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暗殺者サイラス

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 カイルの目の前の暗殺者サイラスは、ため息をついてからカイルに言った。

「こぞう、俺はお前を傷つけたくない。だから俺の目の前から消えろ」

 暗殺者の言葉にカイルはハッとした。サイラスはわざと用心棒たちを殺さなかったのだ。カイルは幼かったサイラスを思い出した。サイラスはとても泣き虫で、優しい子供だった。

 カイルは厳しい顔になって言った。

「俺はロシアーヌ男爵に雇われた用心棒だ。お前がロシアーヌ男爵を殺すというなら、お前を倒さなければいけない」

 サイラスは再びため息をつくと、腰の剣を抜いた。カイルと戦う決意をしたのだ。カイルはサイラスに言った。

「ここでは用心棒たちを巻き込む。場所を変えよう」

 カイルは自分とレッドアイに風魔法をまとわせ、宙に浮かんだ。カイルの魔法を見て、サイラスは驚いた顔をした。風飛行魔法はとても高い技術をようする。サイラスにもカイルの魔力の高さがわかったのだろう。

 サイラスも自身に風魔法をまとわせ、空に飛び上がった。カイルたちとサイラスは、屋敷の外の平地に着地した。

 カイルは沢山の火魔法を作り出すと、サイラスめがけて放った。サイラスは風防御魔法でそれを回避した。カイルはレッドアイ、と呼んだ。

 レッドアイは元の巨大なオオカミに戻り、咆哮をあげてサイラスに襲いかかった。サイラスは風浮遊魔法でレッドアイの突進をかわした。

 レッドアイは上空に逃げたサイラスめがけて、口からエネルギー弾を放った。これにはサイラスも驚いた様子だ。慌てて強力な風防御魔法でエネルギー弾を弾いたが、サイラス自身も吹っ飛んでしまった。

 サイラスは何とか空中で体勢を整えてから、レッドアイに向けて手をかざした。すると、レッドアイの足元から、沢山の鉄のワイヤーが伸びてきた。土鉱物魔法だ。レッドアイはみるみる鉄のワイヤーにグルグル巻きにされてしまった。ご丁寧に口輪もされている。

 レッドアイは鉄のワイヤーをはずそうともがいた。カイルはレッドアイに指示した。その場で待機、と。

 カイルは楽しくて仕方なかった。前世で自分が育てた弟子が、強く成長していたのだ。カイルも風飛行魔法を使って、サイラスと同じ目線の高さまで飛んだ。

 カイルの顔を見たサイラスが顔をしかめて言った。

「テメェ、何笑ってやがるんだよ?」
「?。俺は笑っていたのか。お前の成長を俺に見せてくれ、サイラス」
「!。ガキ、テメェ何で俺の名前を知ってるんだ?!」

 驚いているサイラスを無視して、カイルはカミナリ魔法をサイラスに放った。サイラスは突然の魔法攻撃に慌てて風防御魔法を張った。だが、カイルのカミナリ魔法が強力で、風防御魔法は破壊されてしまった。

 カミナリ魔法が風防御魔法に当たった事により、モクモクとけむりがあがった。そのけむりが風に消えると、そこにサイラスはいなかった。どうやら空間魔法で逃げたようだ。

 ではどこに逃げたのか。カイルはニコニコ笑いながら、全身を風魔法の球体で包んだ。その直後、カイルの風防御魔法に、攻撃魔法が当たった。

 カイルがゆっくりと後ろを振り向くと、苦りきった顔のサイラスがいた。カイルは笑いながら、風防御魔法を解除した。沢山の氷の刃を作り出し、サイラスめがけて投げつけた。



 
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