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十二話

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「カシス、これは反逆だぞ? 王からの勅令ちょくれいに背くと言うのか?」
「アヤノちゃんはだいぢなともだち。そういうのは関係ないです」
「カシス……冗談だよな?」
「ごめんなさいレオ。もう決めた事なのです」

 小さい背中。なのに頼もしい。不思議な感覚。
 でも、カシスちゃん……ダメだよ。勇者レオには勝てないよ……。

 良くも悪くもいつだって全力。その性格がこうも悪く働くのか。

 年端もいかない少女に守られる趣味はない。例えおっきなお友達でも。逆なんだ。俺たちで守りたいんだ君を‼︎


 タタタタッタタッタタタタタタッ‼︎

 銀髪の少女。絶対領域が素敵なヒメナちゃんが勢いよく、いや、ステップを踏みながらふかふかベッドに近づいて来る。

「むぅ。ヒメナ‼︎ 容赦はしませんよ」

 カシスちゃんの目の前に立ち顔を近付けた。数秒、停止する。

 ……始まる。血みどろの戦いが。止めないと、絶対に止めないと。

 そう思った時、ヒメナちゃんはクルりと回り、勇者レオに自前のミニステッキを向けた。

「あたしはこっち!」

「姫、正気ですか? いかに姫と言えども王の勅令ちょくれい。逆らう事は許されませんよ?」

「知らなーい。興味ないかもー」

 それ以上の言葉は発さない。でも、カシスちゃんのほうを満面の笑みで見た。

「ヒメナ……あなたって人は本当に……しょうがない人です……」

「おともだち! まもるんでしょ? カシスはあたしのともだち! ふふーん」

「救いようのないお馬鹿さんですよ……」

 カシスちゃんの頭を撫でるヒメナちゃん。

 ーーなにこれ? いや、なんなのこれ?

 俺はポカーンとしてしまった。そんな俺に気付いたのか、ヒメナちゃんが近付いてくる。そして小声で耳打ちしてきた。


「多分、あなた死ぬわ。でもね、カシスの気持ちだけは受け取ってあげて。これはあたしからのお願い。オーケー?」

 身に纏うローブから見え隠れする太もも。俺は自ずと、ゆっくりと首を下に向けた。ゴクリ。この太もも…………。
 そう、目線は太ももに釘付けなのだ。

「うんうん。うなずいてくれて嬉しいよ!」

 え、あっ‼︎ 違う。太ももを見てただけッ‼︎ っと思った時にはもうヒメナちゃんは目の前に居なかった。

 ローブを脱ぎ捨て、ヴァルキリーになっていた。
 
 全てが規格外の異端なお姫様。ヒメナちゃんのクラスは《ヴァルキリーウィッチ》なのだ。

 巨乳なのか貧乳なのかはわからない。
 胸元は鎧に包まれ、さらに鎧のブーツ。

 露出度、それは全て絶対領域にそそがれる。
 太ももがそそる系キャラ、それがヒメナちゃんなのだ。

 ーー安心して下さい。同人誌は全て巨乳でした。ちょい馬鹿キャラなので設定は夢銀河。その節はどうも。大変お世話になりました。

 って、違うだろ……。俺が死ぬのは確定してるんだ。

 止めないと……今ならまだ……今なら……まだ……間に合う‼︎


「おいで、クマゴロウ‼︎」

 カシスちゃんもローブを脱いでいた。
 ショーパンに黒の熊Tシャツ、ペタンコサンダル。

 Tシャツが徐々に無くなっていく……。
 そう。カシスちゃんはTシャツにプリントされている熊さんを召喚するのだ。

 残念。下着では無く水着です。水着にショーパン。これがカシスちゃんの戦闘スタイル。


「なんや、カシスちゃん! 戦闘かいな?」

 ポンッと現れ宙に浮くのはカシスちゃんの頭と同等サイズくらいの眼帯を掛けた熊さん。

 そう。エセ関西弁のクマゴロウとはこいつの事だ。


 始まる。始まってしまう……。止めないと。
 こ、こんなのダメだよ……。


 アヤノの為に争わないでッッ‼︎
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