182 / 254
連載
337、黄金の蜘蛛
しおりを挟む
「どうやら、相手の正体が分かったようだな? アンジェ」
その瞬間──
ラエサルの手からはナイフが放たれていた。
その動きが見えたのは、エイジとアンジェ、そしてオリビアだけである。
ほぼ同時に壁に深く突き刺さるナイフ。
尋常ではないスピードでの投てきだ。
(速い……流石だなラエサルさんは)
エイジは思わず心の中で唸った。
ここまでの戦闘でエイジも上級クラスのレベル38までレベルが上がっていたが、それでもラエサルの動きは異次元である。
突き刺さったナイフの刃に小さな影を縫われて、壁の上で身動きが取れなくなっている生物が見える。
「これは……」
エイジはその生き物を見た。
巨大な通路の壁に走るパイプの下から顔を出しているのは、金色の蜘蛛だ。
まるで黄金で出来ているかのようなその体と、ルビーのような瞳。
エリスとリアナはそれを見つめて言う。
「これは……」
「蜘蛛よね?」
普通の蜘蛛には見えないそれを眺めて、二人は首を傾げる。
エイジは思った。
(つまり、こいつがさっきの視線や気配の元凶ってことか?)
ラエサルのナイフが動きを封じたということは、そういうことだろう。
だが次の瞬間──
その小さな蜘蛛が一行に話しかけた。
「ふふ、レディに対してこんな仕打ちは失礼じゃないかしら?」
エリスとリアナは、思わずエイジの腕にしがみついた。
「嘘!」
「この蜘蛛、喋ったわ!?」
妖艶なその声の質。
女性の声だ。
その刹那、ラエサルのナイフに影を射抜かれていた小さな生き物は、黄金の炎に変わり消滅する。
ラエサルは動揺する一行の姿を静かに眺めた後、通路の先の暗やみに向かって静かに口を開いた。
「そこに居るのは分っている、出てこい」
アンジェは前方に意識を集中した。
だがそこに、何者かがいるような気配を感じることは出来ない。
(私には何も感じ取れない。でも、誰かいるってラエサルには分っているの?)
次の瞬間──
アンジェは驚愕した。
通路の先から、こちらに歩いてくる女の姿が見えたからだ。
いや、それにも関わらずその女の気配を感知できないことに、といったほうがいいだろう。
まるで全ての気を遮断しているかのようだ。
「ラエサル以外にこんな真似が出来る相手がいるなんて……」
アンジェは、『紅』を握りしめた。
女に額には蜘蛛を象った紋章が刻まれている。
その妖しげな紋章が良く似合うよう妖艶さ。
黄金のようなブロンドにルビーのように赤い瞳。
「あら怖い、そんな顔をして。この私とやり合うつもりなのかしら?」
この女だ、とアンジェは思う。
どのような技なのかは知らないが、あの蜘蛛はこの女の意思によって動いていたのだろう。
そして、敢えてこちらに自分の存在を気付かせた。
まるでこちらに実力をはかるかのように。
(この女、強い……)
アンジェは、目の前の女を見つめながら剣を構える。
先程まで完全に気配を消していた女から、強い殺気が立ちのぼるのを感じたからだ。
アンジェの頬に冷たい汗が流れる。
それを見て、女は妖しげな笑みを浮かべた。
赤い唇が言葉を紡ぐ。
「でも、その程度の腕でこの私に勝てるかしら?」
アンジェは、女の額の紋章を見つめながら答えた。
「思い出したわ、額に金色の蜘蛛を象った紋章を刻んだSランク……レディスパイダーと呼ばれる女のことをね」
その瞬間──
ラエサルの手からはナイフが放たれていた。
その動きが見えたのは、エイジとアンジェ、そしてオリビアだけである。
ほぼ同時に壁に深く突き刺さるナイフ。
尋常ではないスピードでの投てきだ。
(速い……流石だなラエサルさんは)
エイジは思わず心の中で唸った。
ここまでの戦闘でエイジも上級クラスのレベル38までレベルが上がっていたが、それでもラエサルの動きは異次元である。
突き刺さったナイフの刃に小さな影を縫われて、壁の上で身動きが取れなくなっている生物が見える。
「これは……」
エイジはその生き物を見た。
巨大な通路の壁に走るパイプの下から顔を出しているのは、金色の蜘蛛だ。
まるで黄金で出来ているかのようなその体と、ルビーのような瞳。
エリスとリアナはそれを見つめて言う。
「これは……」
「蜘蛛よね?」
普通の蜘蛛には見えないそれを眺めて、二人は首を傾げる。
エイジは思った。
(つまり、こいつがさっきの視線や気配の元凶ってことか?)
ラエサルのナイフが動きを封じたということは、そういうことだろう。
だが次の瞬間──
その小さな蜘蛛が一行に話しかけた。
「ふふ、レディに対してこんな仕打ちは失礼じゃないかしら?」
エリスとリアナは、思わずエイジの腕にしがみついた。
「嘘!」
「この蜘蛛、喋ったわ!?」
妖艶なその声の質。
女性の声だ。
その刹那、ラエサルのナイフに影を射抜かれていた小さな生き物は、黄金の炎に変わり消滅する。
ラエサルは動揺する一行の姿を静かに眺めた後、通路の先の暗やみに向かって静かに口を開いた。
「そこに居るのは分っている、出てこい」
アンジェは前方に意識を集中した。
だがそこに、何者かがいるような気配を感じることは出来ない。
(私には何も感じ取れない。でも、誰かいるってラエサルには分っているの?)
次の瞬間──
アンジェは驚愕した。
通路の先から、こちらに歩いてくる女の姿が見えたからだ。
いや、それにも関わらずその女の気配を感知できないことに、といったほうがいいだろう。
まるで全ての気を遮断しているかのようだ。
「ラエサル以外にこんな真似が出来る相手がいるなんて……」
アンジェは、『紅』を握りしめた。
女に額には蜘蛛を象った紋章が刻まれている。
その妖しげな紋章が良く似合うよう妖艶さ。
黄金のようなブロンドにルビーのように赤い瞳。
「あら怖い、そんな顔をして。この私とやり合うつもりなのかしら?」
この女だ、とアンジェは思う。
どのような技なのかは知らないが、あの蜘蛛はこの女の意思によって動いていたのだろう。
そして、敢えてこちらに自分の存在を気付かせた。
まるでこちらに実力をはかるかのように。
(この女、強い……)
アンジェは、目の前の女を見つめながら剣を構える。
先程まで完全に気配を消していた女から、強い殺気が立ちのぼるのを感じたからだ。
アンジェの頬に冷たい汗が流れる。
それを見て、女は妖しげな笑みを浮かべた。
赤い唇が言葉を紡ぐ。
「でも、その程度の腕でこの私に勝てるかしら?」
アンジェは、女の額の紋章を見つめながら答えた。
「思い出したわ、額に金色の蜘蛛を象った紋章を刻んだSランク……レディスパイダーと呼ばれる女のことをね」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!
霜月雹花
ファンタジー
神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。
神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。
書籍8巻11月24日発売します。
漫画版2巻まで発売中。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。