極悪令嬢は清楚系美女になりたい!!

おひるね

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二章

五十七話

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「脱げよ。いいから脱げっ」
「ちょっと突然どうしたのよ? 話は聞くから落ち着きなさい」
「うるさい。とっとと脱げ!!」

 床に押し倒されるお姉さん。上に跨るエリリン。
 Tシャツを引っ張り強引に剥ぎ取ろうとしている。

 止められなかった。何がかんに障ったのかわからない。勢いよくロフトから飛び出してしまったんだ。

 昼間はごめんなさいしてくれたのに……。どうして、今は止まってくれないんだよ。

 ロフトから見守る事しかできないのか……。

 俺のそんな様子に気付いたのか、カシスちゃんがツンポーズを向けてきた。「任せてください」と言っているようだった。ツ、ツン友!!


「ジャスミンの肩はもちたくありませんが、一旦落ち着いて下さい。あまりにも一方的過ぎますよ。もぐもぐ」

「クソカシス。あんたまだ気付かないの? この女の着ている服がなんなのか」
「ただのTシャツじゃないですか。どうしちゃったんですか?」
「あー、もううざい。ガキは引っ込んでろ!」

 あっけらかんとするカシスちゃん。しかし次第に、里芋の煮っころがしをもぐもぐする口がゆっくりになり……止まった。

 そして、お箸で掴んでいたお芋が床に……。

「Tシャツ……えっ、あ、アヤノちゃんの……アヤノちゃんの………………アヤノ……ちゃん」

 ちょっ、カシスちゃん?!
 目を見開きしどろもどろ。驚きの顔をしちゃってる。

 確かにさっきまで二人を止めようと頑張ってくれてたのに、完全に停止してしまった。


 そんなカシスちゃんの横でヒメナちゃんが何やら気付いたような表情を…………え、ふむふむしだした!

「ははーん。そういう事かぁ! わかっちゃったよぉ~!」

 やめて! お馬鹿なんだから引っ込んでて。場をかき乱さないで。お願いっ。

「でも、順番があるよね?」

 お馬鹿トーンから一転、マジ声のヒメナちゃんがロフトから眺める俺を指差した。なにごと?

 エリリンは「あっ」と声を漏らすも、お姉さんに跨るのをやめる様子はない。
 必死に脱がされないように抵抗しているけど、このままじゃTシャツが破れそう……。

 ヒメナちゃんは「しょうがないなぁ」と立ち上がり、タンスを勝手に物色し始めた。「キャミソールが良いんだって」っと、Tシャツを引っ張りながらもエリリンは息を荒げて言った。

 さらにふむふむ。と、何やら確信したような表情に変わりタンスの中からキャミソールを取り出すと、ヒメナちゃんはこちらに向かって来た。たぶん、お着替えのキャミソールを手渡す為に。

 ロフトの階段を登ってくる。ブラトップ姿の美女を真上から拝める日が来るなんて……。

 どんどん近づいてくる。おっきなお山がどんどん!

 って、そうじゃない!!

「やっほー」っと、なんだか懐かしい挨拶を投げかけられると同時に階段を登り切りそのままロフトINした。


 本日二度目のヒメナちゃん。御回転。感謝です!

 って、そうじゃないんだ。どうして俺の頭の中はいっつもこう……くそう……。


 スンスンスン。クンクンクン。

 必死に葛藤していた。今はそれどころじゃないと頑張っていたのに……ヒメナちゃんのゼロ距離クンクンで頭の中に一輪のお花がパァっと。パパパァっと咲き誇る。



 ドクンッ。

「ひゃぁぁっ」
 するのではなくされる。美少女にクンクンされるのがこれ程までの破壊力とは。


「なるほどなるほどぉ~、やっぱりそういう事かぁ!」
「えっ?!」

 ドクンッ。一瞬で我にかえる。
 クンクンして、そのセリフは意味深過ぎる……。どういう事なのっ?! 臭かったの? ねぇ?!

「わたしさぁ、鼻がいいからわかっちゃうんだよねぇ。ついでに察しもいいのっ! へへーん!」

 どの口がそれを言うか。その口か! 

 壁に投げ捨てられたキャミソールを手に取り、またもやふむふむしだした。

「ジャスミンには素質があるからねぇ。焙煎したらアヤノちゃん好みに香ばしくなりそうだとは思ってたんだよ。うんうん。これは、ビンゴだねっ!!」

「ねぇ、どういうことなの?」
「どーもこーもないでしょ! この浮気者!!」
「ひゃあっ」

 パチンッ。と優しくデコピンされた。
 浮気者ってなんだろ。浮気……? あ……れ?

「本物をあげるって約束したでしょ? こんな焙煎もされてないような濡れ蒸れは及第点もあげられない。びちゃびちゃじゃん。こんなのを着て満足しちゃうアヤノちゃんは見たくないよ」

 お姉さんのキャミソールとヒメナちゃんのニーハイを同列に語ることすらおこがましいのに、まさかのキャミソールを完全に格下扱い!

 けしからん! フェロモンをなんだと思ってる! けしからんぞヒメナちゃん! 

 でも、謝る。俺はヒメナちゃんのニーハイが大好きってことになってるのだから。こればかりは仕方のないこと。

 そっか。キャミソールに浮気しちゃったんだ。



「ごめんなさい……」

「ううん。こうなったのはわたしの責任。アヤノちゃんを満足させられる物を今日は用意出来なかったんだから。辛かったよね。ごめんね」
「うぅ、辛かった。辛かったよぉ」

 色々と間違いだらけだけど、ヒメナちゃんの思いやりと優しさがひしひし伝わってくる。俺はこの嘘をつき通さなければいけない。絶対に。

 ヒメナちゃんによしよしされていると、

 
「いいかげんにしなさいよ!」

 ジャスミンお姉さんの怒鳴り声が響き渡った。

「早く脱げ! とっとと脱げ!!」
「脱ぐわよ。自分で脱ぐから離してちょうだい。あなたに脱がされるなんて絶対にごめんよ」
「信じられない。そう言って逃げるつもりでしょー?」
「はぁ? 冗談も大概にしなさいよ?」

 一触即発。そろそろ我慢の限界が近そうだ。
 カシスちゃんは依然と静止したまま。

 どうしよう……。

「だいじょーぶ! ……ひきたて焙煎。わたしとアヤノちゃんだけの秘密。唯一の理解者はわたし。アヤノちゃんが悲しむ顔は見たくないよ。だからわたしがエリリンを止めてあげる。明日もアヤノちゃんが笑顔で居られる為に」

 色々間違ってるけど間違ってない。
 素直な気持ちが嬉しくて、なんだか照れくさい。

 頭をポンっとされ「まかせてっ」と、ロフトから降りて行った。

 頼もしくも大きなお山を垂直に、真上から見送った。

 でも、ヒメナちゃんのその手には、俺のお着替えとして持ってきてくれたであろうキャミソールが。

 渡しそびれてしまったんだ。やっぱりお馬鹿なのかもしれない。本当に大丈夫なの? ねぇヒメナちゃん?!
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