不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター

文字の大きさ
144 / 150

143.友達っす

しおりを挟む



「あ、あのっ……なんか今帰るっていう言葉が聞こえたんっすけど?」


 また転げそうになりながらもフレイ君達の元へ戻れば女神様は頷いた。


「はい。フレイは連れて帰ります」


「そんな……どうしてっすか?」


「もともと先程ズーさんが仰った事態によりわたくしがあなたの中へのフレイの力に気付くことになりました。そして、フレイを締め上……話し合いのもとに私はこの失態の挽回にとフレイにツキさんの中にある力を回収するように命じたのです。なのに……ふふ」


「「…………」」


 女神様めっちゃ怖いっす……。フレイ君もう一回謝ってた方がいいと思うっす。


 みなまで言わず暗い笑みを浮かべる女神様にフレイ君はガクブル顔を青くし震えてしまっている。それでも、


「あ、あの姉様? でも、僕もうちょっとここにいた――」


 自分の要望を口に出すフレイ君に俺は尊敬の念が絶えなかった。……が、


「自分の行動を振り返り私がそれを許可をするとでも?」


「…………」


 言葉を遮られ、冷たくニコリと微笑む女神様にフレイ君はもう二の句を継げない。そんなフレイ君に今度は俺が! っと声を上げた。


「あ、あのじゃあまたフレイ君に会えたりは……」


 そそそそそっとフレイ君に近寄りくっついて言う。そんな俺に女神様は残念そうに眉を下げた。


「……フレイは一応こんなのでも私と同じ神です。あまり私達神がこの場に留まり続けることは推奨されません。祝福や呪いと同じく周囲にどれだけの影響を及ぼすか計り知れませんので……」


 チラリとボス達を見る女神様。


「それに、力を回収できたと言ってもその力は長年ツキさんの身に宿り共にいた力。その染み付いた力をすぐに、完全に消し去ることは難しいためもうしばらくツキさんはその力の影響を受けることになるでしょう」


「え?」


「もう一度走りに行っていればモーさん達の仰る通りになっていたかと」


「ひえ!?」


 まじっすか!?


「とは言っても力の大半は失われていますので、あなたが恐れているような事態は起こりえませんし、起こる不幸の頻度も落ちることでしょう。ツキさんにはもう暫くご迷惑をお掛けしてしまうと思いますがご辛抱下さい。……そして、それだけ神の力は強力なものなのだとご理解いただきたいのです」


「……はいっす」


「……できればご迷惑をお掛けしてしまった分ツキさんの希望には添えるようにして差し上げたいのですがなにぶんフレイはこうなので……」


 はぁぁ……とわざとらしく溜息を吐き、フレイ君に視線をやる女神様。そんな女神様にフレイ君はカッと顔を赤くし、噛みつく勢いで声を上げた。


「っな、なに!? 別にあとちょっとくらいここにいてもいいじゃん! 影響だとかそんなこと言って姉様だってたまにっ――」


「黙なさいフレイ。私はきちんと神としての職務を全うし、力を抑えてここに降りているのです。あなたのように下で力を使うことはありませんし、使うとしてもそう何度も何十回も使ったり致しません。なのにあなたときたらどうでしたか? あなたはまだ神として未熟、今回のことでそれはわかっていますよね?」


「っ」


 やはり黙らせられるフレイ君はとても悔しそうだ。


「……フレイ君……。ボス……」


 そんなフレイ君に助けを求めるようボスを見上げるも、首を横に振られる。


「流石に俺も神の事情はよくわからねぇから口出しできねぇよ」


「……」


 チラッとレト兄やモー達を見てみるも同じく頭を振られた。


「はいっす……」


 しょんぼりと肩が落ちた。


 ……さっきまで笑って怒って話してたっすのにいきなりお別れなんっすか?


「……フレイ君……」


 名残り惜しくフレイ君を見れば、フレイ君も同じように俺を見ていた。


「……ツキさん、僕……」


「フレイ。これ以上は許しませんよ。私の言い付けを破り、初めから力を使い勝手なことばかりし、人の仲を掻き回そうと企んでいたあなたに同情の余地はありません。……まぁ、その企みは全て失敗していたようですが」


「っし、失敗なんかしてないよ! それに身近に潜り込んだ方が力を取り返し易いかなと思ったからでっ掻き回すつもりは――」


「どの口が言うのですか。さっさと接触し、今のように触れればよかっただけではないですか。ツキさんにならできたでしょう? それにそのチャンスは幾らでもありましたよね? 恋愛本を読むのは勝手ですけれど、現実にそれを求めるのはやめなさい。……あなたの空回りは見ていてこちらが恥ずかしくなってしまうほどでしたわ」


「なっ~///    空まわ!? そ、そんなことないもん!! 僕上手くやってたもん! ていうか、見ないでよ!!」


「なかなか帰って来ないあなたが悪いのです」


「そっ!? だっ!?」


「下手な言い訳ほど見苦しいものはありませんよフレイ」


「~~っ!!」


 ……なんかまた姉弟喧嘩ぽいものが始まっちゃったっすね。


 思わず呆気に取られた。――が、


「だ、だって!! ~~った、確かに久しぶりの現世だしちょっと遊んでやろうとは思ったかもしれないよ!? ツキさんチョロそうだしラックとの仲引っ掻き回して遊んでやろうとか思ったかもしれないよ!?」


 ……え?


「弟みたいとか言ってたから意地悪してやろうとかも思ったし僕に懐いてきてるのも馬鹿だなぁって思って丁度いい暇つぶしのおもちゃだと思って見てたけどさ!!」


 …………ええ?


 思わぬフレイ君からの攻撃に愕然とした。


「お、俺おもちゃっすか?」


「な? だから言っただろ? あいつ性格悪いって」


「……」


 なんか涙出てきたっす……泣。


「でも全部失敗して、割食ってたの僕じゃん! おざなりに対応されて可哀想な扱いされてたの僕じゃん! ツキさんの不幸に巻き込まれてボロボロになってこき使われてたの僕じゃん! 空回りとかさ、そんなこと言うんならそんな怒らなくてもいいじゃんか! 僕すっごく可哀想だったでしょ!?」


 フレイ君が叫ぶ。


 不幸体質になった原因よりフレイ君が俺を馬鹿だと思っていたことの方が衝撃的で悲しい。いつものふわふわフレイ君の微笑みの下でそんなことを思っていたなんて……。いや、ボスからも言われていたし、たまに現れるブラックフレイ君になんとなくわかっていたが本人フレイ君の口から直接聞くのと聞かないのとではダメージの大きさが違う。仲良くなれたと思っていたが、フレイ君にとって俺は玩具と変わりなかったのか……。


 ………………ホロリ。泣


「可哀想どころかとても痛快であったことは確かですが、それとこれとはまた別です。あとフレイ、全て自供してしまっていることに気付きなさい。人間をおもちゃと言うのもやめるべきです」


「っお、おもちゃは言い過ぎかもしれないけど暇つぶしに遊んでもいいじゃん! 僕は神だよ? 僕は偉いんだよ!?」


「はぁぁ……確かにあなたは神ですが、そんなこと許されるわけではないでしょう。どこでそんな間違った知識を入れたのですか。人にだってそれぞれ心があり、いくら神でも予想のつかない事をする生き物でもあるのですから油断してはなりません。……あと、とても傷つきやすい生き物でもあるのですから」


「姉様? どこ見て……!?」


「シクシクシク……(泣)」


「!? ツキさっ!?」


 いいんっす。いいんっすよ。俺が一方的にお友達だとかお兄ちゃんになるとか思ってただけっすから。一緒に過ごして、フレイ君とだんだん心を通わせることができるようになったって日に日に喜んでたっすけどそれ全部俺が勝手に思ってたことなんっすからいいんっすよ。あ……違うっすね、こんな考えすら烏滸がましくてフレイ君には迷惑だったんっすかね……。


「シクシクシクシクシクシクシク……(泣)」


「あ、いや、ちょ、ツキさん? あの初めは……そ、そう! 初め! 初めだけだからそう思ってたのは! 今はというかもっと前からそんなこと思ってないよ? 違うよ!?」


「無理はしなくていいんっすよフレイ君……」


「いや、無理とかじゃなくて!」


 フレイ君の話をうんうんと聞きながらやっぱりフレイ君は優しいな~とホロリと涙をこぼした。それを見てフレイ君がまた焦って「違うって!」と叫ぶがうんうんと頷くだけにとどめた。でないともっと泣いてしまいそうだ。


「ツキさん聞いてよ!!」


「うんうん……ホロリ」


「フレイの必死さ笑えるな」


「はぁぁ……根は素直な子なのです根は。なのにどうしてああも考えが足りず見栄っ張りで傲慢的な台詞ばかり吐く捻くれ者なのでしょうか。……結局は後悔するくせに……」


「だな」


 ボスと女神様がなんか喋ってる。だが、俺は――


「ぼ、僕はもうツキさんを! と、友達だと思って……だからもっと一緒にいたくてっ……そう思ってて……っ僕……っ!」


「! フ、フレイ君!」


 涙を湛えながらも友達だと、一緒にいたいと言ってくれるフレイ君に胸がきゅんっと心が立ち直った。そして泣き出してしまったフレイ君に俺も涙があふれて二人でポロポロ涙をこぼし抱き合った。


「……フレイ、初めてのお友達です」


「……あー、ツキもだな」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界召喚チート騎士は竜姫に一生の愛を誓う

はやしかわともえ
BL
11月BL大賞用小説です。 主人公がチート。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 励みになります。 ※完結次第一挙公開。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】

ゆらり
BL
 帝国の侵略から国境を守る、レゲムアーク皇国第一魔導騎士団の駐屯地に派遣された、新人の魔導騎士ネウクレア。  着任当日に勃発した砲撃防衛戦で、彼は敵の砲撃部隊を単独で壊滅に追いやった。  凄まじい能力を持つ彼を部下として迎え入れた騎士団長セディウスは、研究機関育ちであるネウクレアの独特な言動に戸惑いながらも、全身鎧の下に隠された……どこか歪ではあるが、純粋無垢であどけない姿に触れたことで、彼に対して強い庇護欲を抱いてしまう。  撫でて、抱きしめて、甘やかしたい。  帝国との全面戦争が迫るなか、ネウクレアへの深い想いと、皇国の守護者たる騎士としての責務の間で、セディウスは葛藤する。  独身なのに父性強めな騎士団長×不憫な生い立ちで情緒薄めな甘えたがり魔導騎士+仲が良すぎる副官コンビ。  甘いだけじゃない、骨太文体でお送りする軍記物BL小説です。番外は日常エピソード中心。ややダーク・ファンタジー寄り。  ※ぼかしなし、本当の意味で全年齢向け。 ★お気に入りやいいね、エールをありがとうございます! お気に召しましたらぜひポチリとお願いします。凄く励みになります!

魔法学園の悪役令息ー替え玉を務めさせていただきます

オカメ颯記
BL
田舎の王国出身のランドルフ・コンラートは、小さいころに自分を養子に出した実家に呼び戻される。行方不明になった兄弟の身代わりとなって、魔道学園に通ってほしいというのだ。 魔法なんて全く使えない抗議したものの、丸め込まれたランドルフはデリン大公家の公子ローレンスとして学園に復学することになる。無口でおとなしいという触れ込みの兄弟は、学園では悪役令息としてわがままにふるまっていた。顔も名前も知らない知人たちに囲まれて、因縁をつけられたり、王族を殴り倒したり。同室の相棒には偽物であることをすぐに看破されてしまうし、どうやって学園生活をおくればいいのか。混乱の中で、何の情報もないまま、王子たちの勢力争いに巻き込まれていく。

【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。

カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。 異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。 ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。 そして、コスプレと思っていた男性は……。

処理中です...