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ダンジョン学校編
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眠っているような、起きているような曖昧な感覚のまま電車の中を過ごし、少しスッキリしたところで目を開ける。
スマホで時間を確認すれば、電車に乗ってから四十分ほどが経過していた。まぁまぁ寝たかな、と思いながら欠伸を一つ咬み殺す。
ぼんやりと目的地に着くまでは、田んぼと山しかないような景色を眺めて過ごした。
目的の駅は思ったよりもキレイだった。建て替えでもしたのだろうと思いながら、切符を精算して外に出ると人気のないメインストリート。風情があると言えばいいか、寂れていると言えばいいのか判断に迷う。
作菜は、事前にチェックしていた八時から開店しているパン屋に向かった。
駅から徒歩十五分ほどの場所にある元ホテルのダンジョン学校には、十一時に集合ということになっている。そこから一時間程度の適性検査を行って状況判断や運動能力などを検査し、聴力や視覚などの検査を行うらしい。おそらく運転免許をモデルにしたんだろうな、というメニューだ。
開店していたこじんまりとしたパン屋に着き、店の中に入るとパン屋特有のいい香りが広がった。
空腹を自覚しながらブルーベリージャムとホイップのサンドイッチと、チーズとハムのパンを購入して店を出る。そのまま五分ほど歩くと青い看板のコンビニがあるためそこに行き、無糖の紅茶を購入するとイートインスペースにお邪魔して朝食をとった。
集合時間は十一時だが、先にダンジョン学校兼合宿所に行ってしまっていいだろうか。自動車学校であれば集合場所に行ってバスで自動車学校に向かうというのが普通だが、菖蒲沼ダンジョン学校の場合駅の近くにあるためそんなサービスは行っていない。
できるだけコンビニでゆっくり朝食を取ったが、当然それでも時間は余る。時間を潰す場所もないし、いいかと思って立ち上がってダンジョン学校へ向かうことを決めた。
ゴミをコンビニの前で捨てるといまいち場所に自信がないため、地図アプリを開いて目的地を入力して歩き出す。
がらごろ音を立てるスーツケースを引きながら地図アプリを確認しつつ歩く。
目的地が見えてきたところで、ポツリポツリと雨が降ってきた。もうちょっと待ってくれればよかったのにと思いながら濡れるのが嫌で走り出し、ダンジョン学校の軒先に滑り込んだ途端、雨は勢いよく降ってきた。ギリギリセーフ。
トートバックからハンカチを取り出すと軽く濡れた髪や顔を拭い、服もさっと拭く。ハンカチをトートバッグの中に放り込み、ダンジョン学校の入口をくぐる。
くぐった先にあったのは、公共の宿泊施設とは思えないほどオシャレなモダンなロビーだった。木を基調にした空間に、差し色として黒が使われていてスタイリッシュな雰囲気になっていた。
思った以上にオシャレな空間に思わず作菜はぽかんとした。
「おはようございます」
受付にいた女性が声を掛ける。美人ではないが朗らかそうな雰囲気な40代ほどの女性だ。
「おはようございます」
つられるように挨拶を返して、カウンターに近づく。
「予約した野上です」
「野上様ですね。必要な書類はご用意いただけているでしょうか?」
「ええっと、はい」
トートバッグの中から、ドキュメントファイルを取り出し必要書類と印鑑を出す。女性が書類をチェックして、パソコンをいじると一つ頷いた。
「確かに確認しました。集合はロビーに十一時ですが、部屋には入れますよ。いかがなさいますか?」
「ありがとうございます。じゃあ、お願いします」
「はい。これが教本と鍵になります。鍵は無くさないように注意してください。部屋は東館三階の三〇三号室になります。集合時間には動きやすい格好で来てください」
カードタイプの鍵とベージュ色のつるりとした袋に入れられている教本を受け取る。
ダンジョン学校兼合宿所であるこの施設は、コ型になっており、東館が主に宿泊施設、西館がダンジョンに関する施設と温泉施設が詰め込まれている。
四階建ての建物で東館の一階から二階は男性フロア、三階から四階が女性フロアとなっている。西館の一階には食堂や温泉施設、売店とコインランドリーがあり、二階には教習を受けるスペース、三階が運動フロアとなっていて何もない体育館状のスペースと、ジムが用意されていた。四階は、武器の保管場所となっていて体を動かすこともできるように作られている。
スーツケースを引きながら、三階にエレベーターで上がった。フロア案内を見ると、三〇三号室はすぐそばにあった。
カードキーをかざすと部屋についている機器のライトが赤から緑になる。ドアノブに手をかければすんなりと部屋に入れた。梅雨特有の湿気と熱い空気が漏れる。カードキーは部屋の入り口の近くにあるスロットに入れることで、電源がつきクーラーが稼働した。
部屋は普通のビジネスホテルのシングルルームと同じだ。
ユニットバスにシングルベッド、壁にぴったりつけられた少し大きめの横長の机の上にはテレビと照明と壁に取り付けられた鏡。机の下には小さな冷蔵庫が備え付けられていて、その横のガラス戸には湯沸しポットが見える。
収納がないのが若干不満だが、ビジネスホテルのような一室なら仕方がないだろう。
「狭い」
自分で選んだ部屋ながら思ったよりも狭かった。
最低限寝れる場所であるからいいかと思い直し、スーツケースを部屋の真ん中で開いてジャージとスニーカーを取り出して、ジャージは机の上に置き、スニーカーはベッドの横に置いておく。
荷物を一通り片付けると部屋を出て非常口をチェックし、フロアを一通り見て回ると部屋に帰ってベッドに寝転がりスマホのアラーム機能を使って十時三十分になるように設定すると寝転がった体勢のまま教本を開いた。
ダンジョンに関する法律、ダンジョンでドロップしたアイテムの取り扱い、スキルの取り方からスキルの扱い方、ダンジョンの歩き方にマッピングの仕方、集団戦での注意など習うことは多岐にわたる。
「これ、二週間で覚えられんの…?」
あーと声が出た。勉強など大学を卒業して以来していない。
「勉強とかめっちゃ久しぶり…」
意識低い系の社会人だった作菜は、がっくりとうなだれた。
スマホで時間を確認すれば、電車に乗ってから四十分ほどが経過していた。まぁまぁ寝たかな、と思いながら欠伸を一つ咬み殺す。
ぼんやりと目的地に着くまでは、田んぼと山しかないような景色を眺めて過ごした。
目的の駅は思ったよりもキレイだった。建て替えでもしたのだろうと思いながら、切符を精算して外に出ると人気のないメインストリート。風情があると言えばいいか、寂れていると言えばいいのか判断に迷う。
作菜は、事前にチェックしていた八時から開店しているパン屋に向かった。
駅から徒歩十五分ほどの場所にある元ホテルのダンジョン学校には、十一時に集合ということになっている。そこから一時間程度の適性検査を行って状況判断や運動能力などを検査し、聴力や視覚などの検査を行うらしい。おそらく運転免許をモデルにしたんだろうな、というメニューだ。
開店していたこじんまりとしたパン屋に着き、店の中に入るとパン屋特有のいい香りが広がった。
空腹を自覚しながらブルーベリージャムとホイップのサンドイッチと、チーズとハムのパンを購入して店を出る。そのまま五分ほど歩くと青い看板のコンビニがあるためそこに行き、無糖の紅茶を購入するとイートインスペースにお邪魔して朝食をとった。
集合時間は十一時だが、先にダンジョン学校兼合宿所に行ってしまっていいだろうか。自動車学校であれば集合場所に行ってバスで自動車学校に向かうというのが普通だが、菖蒲沼ダンジョン学校の場合駅の近くにあるためそんなサービスは行っていない。
できるだけコンビニでゆっくり朝食を取ったが、当然それでも時間は余る。時間を潰す場所もないし、いいかと思って立ち上がってダンジョン学校へ向かうことを決めた。
ゴミをコンビニの前で捨てるといまいち場所に自信がないため、地図アプリを開いて目的地を入力して歩き出す。
がらごろ音を立てるスーツケースを引きながら地図アプリを確認しつつ歩く。
目的地が見えてきたところで、ポツリポツリと雨が降ってきた。もうちょっと待ってくれればよかったのにと思いながら濡れるのが嫌で走り出し、ダンジョン学校の軒先に滑り込んだ途端、雨は勢いよく降ってきた。ギリギリセーフ。
トートバックからハンカチを取り出すと軽く濡れた髪や顔を拭い、服もさっと拭く。ハンカチをトートバッグの中に放り込み、ダンジョン学校の入口をくぐる。
くぐった先にあったのは、公共の宿泊施設とは思えないほどオシャレなモダンなロビーだった。木を基調にした空間に、差し色として黒が使われていてスタイリッシュな雰囲気になっていた。
思った以上にオシャレな空間に思わず作菜はぽかんとした。
「おはようございます」
受付にいた女性が声を掛ける。美人ではないが朗らかそうな雰囲気な40代ほどの女性だ。
「おはようございます」
つられるように挨拶を返して、カウンターに近づく。
「予約した野上です」
「野上様ですね。必要な書類はご用意いただけているでしょうか?」
「ええっと、はい」
トートバッグの中から、ドキュメントファイルを取り出し必要書類と印鑑を出す。女性が書類をチェックして、パソコンをいじると一つ頷いた。
「確かに確認しました。集合はロビーに十一時ですが、部屋には入れますよ。いかがなさいますか?」
「ありがとうございます。じゃあ、お願いします」
「はい。これが教本と鍵になります。鍵は無くさないように注意してください。部屋は東館三階の三〇三号室になります。集合時間には動きやすい格好で来てください」
カードタイプの鍵とベージュ色のつるりとした袋に入れられている教本を受け取る。
ダンジョン学校兼合宿所であるこの施設は、コ型になっており、東館が主に宿泊施設、西館がダンジョンに関する施設と温泉施設が詰め込まれている。
四階建ての建物で東館の一階から二階は男性フロア、三階から四階が女性フロアとなっている。西館の一階には食堂や温泉施設、売店とコインランドリーがあり、二階には教習を受けるスペース、三階が運動フロアとなっていて何もない体育館状のスペースと、ジムが用意されていた。四階は、武器の保管場所となっていて体を動かすこともできるように作られている。
スーツケースを引きながら、三階にエレベーターで上がった。フロア案内を見ると、三〇三号室はすぐそばにあった。
カードキーをかざすと部屋についている機器のライトが赤から緑になる。ドアノブに手をかければすんなりと部屋に入れた。梅雨特有の湿気と熱い空気が漏れる。カードキーは部屋の入り口の近くにあるスロットに入れることで、電源がつきクーラーが稼働した。
部屋は普通のビジネスホテルのシングルルームと同じだ。
ユニットバスにシングルベッド、壁にぴったりつけられた少し大きめの横長の机の上にはテレビと照明と壁に取り付けられた鏡。机の下には小さな冷蔵庫が備え付けられていて、その横のガラス戸には湯沸しポットが見える。
収納がないのが若干不満だが、ビジネスホテルのような一室なら仕方がないだろう。
「狭い」
自分で選んだ部屋ながら思ったよりも狭かった。
最低限寝れる場所であるからいいかと思い直し、スーツケースを部屋の真ん中で開いてジャージとスニーカーを取り出して、ジャージは机の上に置き、スニーカーはベッドの横に置いておく。
荷物を一通り片付けると部屋を出て非常口をチェックし、フロアを一通り見て回ると部屋に帰ってベッドに寝転がりスマホのアラーム機能を使って十時三十分になるように設定すると寝転がった体勢のまま教本を開いた。
ダンジョンに関する法律、ダンジョンでドロップしたアイテムの取り扱い、スキルの取り方からスキルの扱い方、ダンジョンの歩き方にマッピングの仕方、集団戦での注意など習うことは多岐にわたる。
「これ、二週間で覚えられんの…?」
あーと声が出た。勉強など大学を卒業して以来していない。
「勉強とかめっちゃ久しぶり…」
意識低い系の社会人だった作菜は、がっくりとうなだれた。
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