不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター

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6.酷いっすよ!

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「ふん、ふふん、ふーん♪」


 廊下を跳ね進みながら三馬鹿を探す。三馬鹿とは美少年君に見られてモジモジしていたスキンヘッド頭の三人のことだ。いつも三人で行動していて、ツルンッとした頭以外にもよく似た三人。だが、髭だけは顎、鼻下、無精髭とそれぞれで違う。そしてそんな三人を厨房の扉前で見つけた。


「あ! いたっす!」


「ん? おおツキ」


「お! ちょうどよかったな!」


「もうすぐで諦めるところだったぜ!」


「?」


 向かい合って何かを話していた三人は、いい笑顔でちょいちょいと三人揃って俺を手招きする。その招きに首を傾げながら近づいた。


「なんか俺に用っすか? 頼み事っすか?」


「ああそうなんだよ」


「実は俺たち今日皿洗い当番なんだけどさ」


「お前ちょっと変わってくれね?」


「ええ? 嫌っすよ!!」


 もしかしてそのために俺を探してたんっすか? まさかさっきの諦めるっていうのは俺に当番を押し付けるのを諦めるっていう意味だったんっすか!? ならここはっ!!


「おっと、逃がさねぇぞ?」


「いだっ!!」


 逃げようとしたところで一人に頭を鷲掴みにされた。


 止めるにしてももっと優しい止め方ってものをしてほしいんすけど!?


「もう! 離してっす!! 何で俺が三人の当番を変わらないといけないんっすか!」


 どうせ今日の仕事が終わったからって三人で外に遊びに行くつもりっす! そんな奴らのためになんか絶対変わってやらないっすよ? 俺には美少年君のお世話をするという仕事が待ってるんっすから!


 ジタバタと暴れるも頭の拘束からは逃れられない。どんだけ力が強いのか。俺の頭が割れてしまうではないか。そうこうしているうちに他の二人が俺を逃がさないように包囲網を組み出した。顔面が凶悪な分威圧感が半端ない。


「なんでってお前さっき俺らのこと馬鹿にしてただろう?」


「? してないっすよ?」


「何とぼけてんだ」


「俺らが照れてんの見て笑ってただろ!何が教育に悪いだ!!」


「あと、誰がモジモジーズだ!」


「!?」


 ええ? あ、あれっすか!? で、でもっ!


「教育に悪いとかまでは言ってないっすよ!」


「「「言ってなくても思ってただろうが!」」」


「お、思ってないっすよ?」


「「「嘘つけ! 顔に書いてんだよ!!」」」


「!?」


 ええー! 本当に思ってないっすのに!! 俺ただ笑ってただけっすよね? ……まぁ、もしかしたら心のもっと奥底では思ってたかもしれないっすけど、でも、俺ってそんなにわかりやすいっすか?


「?」


 自分の顔をモニモニ触ってみる。ボスにもよく思っていることを言い当てられるし俺の顔はどこまで俺の心の内を表現し物語っているのか。


「ま! というわけで俺達はお前の態度に酷く傷ついた」


「その罰として皿当番よろしくな~」


「ちゃんとお土産買ってきてやるからな~」


「え? あ、ちょっと待ってほしいっす!」


 言うや否や三人は颯爽とこの場から去っていってしまう。その逃げ足は流石の一言。でもちょっと考えてほしいのだ。今日の皿洗い当番は三人。組織内に調理や家事専任の人はいるが日頃のご飯の感謝を込めて皿洗いは持ち回りでやっているのだが、俺一人だけに頼んで三人とも去って行ったぞ?


 ……え? 三人の量を俺一人でやるんっすか?


「…………酷いっすよ!!」




ーー

(No side)


 ――ツキが出て行った医務室


「それでラック。ツキ君追い出してどうしたの?」


「ラックって呼ぶな」


「はいはいボスね。どうしてなの?」


「……ちょっと確かめたいことがあってな」


 そう言ってラックは短剣を取り出すと寝ている少年に近づきナイフを振り翳した。


「ちょっボス!」


 ドスッ


 振り翳したナイフは少年の顔ギリギリに突き刺さるも少年はピクリとした様子も見せない。だが、ただ黙ってその様を見下ろすラックの目には鋭さしかなく、その場に静かな緊張が走った。


「……本当に気は失ってるみてぇだな」


 どのくらい経ったのか。ラックは刺さったナイフを抜き取り、鞘に戻すとイーラに投げ渡した。


「うわっと」


「イーラ、こいつはなんか怪しい。あんま油断すんなよ」


「……ボスお得意の勘がそう告げてるの?」


「ああ。敵かはわからねぇが、しっかり見張り頼んだぞ。……あとあんまツキ近寄らすな」


「……了解」


 パタン

「……はぁぁ」


 扉が閉まり、ラックが去った部屋でイーラは一人溜息を吐いた。


 ……最後の近寄らすなはこの子が危険人物かもしれないからじゃなくて完全にツキ君の興味がこの子に向くことへの嫉妬だよね?


「……と言うかもっと確かめ方あったんじゃない?」


 イーラが少年のベッドへと視線を戻せば、少年の顔横にはくっきりとした剣の刺さった痕が残っていた。


「……これ、どうにかしないとツキ君不思議に思うよね……」


 少年の世話をすると張り切っていたツキはきっとここへまた戻ってくるだろう。そして、この痕を見れば剣の痕だと気付き、あれだけ疑っていたのだ。すぐにラックがやったことだとわかって文句を言いに行くに決まっている。そして、そんなツキにラックの機嫌が降下するのは目に見えている。


「はぁぁ……」


 ベッドにできた傷痕を前にイーラは二度目の溜息を吐いた。そして――


「あれ?」


 少年の額に汗が掻いてあることに気付いた。


「……寝てるよね?」


「…………」


 そのまましばらくじーっと見続けるも少年はピクリとも動かなかった。





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