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二章
三十五話
しおりを挟む「え、エリリンっエリリンっ!! しゅご、しゅっごぉぉぉい!!」
「きゃはっ! もしかしてアヤノちゃん初めてなのー?」
「うんっ! 初めて!! しゅごいよぉぉぉぉ!! 気持ちいぃぃ!!」
「じゃぁこんなのはどうかなぁー?」
びゅーーーーんッ。くるっ。
「うわぁぁぁぁ‼︎」
──初めて空を飛んだ。
箒に二人乗り。
どこに向かっているのかはわからない。
多分、逃げているのだと思うけど、この際そんな事はどーでも良い!
あてのない旅? ノン! 空中デート!!
最高にして最ッ高ッ‼︎ 初めて見る外の世界。広がる大自然。
森! 森! 森!
こんな辺境の地に住んでたんだ!!
ピタッとムギュッとギュウッとエリリンの背中と同化中。あったかい!
なんの疑いもなく背を向けてくれるエリリン。
一番遠い存在だと思っていたのにこんなにも近い。
純粋な気持ちで、この時間、この世界、この運命を、初めて楽しめてる気がするっ!
「ねぇ、エーリィーリーーン!! もっともっとぉ‼︎」
「あははっ! じゃあ、最高速度出しちゃうよーー! しっかり掴まっててねー!」
びゅーーんッ、びゅーーーーん
びゅいーーーーーーーーん‼︎
ギアを上げるように三段階の加速。
超高速で空を突き進むっ! さいっこうに気持ちいい!!
◇◆◇◆
夕日も落ち、辺りが暗くなり始める。
気温も下がりひんやり冷たくもなってきた。
シュゥゥゥ。徐々に風がおさまり、着地した。
楽しい楽しい空中デートも終わりのようだ。
日も落ち、灯りもない。薄暗い部屋。
微かに見えるはふかふかベッド。ふかふかベッド?!
えっ、戻って来ちゃったの? 何故?
「帰る前に貴重品だけねっ。もうここへは二度と来れないと思うから……」
え、エリリン……。ありがとう。でも帰るって何処に?! 二人で地の果てまで逃避行?……ファッフーン‼︎
──ここを離れる際、レオ様は「待て‼︎」「ダメだ‼︎」と、大声で叫んでいた。ただ叫ぶだけ。
〝あー、まじかぁ〟と遠い目をしているのが印象的だった。
そう。驚く事に、彼は空を飛べなかったのだ。
確かに戻ってくるとは誰も思わない。だからと言って、戻る事を選択するなんて……エリリンの肝の座った行動には感服する。
さ、さすギャルっ!!
◇
誰も居ないと安心しながら魔道具を袋に詰めていると、ふかふかベッドがもごもごし始めた。
なにごと?! まさかっ?!
「んんっ。ふぁぁ。あれっ? エリリンだぁ」
目をこすりながら、「おかえり」と言ったのはヒメナちゃんだった。ま、待ち伏せか?!
「げっ、まだ居たんだぁー」
「眠くなっちゃってさぁ。……気付いたら寝てたっ!!」
「自由すぎでしょーー」
「「あははっ」」
普通の会話。仲良さげ。あれっ?
世界線が変わったりしちゃった?!
「ふぁぁ。ちょっと寝たら疲れも取れたしあたしも帰ろうかなぁ」
「はいはい。お疲れー、じゃーねー!」
「乗せてって!!」
「無理無理! アヤノちゃんとニケツだから!」
「三ケツいっちゃおーー!」
理解が追いつかない。なんだこの日常会話?
バトルの気配ゼロ……。
…………。
──も、もしかして一時間ループを乗り越えた?! 生存ルート確定しちゃった?!
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