前世で百人殺した殺し屋の俺は地獄行きを回避するため現世で百人助けます

盛平

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逃がし屋

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 サイラスはそろそろだと言った。カイルが何がと聞くと、標的の人物が決断した頃だと答えた。

「もうそろそろロシアーヌ男爵が、殺し屋の俺におびえて逃げようとしている頃だ」
「俺たちが屋敷を出てもうだいぶ時間が経っている。ロシアーヌ男爵はもう逃げているんじゃないか?」
「大丈夫だよ?師匠と犬っころが屋敷を出た後、屋敷に結界を張ったから。ロシアーヌ男爵たちは屋敷内から出られない」

 カイルはうなずいて空中から地上に降りた。地上では、巨大なオオカミのレッドアイが鉄のワイヤーから抜け出せず、クゥンと鳴いている。カイルは苦笑して言った。

「レッドアイ。小さくなれ」
『アッ、ソウカ』

 レッドアイは小さな仔犬になった。すると、ワイヤーのオリからすんなり出る事ができた。レッドアイは嬉しそうにカイルの腕の中に飛び込んできた。カイルはレッドアイを抱き上げた。

 サイラスは空間魔法を開いた。何もない空間に、真っ黒な空間の穴か出現した。そこはどうやらロシアーヌ男爵の部屋へとつながっているようだ。カイルが、何故屋敷の間取りがわかるのかと聞くと、サイラスは事前に屋敷に忍び込んで屋敷内と、ロシアーヌ男爵の家族を確認しておいたのだと答えた。

 サイラスと共に空間魔法の穴を抜けると、悲鳴をあげているロシアーヌ男爵とその家族、彼らを守ろうと剣を構えるゾイがいた。

 ゾイはカイルが暗殺者と一緒にいる事に驚いているようだった。カイルがゾイに言った。

「ゾイ。殺し屋がロシアーヌ男爵と話し合いがしたいと言っている」
「?。話し合いだと?問答無用で殺すんじゃないのか?」
「条件を飲めば命だけは助けると言っている」

 ゾイと男爵は顔を見合わせている。サイラスはロシアーヌ男爵に、外国に逃げて、二度とこの国に帰らなければ見逃すと言った。ロシアーヌ男爵とその家族は、一も二もなくうなずいた。

 ロシアーヌ男爵とその家族は、手に持てるだけの物ならば持っていけると言うと、各自の部屋にかけて行った。

 サイラスは新たな空間魔法の出入り口を開いた。そこには一人の男が立っていた。男はサイラスに陽気に声をかけた。

「よぉ、サイラス」
「おう、ホセ」

 逃し屋ホセは、サイラスのとなりにいたカイルを見て叫んだ。

「カイル!お前生きてたのか?!」

 カイルはため息をついて答えた。

「いいや。死んで生まれ変わった」
「生まれ変わり?おい、俺の事わかるのか?」
「ああ、前世の記憶があるからな。残念ながらお前の情けない顔も覚えてる」

 カイルの苦笑混じりの返事に、ホセは号泣しながらカイルに抱きついた。カイルはホセの大きな背中をポンポンとたたいた。

 逃し屋のホセは元々ブラックスコーピオンの団員だった。殺し屋に憧れるただのチンピラで、人を殺す度胸も技量もないお人好しだった。そんなホセにブラックスコーピオンがかした仕事は、幼いカイルの世話係だった。

 人のいいホセは、無表情な子供のカイルになにくれと世話を焼いてくれた。カイルも唯一ホセだけは気を許せる存在だった。

 だがカイルが成長すると、ホセは無用になった。カイルはホセに多額の現金と、空間魔法の入った魔法具を持たせてブラックスコーピオンから逃したのだ。

 魔法具とは、魔法の使えない者に持たせる魔法の入れ物だ。ホセは空間魔法の魔法具で逃し屋を始めた。カイルは殺し屋時代、よく逃し屋のホセに依頼をしていたのだ。

 ロシアーヌ男爵とその家族が大量の荷物を持って戻って来た。ロシアーヌ男爵は、ゾイにこの後の事、使用人たちの身の振り方を頼んで空間魔法の中に消えていった。

 サイラスの言った通り、ロシアーヌ男爵はそんなに悪い人間でもなかったようだ。カイルは前世で自分がしてきた罪の重さに、胸が苦しくなった。



 
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