不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター

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138.本気っすか? 

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 じわじわとした冷たい空気が周囲に漂い出す。またブルっと身体を震わせて、俺はボスの背中へとくっつきなおした。チラリと見ればモージーズー達も身を寄せ合い、フレイ君は飛び上がる勢いで上下にも横にも震えていた。そんなフレイ君をもう完全に微笑みをなくした美人さんが冷たく見下ろす。


「……フレイ。わたくしは力を回収してきなさいと言ったのです。誰が遊びに行きなさいと言いましたか?」


「っだっ! だっだっだって下に降りるのなんて久しぶりだったし! ちょっとくらいって――」


「それならそうと先にツキさんから神力を回収するべきでは? あれは人には過ぎたものなのですから。私、言いましたよね? あなたにはツキさんの人生を変えてしまった自覚はあるのですか? 当然ありますよね? この数ヶ月側にいて、ないと言うのなら私はあなたを心底見損ないますよ?」


「う゛っ」


「あとあなた神力使いすぎです。この方達にも確信を持たれるほど使用するとは何事ですか。これも私言いましたよね? 下ではできるだけ使うなと何度も、何度も何度も再三言わせておいて、無視しましたね? 誰が記憶を改竄し、捕まり助けられ溶け込めと命じましたか? 誰がそんなことしていいと言いましたか。特に、命に関することで私達が関与することはいけない事だとあれほど言い、教えてきたのに私を馬鹿にするかのように使いましたね? いえ、するかのようにではなくしていますよね?」


「そ、そんなことは……っい、いや命に関してはだってあれはツキさんの力が暴走しちゃったから仕方がなく――!」


「その暴走の原因を作ったのは誰ですか? あなたですよね? あなたがさっさと助けに入れば……いえ、力を封印し放置・解放などという馬鹿げたことを実行しなければ、起こらなかったこと。そうでしょうフレイ? 誰がそんな面倒なことをしろと命じましたか? なぜ回収ではなく封印し解放したのですか。最初から力を使ったことといい初めから私の言葉を全く聞いていなかったでしょう? 聞く気もありませんでしたよね?」


「…………」


「聞いているのですかフレイ」


「ハイ、ゴメンナサイ」


「「「「「「…………」」」」」」


 ……フレイ君ボロ負けっすね。


 内容はよくわからないがそんな二人の力関係がよくわかるような姉弟会話の隙にボスに聞いてみよう。


「ボス……。あの美人さんもフレイも一体何者なんっすか?」


「……ツキ、神力って聞いて何思い浮かぶ?」


「思い浮かぶもんっすか? んーすごい力っす」


「……他は?」


「強そうっす」


「…………他は?」


「なんか光ってるイメージっす」


「………………他」


「なんにでも勝てそうっす」


「…………お前それわざとだろ。普通こんだけ聞いたら思い浮かぶもんがあんだろうが。ほとんど答え出てるようなもんだろ」


「えー」


 ボスがお馬鹿を見る目を向けてくる。


 ……んーでも答え出てるって神力っすよね? 神の力っすよね? 神……ん? あ、


「神様っす!」


「正解」


「ん?」


 で?


「え? なんすか? 神様がどうしたんっすか?」


「だからあの二人がこの世界の神さんだ」


「はい?」


 かみさん? 髪さん? 頭? いや、今の話から言ったら神様のことっすよね? ええー?


「本気で言ってるっすか? ……見えないっすよ?」


 確かに美人さんにはなんだか神聖ななにかを感じる。だが、今その美人さんは片手でフレイ君の顔面を潰す勢いで鷲掴んでいる。


 フレイ君めっちゃ痛そうっす。


「……まぁ俺もあれ見たらちょっと信じられねぇけど、簡単に天候操ったり、ぴょんぴょんあちこち飛び回ったり現れたりお前の体質抑えたり他多数のこと普通出来ねぇことばっかだろ。それ全部魔法じゃなかったしな」


「……でも神様ならなんでこんなところにいるんっすか?」


「それはこのお馬鹿のせいです」


「なっ姉様! 馬鹿だなんて酷い!」


「本当のことでしょう」


「……ハイ」


 がっくしとフレイ君が項垂れる。フレイ君……と同情を向けながら美人さ……いや女神様に向き合い尋ねた。


「どういうことっすか?」


「実はツキさんの不幸体質はこのお馬鹿のせいなのです」


「……え? 俺の体質がっすか?」


 なぜ俺の体質の話が出て……って


「…………え?」


 俺の体質がお馬鹿の……フレイ君のせい? …………え?


「っええーー!?!?」


 

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