不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター

文字の大きさ
39 / 150

38.俺のせい、それは当然っす

しおりを挟む


 フレイ君の目に浮かぶ涙にへにゃりと眉が下がる。こんなに泣いて、フレイ君にはびっくりさせてしまったようで申し訳ない。


 今回のことは全て俺の不幸体質が招いたこと。悪い奴らに見つかったのも、花瓶が落ちてきたのも俺のせい。それで怪我をしたのだからやっぱりこれも俺のせいだ。だからフレイ君は何も悪くない。それより……


「フレイ君……俺の方こそごめんっす。最後の花瓶、もうちょっとでフレイ君に……っ」


 あの時、上から落ちてくる花瓶に気付けていなければ、フレイ君に当たっていた。それを思い出し、身体が恐怖に震えた。


 ……フレイ君、喜んでたっすのに……。


 俺がこんな体質じゃなければ、あんな奴らすぐに撒いて逃げられたのだ。そもそもフレイ君の正体だってバレていなかっただろうし、あんなにも逃げ回る必要もなかったはずだ。他にもスリとか知らない人に体当たりされたり、飲み物かけられたり暴走馬から逃げたり、団体さんに列から跳ね飛ばされたりとか色々なかったはず。せっかく街に行ってあれだけ喜んではしゃいでいたのに、フレイ君には嫌な気持ちや怖い目にたくさん合わせてしまった。全部全部俺の体質のせいで、俺のせいで……


「……本当に……巻き込んでごめんっす」


「ツキさん……」


「……おい、あほツキ」


 目を下に落とし、落ち込んでいると、ボスにムニーっと上を向くように両頬をつねられ引っ張られた。


「……ボ、ボヒュ? い、いひゃいっしゅ!」


 しかも初めは軽くつねっている感じだったのに、だんだん指先の力が強くなっていった。


「お前は馬鹿か?」


「ひぇえ?」


「なんでお前だけが悪いって話になってんだよ。お前の体質についてはこいつフレイだって知ってたことだろ?」


「れ、れみょ……」


「今回起こったことについてはフレイのお前への体質への認識の甘さと対応が悪かったんだよ」


「ひょんなことは……」


「あるだろ。フレイから軽く話は聞いたが小さいのも合わせれば俺達と行動する三倍以上の問題が起こったんだろ? 俺らと街に行った時は両手で足りるくらいしかねぇのに。それがその証拠だろうが」


「…………」


 ……確かにそうっすけど……。


「だからツキ、お前はなにも悪くない。……いや、黙ってアジトから抜け出したのは悪いが……――一番悪いのはそもそもの元凶。抜け出しを考え実行したそいつだ」


「……すみません」


 ジロッとボスから睨まれたフレイ君は身を揺らし、小さくさせた。それを見て、俺は眉を下げ、またボスに視線を戻した。


「……ボス……でも……」


「でもじゃねぇよ。……お前がフレイのことを気に入ってんのは知ってるけどな、論点をずらすな。そもそもの話、フレイが街に行きたいっつって無理矢理実行しなきゃ今回のことは起こらなかったんだ。お前がさっき頭に挙げ連ねたであろう不幸も起きなかった。それはわかるだろ?」


「……はいっす」


「じゃあそれが全てだ。――あと、今回のこと、タダで済ます訳にはいかないこともわかってるな?」


「……はいっす」


 肩を落とし頷く。聞けば俺達がいなくなった後、ボスやアジトにいた仲間達は総出でアジト内(家、外両方)や周辺の山、森を中心に俺達を探し回り、わざわざ街にまで走って見に行ってくれた仲間達もいたようだ。フレイ君が怪我をした俺を転移で連れ帰ってきてくれたため、すれ違いになってしまったようだが、俺達が街にいて食べ歩いている間に、大変な騒ぎになってしまっていたようだった。


 ……基本、自由な組織であれど黙ってアジトから抜け出し、いなくなり、これ程までにボス達に迷惑をかけてしまったのだ。組織との名の通りここまでの勝手は許されず、怒られるだけで済むことではないことはわかっている。だが、ボスはすぐに何かを言うわけではなく一度息を吐き出すと、そっと俺の頭に手を置いた。


「……とりあえず今日のところはもう休め。たん瘤で済んだと言っても打ったのは頭だからな。話は明日以降また聞く」


「はいっす……」


 ……あんだけ痛かったっすのに俺、たん瘤で済んだんっすか?


 血が出ていると男達が言っていたような気がするのだが、俺の気のせいだったのだろうか。内心首を傾げるもお仕置きへの不安が勝り、おずおずとボスを見上げた。


「どうした? なんか心配事でもあんのか?」


「……お仕置き痛いっすか?」


 悪いことをしたというのはわかっているけれど、お仕置きは怖い。恐る恐る尋ねた俺にボスは苦笑する。


「俺がお前にんな痛みを与えるとでも? お仕置きだからってそんなことしねぇよ」


「……よく殴るっすよ?」


 馬鹿ツキ! って言ってよくボス俺の頭に拳骨落とすっすよ? あれ痛いっすよ?


「……それはまたちょっとちげぇだろ」


「……そうっすか」


 ……違うっすか……。


 微妙な顔をするボス。でも俺はホッとした。今はちょっとナイーブになってしまっているからか、お仕置きと言われると昔飼われていた時にされたことを思い出してしまう。


「じゃあフレイ君にも痛いことしないっすよね?」


 一応念のためにフレイ君のことも聞いてみた。するとさっきとは違い、ボスはスッと俺から目を逸らした。


「…………………………当たり前だろ」


「「……ため長いな」」


「うるせぇ」


 レト兄とイーラさんが呆れた目をボスに向けた。少し不安だが、ボスがしないと言ったのならしないだろう。


「ほら、もういいだろ? 早く寝ろ。……それとも一緒に寝てやろうか?」


 微妙な顔をする俺にボスは揶揄うようニヤリと笑った。それにいつもなら「いらないっすよ!」と言うところだ。そう、言うところだが……


「……はいっす」


「……………………は?」




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界召喚チート騎士は竜姫に一生の愛を誓う

はやしかわともえ
BL
11月BL大賞用小説です。 主人公がチート。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 励みになります。 ※完結次第一挙公開。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】

ゆらり
BL
 帝国の侵略から国境を守る、レゲムアーク皇国第一魔導騎士団の駐屯地に派遣された、新人の魔導騎士ネウクレア。  着任当日に勃発した砲撃防衛戦で、彼は敵の砲撃部隊を単独で壊滅に追いやった。  凄まじい能力を持つ彼を部下として迎え入れた騎士団長セディウスは、研究機関育ちであるネウクレアの独特な言動に戸惑いながらも、全身鎧の下に隠された……どこか歪ではあるが、純粋無垢であどけない姿に触れたことで、彼に対して強い庇護欲を抱いてしまう。  撫でて、抱きしめて、甘やかしたい。  帝国との全面戦争が迫るなか、ネウクレアへの深い想いと、皇国の守護者たる騎士としての責務の間で、セディウスは葛藤する。  独身なのに父性強めな騎士団長×不憫な生い立ちで情緒薄めな甘えたがり魔導騎士+仲が良すぎる副官コンビ。  甘いだけじゃない、骨太文体でお送りする軍記物BL小説です。番外は日常エピソード中心。ややダーク・ファンタジー寄り。  ※ぼかしなし、本当の意味で全年齢向け。 ★お気に入りやいいね、エールをありがとうございます! お気に召しましたらぜひポチリとお願いします。凄く励みになります!

魔法学園の悪役令息ー替え玉を務めさせていただきます

オカメ颯記
BL
田舎の王国出身のランドルフ・コンラートは、小さいころに自分を養子に出した実家に呼び戻される。行方不明になった兄弟の身代わりとなって、魔道学園に通ってほしいというのだ。 魔法なんて全く使えない抗議したものの、丸め込まれたランドルフはデリン大公家の公子ローレンスとして学園に復学することになる。無口でおとなしいという触れ込みの兄弟は、学園では悪役令息としてわがままにふるまっていた。顔も名前も知らない知人たちに囲まれて、因縁をつけられたり、王族を殴り倒したり。同室の相棒には偽物であることをすぐに看破されてしまうし、どうやって学園生活をおくればいいのか。混乱の中で、何の情報もないまま、王子たちの勢力争いに巻き込まれていく。

【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。

カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。 異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。 ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。 そして、コスプレと思っていた男性は……。

処理中です...