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二章
四十七話
しおりを挟む「胸は……S」
「はい。では、他の部位もどうぞ」
む……に……むに……むに……
む……に……むにむに。
「あやのーん。何してるんですか? しっかりむにむにして下さいよ。まったくもう。んんっ。はぁ──」
急なあやのん呼び。加えて余裕のある冷めた声色。
なのに、両手で顔を隠し漏れる吐息。
言葉と仕草が真逆。カシスちゃん……これは反則だってば……。ショーパンに下着だし。
〝ツン友の儀〟……やば過ぎる……。
──むにむにむにむにむにむにむにむに。
◇◆
「二の腕S、太ももS、ふくらはぎA、ほっぺA、足の裏B、うなじB──」
どうにか成し遂げた。採点完了!!
恥ずか死ぬ……。
「わたしの太ももがSランクですか……。うーん。ヒメナの太ももでようやくSランクですよ? 採点のし直しを希望します」
しまった……痛恨の採点ミス……。
「ちゃんとむにむにして下さいね」
対面するように女の子座りをし、俺の手を取り「ここです」と太ももIN。
「あ、ありがとう。むにむにするねっ」
「はい。どうぞ」
カシスちゃんは斜め下を向き、頬だけではなく耳まで真っ赤に染めていた。それでも……
「ちゃんとむにむにして下さいよ。まったくもう」
余裕のあるトーンでこの発言。
言葉と仕草のミスマッチ。このギャップこそが背徳感を刺激する。──か、勘弁して下さい……。
──むにむにむにむにむにむにむにむに。
◆◇◆◇
「太もも……A」
「さすがあやのんです!! 太ももはAランクっと。これにて終了です!!」
各部位の採点が終わると満足気な顔をしてロフトから出て行った。
どうやらカシスちゃんはツン部位の採点に来ただけのようだ。他の三人とは明らかにノリが違う……。
お泊まりの日数はどうしたら……。
──これは、いったい……。
気を取り直して……
セカンドバッターはヒメナちゃんっ!!
◇◆◇◆◇◆
「やっほー!!」
明るく元気にロフトIN。ヒメナちゃんの登場だぁ!
四つん這いにハイハイしながら近付いてくる。
しかしこのハイハイは危険だ。
膨よかな胸にブラトップ。既に視界はパラダイス。
く、来るのか? このまま覆い被さって来るのか?!
──ストップ。
体育座りで壁に寄り掛かりピタッと肩を寄せてきた。
ちっ。──だが、これがSランクの太ももか。
ツンツンしたい。ツンツンしたい。ツンツンしたい。
「なぁにぃ~? そんなにじろじろ見ちゃってぇ!」
しまったぁぁ。
「あ、いや。これは……その……」
「だよね。二人きりになったんだもん。期待……しちゃうよね? ……でもねっ靴下は蒸れてないんだ。ごめん」
いやいや、ノー蒸れはありがたいよ?
そこ、謝るところじゃないからね?!
「ううん。気にしないで!」
「無理しちゃって。健気だな~ほんとに!」
いやいや……。
「このブラトップかなぁ。今、蒸れてるとしたらぁ……」
手でパタパタしている。ゴクリ。
「じゃ、じゃあ──」
「無理しないでってば。アヤノちゃんが欲しいのはこっち。靴下でしょ?」
あぁ。どうしてここまですれ違ってしまうのか。
こんなにも近くに居るのに遠く感じる。
心のシンクロ率は限りなくゼロだ……。
それでも……俺は‼︎
「ううん。違うよヒメナちゃんっ。アヤノはねっ──」
「ダメ。アヤノちゃんの価値が下がっちゃう。妥協なんてしてほしくないよ。本当に欲しいもの、今度あげるから!」
「違う。違うの‼︎」
「ダメだよ……。寝てて汗掻いただけのこんなバッチいブラトップ。根源的に蒸れを成してない。アヤノちゃんが汚れちゃう」
何故だ……何故そう思うのに靴下はOKなんだ。
どんなに否定をしても足掻いても、靴下に収束してしまう。いったい何故なんだ。
「んしょっ」と、履いている靴下を脱ぎだした。
──何故だ何故だ何故だぁぁ。何故なんだぁぁぁ。
「エリリンの靴下だけどねぇ~。まったく蒸れてないから、焙煎もされてませーん。ごめんね。今はこれで……我慢して?」
グシャ。ぐしゃぐしゃぐしゃぐしゃ……ぐしゃッッ!
「うーー、うーーー」
あれ? フローラルの香りがする。あれれ?
「クンクンクン……クンっ」
「そんなにクンクンしちゃって! ほんと好きなんだからぁ!」
しまった。違う‼︎ けど……俺とヒメナちゃんを繋ぐ友情の証。険しくも恐ろしい絆だけど、これを放棄するわけにはいかない。大切に育む。
──だって、嘘から始まった関係なのだから。
なぁんだ。答えは既に持っていたのか。
死ぬ気でクンクンする。
結局、それ以外に出来る事なんてないんだ。
腹をくくれ。逃げるな。やるんだ。
今日は奇跡のフローラル。大丈夫。出来る‼︎ こんなチャンスは二度とない‼︎
絆を、信頼度をMAXにするんだ!!
コーヒー街道を突き進め!!!!
クンクンクン。クンクンクンクンクンクン。
「ほのかに香る、コクのある匂い。深みを感じる……。ヒメナちゃんっ、だいしゅき!!」
「あはっ、あははっ!! もの好きさんめぇ~!! 可愛いんだからぁ!!」
ぐしゃぐしゃねじねじ。まるでミルクでも与えるかのように押し付けられた。──めげない。立ち向かえ‼︎
クンクンクン。クンクンクン。クンクンッ。
すぅぅぅぅぅぅー。クンクンクン。
たくさんクンクンした。クンクンする度に、自分の中の大切な何かが磨り減るのを感じた。
きっと、これからもたくさんクンクンする事になるだろう。
クンクンする度に深まる絆。
クンクンの数だけ増える思い出。
クンクンはクンクンでクンクンがクンクン。
ボタンを掛け違えてしまった。
もう、軌道修正は不可能だ。
クンクンロードを突き進む。
だって俺は、ヒメナちゃんと仲良くなりたいのだから。──この気持ちに嘘はつけない。
◇
「ねぇ! 裏返してみよっか!! 少しは挽きたて風味が出るかもぉ?」
──あ、やばい。フローラルの加護が解ける。
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