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21話
しおりを挟むちほは笑顔で俺を見上げてくる。目が合う。
これはなに? 少し切なげな顔……してたよね。俺はその顔の理由を聞きたい。さっきの言葉の意味も。
しかし……謎を残したまま二見ちほ、彼女は俺の心にどんどん入ってくる。
〝ギュッギュッ〟
はい? 何故かまた手をギュッと、さらにギュッとされた。
………………。なにこれ? 2ギュッ?
あれ、笑顔が次第に……切なげに、と思ったらプイッとした!
なにこれ? 怒っちゃった?
と、とりあえず2ギュッしとくか。
ギュッギュッ。
あ、めっちゃ笑顔になった。なんだよこれ。なんなのこれ?
ギュッギュッギュッ
はい。3ギュッ頂きましたッ! なるほどな。そういうことでしたか。
ギュッギュッギュッ
めっちゃ笑顔だぁ。体をバタバタさせて喜んでる。
ギュッギュッ
2ギュッに減った!! ここは2ギュッだ!! って、何やってんだ俺。あほかよ。
「えへへっ♡」
…………。
〝か、可愛い……‼︎〟
あー、ついに俺はハッキリと〝可愛い〟と思ってしまった。
心の中で張り巡らせていた糸が切れるのを感じた。朝から2時間と経っていないというのに。
──このあとも、謎のギュッギュッは暫く続いた。ギュッとする度に彼女は笑い、甘くも嬉しそうにはしゃぐ。不思議と俺も……。
彼女の笑顔を見ている内に〝好きになってね〟の言葉の意味を聞く事は諦めた。
知ったところで、どうすることも出来ないのだから。
結論はステイ。
何も聞けないし、踏み込む事も出来ない。
……もういっそ全てを話してしまうか?
何の為のタイムリープだ? 失敗したのならやり直せばいい。簡単な話。
できない。
彼女の悲しむ顔をみたくない。
今、幸せに流れる時間を壊したくない。
……もう、戻れない。
タイムリープを幾度となく繰り返し、幾万の世界を捨てて来たはずなのに。この関係を捨てたくない……。
目の前で笑う彼女を可愛いと、愛おしいと思う。けれども、秋月さんへの思いは変わらない。
──矛盾。
今はただ、……今を楽しもう。難しいことを考えると、ダメになってしまいそうだから。
◆◇◆
どれくらいの時間が経ったのだろうか。チャイムは何度鳴った? 予鈴は? ここから時計は見えない。そして、スマホは禁止。
くだらない話をたくさんした。意味など何も持たない、たわいもない話。少しづつ、確実に惹かれていった。
本当に聞きたい事は何一つ聞かず、確信には触れず。
それでも楽しくも幸せな時間が、当たり前のように流れる。
これが、彼女……なのだろうか?
繰り返し同じ時間を何度も何度もやり直した。もしかしたら還暦を迎えているのかもしれない。
俺は高校生であって高校生じゃない。
──初めて経験する〝彼女〟という存在。もしかしたら、遅過ぎたのかもしれない。
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