優しさだけでは付き合う事が叶わなかったので、別の方法で口説く事にしました♪

おひるね

文字の大きさ
49 / 106

49話

しおりを挟む

 もはや第二の部屋と化した此処は準備室。

 少しずつだが、ちほの私物が増えている。
 小さいながらもテーブルだってある。右端から座り心地の良いカラフルなタイルカーペットも三畳ほど敷いてある。当然、上履きを脱いでから座る。

 実使用スペースは一畳もない。二人仲良く壁に寄っ掛かりながらくっついて座るのだから。

 そのうちTVや冷蔵庫、生活家電まで用意するのでは無いかとひやひやしている。

 気分は二人だけの部室。もちろん部など存在しない……。

 先生からは『今後も好きに使っていいよ』と言われたが、まさかこんな使い方をされるとは思いもしなかっただろう。


 ──肩を寄せ合い優しい時間が流れる。少しお昼寝しようかなぁ。


 うとうとしていると、「よぉしわかったぞ~」とちほが喋りだした。

 「りっくん! スマホ教室始めるよ!!」

 はい? どうしてそうなった?

 ゴソゴソとちほが俺のポケットに手を入れる。右ポケットにお目当の物は無かったようで、容赦無く左ポケットに手が入ってくる。

「あった♡」

 はい。ありました。ちほのスマホです。
 お目当の物を見つけ出し、とても嬉しそうだ。

 はいっ! と俺に手渡されるスマホ。ここまで来れば何が始まるのかは察しがつく。

 本気でスマホの使い方がわからない。などと思っていないだろう。

 ──これはきっと〝プレイ〟だ。
 そういうプレイだと思って受け入れるしかない。


 俺は右手でスマホを持った。
 ちほは腕に抱きつくような体制で俺の手の上からスマホを両手で触る。

「使い方♡ 教えてあげるねッ♡」

 色々と当たります。352件のメッセージを未読スルーしたツケがこんな形で現れるとは……。

 油断すると健在な男子高校生の理性など一瞬で刈り取られてしまう。せめて妖精さんが居れば。
 完全なる個室に二人きり。それでスマホ教室だなんて。やばいよ。

「ほら、ロック解除して♡」
「お、おう」
「じょーずじょーず♡ じゃあもう一回!」
「う、うん」
「わぁ! りっくんすごい!」

 これはいったい。なんでしょうか。でも……。
 いちいちぐいぐい押されるから、胸が腕に当たるのだけれども。手汗も気になる……困った。

「じゃあ、次はここ押して?」

 てっきりメッセージアプリかと思ったら、まさかの写真アプリ。ちょっと早過ぎませんか? いや、本当に。

「いや、それは……」
「ダメなのぉ……?」
「いや。だ、大丈夫」
「なら、はやくぅー!!」

 急かさないで!! 心の準備があるの!!

 待ちきれなかったのか、ちほに親指を摘まれ「えいっ」と俺の指は写真アプリを押していた。

「わぁぁ! りっくんほんとじょーずだね♡」

 いやいや。今のは完全に……。でもなんだろ。これはこれで、悪くない……かも。

「ねぇ、りっくん。ここ!」

 少し恥ずかしそうに指差す先は、動画フォルダだった。押さなくてもなんとなくわかる。だってちほの顔が映ってるのだから。

 もはや、俺の意思など関係ない。この親指はちほに操作されるだけ。あってないようなものだ!

「再生ボタン押すのは自分でやってぇ♡」

 いや、それ言っちゃダメでしょう! 今まで俺が押してたていなんだから!

「ねぇ、りっくん。はやく!!」

 恥ずかしいのか、俺の肩に顔を埋めてしまった。

 ここで押さぬは男の恥。おそるおそる再生ボタンを……押したッ!!


  〈りっくぅーーん!〉

 俺は画面に釘付けになった。絶世の美女ちほが俺の名前を呼んで手を振っているのだから。可愛過ぎる……。


  〈だ・い・す・き。ちゅ~♡〉

 ゆっくりと大好きと言い、唇がどんどん画面に……近付いて……来る!! ドクンドクン。

 画面越しなのにドキドキする。鼓動が……。


 ──そして、俺はちほにキスをされた。

 普段するキスよりもたくさんドキドキしてしまった。なるほど、これがしたかったのか。

 って、あれ? それじゃまるで、俺がスマホを触れない事、わかってたみたいじゃないか。


 やっぱり手のひらで転がされちゃってるな。

 ◆

「じゃあ、スマホ教室の続きしよっか! Lesson2!!」


 えっ? まだ続くの?
 スマホ教室Lesson2ってなんだよ?!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

下賜されまして ~戦場の餓鬼と呼ばれた軍人との甘い日々~

イシュタル
恋愛
王宮から突然嫁がされた18歳の少女・ソフィアは、冷たい風の吹く屋敷へと降り立つ。迎えたのは、無愛想で人嫌いな騎士爵グラッド・エルグレイム。金貨の袋を渡され「好きにしろ」と言われた彼女は、侍女も使用人もいない屋敷で孤独な生活を始める。 王宮での優雅な日々とは一転、自分の髪を切り、服を整え、料理を学びながら、ソフィアは少しずつ「夫人」としての自立を模索していく。だが、辻馬車での盗難事件や料理の失敗、そして過労による倒れ込みなど、試練は次々と彼女を襲う。 そんな中、無口なグラッドの態度にも少しずつ変化が現れ始める。謝罪とも言えない金貨の袋、静かな気遣い、そして彼女の倒れた姿に見せた焦り。距離のあった二人の間に、わずかな波紋が広がっていく。 これは、王宮の寵姫から孤独な夫人へと変わる少女が、自らの手で居場所を築いていく物語。冷たい屋敷に灯る、静かな希望の光。 ⚠️本作はAIとの共同製作です。

処理中です...