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ゼゴ
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「へへん。ゼゴは俺に負けたけど、ザイラム盗賊団では先輩だからな。特別に教えてやろう。ゼゴはさぁ、自分の力に自信がありすぎなんだよ。俺はさぁ、この通り痩せて筋肉もついてないだろ?だから、大地の力を利用するんだよ」
「・・・」
「この言い方じゃあ、わかりづらいか。言い換えてやろう、剣の構えだ。俺はガキの頃から剣をひたすら学んできた。剣の構えは実戦訓練よりももっと大事だ。なぁ、ゼゴ。お前、剣の師匠なんていないだろう」
ゼゴがピクリと身体を震わせた。これも当たりだ。ゼゴはとことん嘘がつけないらしい。エラルドはズケズケと言葉を続けた。
「ゼゴの剣技はさぁ、我流が強すぎんだよ。ガキの頃から棒切れ振って、いつの間にやら大人になってたってくちだろ?」
「・・・。こぞう、お前の剣の師匠は?」
「・・・。俺の父だ」
「お前の父親は、息子が盗賊団に入ったら悲しむのではないのか?」
「知らねぇ、死んだから」
「・・・。そうか、」
エラルドはポカンとしてしまった。盗賊団の人間は、皆血も涙もないような人間のクズだと考えていた。だがゼゴは違うのだ。ゼゴはエラルドの父親が死んだ事を知り、悼んでいるのだ。
エラルドは確信した。ゼゴは悪人ではないのだ。
「ゼゴ。お前、人殺した事ないだろう」
「!。・・・、ああ。罪もない人間を斬る事は、どうしてもできなかった。だが、貴様だから、強い剣士ならば戦って殺す事ができるはずだと、そう考えた。だが、俺は貴様に無様に負けた」
「無様なんかじゃねぇよ。ゼゴ、お前が求めているのは金でもねぇ、他人を踏みにじる優越感でもねぇ。お前は、剣の道を歩み続けたい、ただそれだけなんだよ」
ゼゴはエラルドをジッと見つめていた。エラルドは口からスルリと言葉が出た。
「ゼゴ。お前、俺の弟子になれよ」
ゼゴはハトが豆鉄砲をくったような顔になった。
「俺は、統りょ、ウェゴさまの部下だ。だが俺は、自害を言い渡された。いずれ俺は追放されるだろう。だから、考えておく」
「おう、考えてから返事くれ」
それきりゼゴは口をつぐんで案内を続けた。エラルドが連れていかれたのは、うす汚れた部屋だった。
酒によっぱらった男たちが床に寝っ転がって雑魚寝をしていた。
「うへぇ、汚ねぇ」
「お前ならすぐに高待遇になる。それまで辛抱しろ」
「ああ!こんな部屋、すぐに出てやらぁ!」
エラルドの啖呵にゼゴは笑った。
「・・・」
「この言い方じゃあ、わかりづらいか。言い換えてやろう、剣の構えだ。俺はガキの頃から剣をひたすら学んできた。剣の構えは実戦訓練よりももっと大事だ。なぁ、ゼゴ。お前、剣の師匠なんていないだろう」
ゼゴがピクリと身体を震わせた。これも当たりだ。ゼゴはとことん嘘がつけないらしい。エラルドはズケズケと言葉を続けた。
「ゼゴの剣技はさぁ、我流が強すぎんだよ。ガキの頃から棒切れ振って、いつの間にやら大人になってたってくちだろ?」
「・・・。こぞう、お前の剣の師匠は?」
「・・・。俺の父だ」
「お前の父親は、息子が盗賊団に入ったら悲しむのではないのか?」
「知らねぇ、死んだから」
「・・・。そうか、」
エラルドはポカンとしてしまった。盗賊団の人間は、皆血も涙もないような人間のクズだと考えていた。だがゼゴは違うのだ。ゼゴはエラルドの父親が死んだ事を知り、悼んでいるのだ。
エラルドは確信した。ゼゴは悪人ではないのだ。
「ゼゴ。お前、人殺した事ないだろう」
「!。・・・、ああ。罪もない人間を斬る事は、どうしてもできなかった。だが、貴様だから、強い剣士ならば戦って殺す事ができるはずだと、そう考えた。だが、俺は貴様に無様に負けた」
「無様なんかじゃねぇよ。ゼゴ、お前が求めているのは金でもねぇ、他人を踏みにじる優越感でもねぇ。お前は、剣の道を歩み続けたい、ただそれだけなんだよ」
ゼゴはエラルドをジッと見つめていた。エラルドは口からスルリと言葉が出た。
「ゼゴ。お前、俺の弟子になれよ」
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「おう、考えてから返事くれ」
それきりゼゴは口をつぐんで案内を続けた。エラルドが連れていかれたのは、うす汚れた部屋だった。
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「うへぇ、汚ねぇ」
「お前ならすぐに高待遇になる。それまで辛抱しろ」
「ああ!こんな部屋、すぐに出てやらぁ!」
エラルドの啖呵にゼゴは笑った。
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