17 / 106
17話
しおりを挟む「おいこら!! クソガキ!!」
先輩はマウントを取りノリノリだ。
危ない。行くな。俺は震えながらに思うも声は出ない。
タイムリープのツケかな。都合が悪くなれば〝パチンッ〟〝パチンッ〟何度でもやり直してきたのだから。情けない。
「やめてください」
冷たい目でマウントを取る先輩に向かって言った。
「あぁ? なんだてめぇ? ──あ、二見ちゃん。いや、これは、その……」
意気揚々だった先輩の手が止まった。
「〝彼氏〟が嫌がってるので、やめてください」
あいも変わらずとても冷たい目をしている。先ほどまで〝だいしゅき〟などと言っていた面影はない。
彼氏。そう思うと尚更情けなくなり、やりきれない思いが押し寄せてくる。彼氏になってまだ1時間程度、それでこのざまだ。
この女の事は好きでもなんでもない。……はずなのに。
……俺が好きなのはただ1人。秋月さんだけだ。
「ご、ごめんね!! やめるやめる!! いやぁ、冗談だよな!!」
マウントを取っていた先輩は立ち上がり龍王寺に手を差し出した。その手を取り立ち上がる。
そして2人は肩を組み
「俺たち仲良しなんだよ!!」
などと言い出した。なんだこの茶番。
「先輩! まじ、迫力ぱねぇーす!!」
「ははは! 悪かったな! えっと名前は」
「龍王寺っす!!」
「そーそー! 龍王寺くん!!」
2人は握手を交わし、他の先輩達は廊下に倒れこんだせいで埃まみれになった龍王寺の服を払っていた。
「まじで悪かったな。二見ちゃんもああ言ってる事だし仲良くしような?」
「先輩。こちらこそっす」
見繕う訳でもなく、本当に仲良くなっているようにみえる。
「じゃ、俺らは行くわ!! 二見ちゃんほんとごめんね!!」
そういうと先輩達は去って行った。
「二見さん、ほんとごめん。騒がしくしちゃって」
「いえ、気を使っていただきありがとうございました」
ちほは丁寧に頭を下げた。そこにはぎゅーだのちゅーだの言ってる彼女の姿はなく、とてもクールにみえた。
龍王寺は足を一歩二歩と後ろへ下げ壁にぶつかってしまった。頬を少し赤くして。
「あ、いや、ほんと、ほんとごめんなさい!」
龍王寺は走ってその場を去ってしまった。
目の前で起こる光景を何1つ理解出来ないでいた。
ちほの冷めた目、とても人を見るような目ではない。声のトーンも事務的だった。
そして、喧嘩が一瞬にして止まった事。
何故……?
ポカーンとしていると、廊下で倒れる俺にちほが乗ってきた。
小さな手で俺の頬を両手で触り、一言「バカ」と言い放った。切なげで不安そうな声で尚且つ、少し怒っているようにも感じ取れる。
そのまま一直線に迷いなく、ちほの唇が……。
──俺はまた……キスをされた。
さっきまで震えていたはずなのに、
不思議と落ち着く。心地が良い…………。
ドクン。「!?」
ドクンドクンドクンドクンドクン。
鼓動が早くなるのを感じる。
両手で頬を触られたまま、今も尚、キスをされている。
たったこれだけの事。なんて事ない。好きでもなんでもない女だ。
なのになんだ。これはなんだ。〝わかってる。〟いや、わからない。わかりたくもない。知らない。知りたくもない。考えたくもない。やめろ、やめろ、やめろ。
秋月さん……。妖精さん……。
鼓動とは裏腹に不思議と満たされる。温かい。
身体から力は抜け、受け入れる事しか出来ない。
〝ダメだ!!いけない!!〟
込み上げてくる感情を必死に打ち消す。
嘘だ嘘だ嘘だ。違う違う違う。
気付けば俺は……
──涙を流していた。
0
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる