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イエーリ団

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 レオンたちは馬車を乗り継ぎ、二日かけてイエーリ団の根城近くの山に入った。ここからは徒歩で山を登らなければいけない。

 手荷物はドンの魔法で軽くなったか、レオンはアルスを抱っこしながら登っている。冒険者たちは早い足取りで、どんどん山を登っていった。

 レオンはペースがつかめず、ゼーゼーいいながら山を登った。みかねたゴメスがアルスをおぶってくれた。アルスは視界が高くなったのが面白いようで、キャッキャと笑っている。

 アルスをおぶってもらい、だいぶ楽になったレオンは、となりをゼーゼー言いながら歩くドンに質問した。

「ドンさん。僕らが倒すべきイエーリ団というのは、どんな奴らなんですか?」
「はー、はー。そ、そうだな、人数はおよそ三十人ほどの盗賊団だ。金持ちの屋敷を狙い、火をかけて、住人を皆殺しにして金品を奪うんだ。だけど、それまでイエーリ団に魔法使いがいるなんて、聞いた事ないなぁ」
「ひどい奴らですね。でも魔法使いは、最近入団したんですかね?」
「うーん、そうかもしれないなぁ。魔法使いのレベルにもよるが、強い魔法使いが入団したなら気をつけないとな」
「どうしてですか?この冒険者の集団の中には、ドンさんを含めて四人も魔法使いがいるんですよ?ドンさんたちが敵の魔法使いをやつけてくれれば、後のイエーリ団の盗賊たちをゴメスさんたちが倒せば勝てるじゃないですか」
「レオン、そんな簡単に言うなよ」

 レオンが首をかしげると、ゴメスが口をはさんだ。

「おいレオン。お前、俺たちの事かいかぶりすぎだぞ。俺たちが何で団体で依頼をやるかわかるか?」
「?。イエーリ団の人数が多いから」
「それも勿論ある。だがな、最大の理由は、俺たちが弱いからだ」

 レオンは何と答えてよいわからず、口をつぐんでいると、ゴメスは言葉を続けた。

「レオンがさっき言った、頼りにしている四人の魔法使いは全員国家魔法使いじゃねぇ。つまり三流魔法使いって事だ。それに俺たち剣士だって、剣の腕はまちまちだ。いいか、レオン。バンスのジジィがお前たちに見せたかったのはな、冒険者の現実だ」
「・・・。冒険者の、現実?」
「ああ。レオンは冒険者になって、夢や理想を持っているかも知れねぇ。だがなぁ、実際の冒険者の仕事っていうのはなぁ、地味で泥くさくって、危険な仕事なんだよ」
「冒険者は危険な仕事なのは覚悟しています!」
「ああ。俺だってレオンが生半可な気持ちで冒険者になったなんて思ってねぇよ。だがな、お前たちはこの依頼で、人が死ぬのを目の当たりにするかもしれねぇ」
「・・・。イエーリ団の連中が、ですか?」
「ああ。それもあるが、俺たちの仲間が死ぬかもしれねぇ」

 レオンはヒュッと息をのんだ。ゴメスやドン、ドーグと仲間たちのわきあいあいとした姿を思い浮かべる。この中の誰かが死んでしまうかもしれない。レオンは背中に冷水をかけられたように背筋が寒くなった。
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