恐竜世界に転移した俺に懐いたちっちゃ可愛いドラゴンたちが最強だった

日常

　軽快にリズムを刻む速度。自分の呼吸と心臓の音が重なる。通勤を兼ねたランニングが俺の朝のルーティンだ。

　ガコンガコンと金属の音。俺のランニングコースにあるビルの建設現場だ。高い外壁よりもさらに高いクレーン車がバカでかい鉄骨を持ち上げている。

　俺は走る速度をゆるめ、建設現場の高い外壁を見上げる。

　でっかいなぁ。俺は巨大な重機がひしめく工事現場が大好きだ。だからって重機好きなわけじゃない。

　もしブラキオサウルスが現代にいたら、このクレーン車ぐらいの大きさなのだろうなと想像するからだ。

　そう、俺は恐竜が大好きなのだ。小さい頃、父親に買ってもらった恐竜図鑑が俺の人生を決定づけた。

　俺はボロボロになるまで恐竜図鑑を読み続けた。今でも本棚に入っている俺の宝物だ。

　俺が小学生の頃、恐竜を現代に蘇らせてパークを作るという映画がやっていた。もうずいぶん昔の映画で、俺はテレビの再放送で見た。

　その時俺は泣きそうなほどに感動した。俺の求めているものはこれだ、と直感したのだ。

　俺はこのような未来が現実になると信じて疑わなかった。だが生きた恐竜のパークはいまだに実現しない。

　俺の小さい頃の夢は映画の中の主人公のように古生物学者だった。だがそんな素養は俺にはなかった。俺は何でもいいから恐竜に関わる仕事がしたいと、サイエンス雑誌を発行している小さな出版社に就職した。

　サイエンス雑誌では、恐竜の新発見があった場合、定期的に恐竜の特集記事が掲載される。

　俺はそれに携わって、わずかにある恐竜との関わりに安堵する。

　さて、そろそろ会社に向かわなければ。そう考えた瞬間、頭上の異変に気づいた。

　鉄骨を持ち上げていたクレーン車が、突然グラグラ揺れ始めたのだ。

　当然クレーン車が持ち上げていた鉄骨はブランコのように揺れ出した。そして、鉄骨を固定していたワイヤーがブチッと切れた。

　空中に投げ出された鉄骨の落下先は、俺の頭の上だった。

　そこで俺は意識を失った。

「友坂さん、友坂英二さん」

　誰だろう、誰かが俺の名前を呼んでいる。看護師さんかな。俺は病院に運ばれて助かったのだろうか。

　ああ、会社に早く連絡しなければ。社長はカンカンだろうな。俺は憂うつな気持ちで目を開いた。そこにはとびきり美人の外人さんがいた。

　海の色のような青い瞳。雪のような白い肌。髪はキラキラと輝くようなプラチナブロンド。

　まるで映画に出てくる女優さんのようだ。そこで俺は、はたと気がついた。俺はいつから英語がわかるようになったのだろうか。

　俺がぼんやりと座り込んでいると、美人な外人さんは俺の側にしゃがみ込んで、俺の顔の前で手をヒラヒラさせた。

「私がわかりますか？」
「はい、」
「まぁ、良かった。私は運命の女神です。突然ですが、貴方は死にました」

　女神と名乗る外人さんの笑顔を見て、俺はあんぐりと口を開けたまま固まった。