりもはるかに強くなった。おそらく拳銃で撃たれても、真剣で斬られても、響は死なずに相手を倒す事ができるだろう。相手を瞬時に殺す事ができるといっても、殺していいというわけではない。
響には命を奪う権利など持っていないからだ。毛布にくるまりながらブルブル震えていると、声がした。
「響、眠れないの?」
ジュリアの鈴の鳴るような声が耳に入った。響は、蚊の鳴くような声で、そうだと答えた。ジュリアは言葉を続けた。
「じゃあ私のベッドにいらっしゃい」
響は、ジュリアの声に操られるようにベッドに潜り込んだ。ジュリアが寝ているベッドは温かかった。ジュリアは響の肩まで毛布をかけると、響の胸をポンポンと叩いた。まるで母親が幼子にするような仕草だった。
響は母親に大事にされた事がなかったので、このような事をされた記憶はないが、ささくれだった神経がおだやかになっていくのを感じた。ジュリアは子守り唄を歌うように言った。
「ねぇ、響。私は吸血鬼よ。響よりももっと強いわ。響を殺そうと思えば一瞬で殺せるわ。だけどそれをしない、何故かわかる?」
響が何も言わないでいると、ジュリアは微笑んで言った。
「響が大切だからよ?」
氷のように固まった心が、じわりと溶け出したような感覚を覚えた。響はジュリアに何か言わなければと思ったが、何も言葉が出てこなかった。ジュリアは、響の気持ちなど熟知しているとでもいうように、ポンポンとリズミカルに響の胸を叩きながら言った。
「響が今感じている気持ちはね、響が人間を大切に思っているからなの。響は吸血鬼になったわ。でも元は人間、人間は響にとって近しい友人になったの。だから響は、友人である人間を殺めようとして怖くなった。この気持ちをずっと持ち続けていれば、響はずっと大丈夫」
ジュリアの歌うような言葉を聞きながら、響は眠りに落ちた。
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