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46話
しおりを挟む夢のような話じゃないか。他でもない、大好きな彼女のスマホを好きに、自由に、なんの障害もなくやりたい放題出来るのだから。
こんな奇跡、人生で一度あるかないか。いや、普通に生きていれば無いだろう。
それがなんだ? 毎週だぞ?! 奇跡の大安売りじゃないか!!
──りっくん♡からメッセージ
さっきから10秒感覚でスタンプが送られてくる。授業はどうした……。
ちほは俺のスマホでエンジョイしている模様。
そもそもこのスマホ交換はフェアじゃない。俺のスマホは空っぽだ。水の入っていないグラス。
──友達登録件数は一桁
お店に展示されている〝デモ機〟のほうがスマホとして活躍している事だろう。
…………。
うん。やめよう。俺にはまだ、こういうのは……ちょっと早すぎる。
俺はポケットにスマホをしまった。
──キーンコーンカンコーン。
一限目が終わる。俺はおそるおそるスマホをポケットから取り出した。
──新着メッセージ352件。
うわっ……。謝ろう。誠心誠意謝ろう。俺にはまだちょっと、早い……。ごめんなちほ。
タタタタタタッ!
いつもより速いな。メッセージをシカトした事、やっぱり怒っているのだろうか……。はぁ。
憂鬱な気分になる。彼女の期待に応えられなかった自分がただただ情けない。でも、だって。言い訳ばかりを頭の中で必死に繰り返した。
しかし、そんな気持ちを裏切るように……、
「すぎやーーん!!」
「二見さーーん!!」
「「うぇーい!」」
は? なんで? なんで2人が仲良さげにハイタッチしてるんだ? すぎやんってなんだよ。おい?!!
しかも、俺に会うより先に杉山と?
先ほどまで、確かに感じていた罪悪感は一瞬で吹き飛んだ。
ドクンドクンドクンドクン。腸が煮えくり返りそうだ。
「またメッセージ送るねぇ!!」
「おう!」
はぁ? 驚いているのは俺だけじゃない。クラス内の空気も完全に凍っている。杉山と二見さんが? 異様などよめきさえも纏っている。
タタタッタタッタタタタタタッ
上機嫌なのかちほは軽くステップ気味に俺に近付いてくる。
「りっくんはろー♡」
「……あぁ」
無意識に出た最初の言葉はこれだった。
なんて事のないただの挨拶じゃないか。単なるハイタッチだ。
でも、俺は〝たったそれだけの事〟が許せない。
「ねぇ、りっくん。どうして返事くれなかったの?」
「うるせーからだよ」
またしても言いたい言葉が出ない。俺はこんな事が言いたいんじゃない。もっと他に言うべき言葉が、聞くべき事があるだろ。
「ちょっ! やの!!」
杉山が俺に駆け寄ってくる。それに気付いたのかちほは振り向き首を横に振った。杉山は首を縦に振り、その場に立ち尽くした。
おいおいおい……待てよ。アイコンタクトですか。
ふざけんな。
……。…………。いや、杉山は友達だ。友達だよ。
ちほは彼女だ。そう彼女だよ。
一番仲の良い友達と彼女が仲良くなる事は喜ばしい事じゃないか。
だからなに?
ふざけんなよ。
だめだ。心が限界に達してしまいそうだ。
「……聞いてる? ねぇ?」
聞いてなかった。でも、気にはならない。とりあえず今は、俺の目の前から消えて欲しい。今はもう、無理だ。
「ねぇ、わたしの全部。りっくんにあげたいの。他には何もいらないの。どうしてわかってくれないの。ぐすっ」
泣きたいのはこっちだよ。
もう意味わかんない……。
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