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69話
しおりを挟む「わたしから言えるのはここまでだな」
待て。順を追って話すと言ってから〝田中さん〟の話しかしてないけど?
「店長。それはさすがに」
「察してくれ。後は直接本人から聞きなさい。こういう事はね、他人から聞く事じゃないんだよ」
正論だ。でもな、順を追ってと言ったんだ。何をどう追ったんだよ?
納得できない俺の表情を察してか、店長はため息を漏らした。
「最側は望んでここで働いている。それだけは勘違いしないでほしい。しかし……最側を支えてほしい」
それは矛盾しているよ。常に余裕で溢れている店長にしては珍しい。つまりそれだけの事って訳だ。
前年比数百%だったか。もしかしたら店長はそんなの欲していないのかもしれない。
「君は鋭いな。今思ってる事は口にしてはいけないよ? さて、その位置からわたしのパンツが丸見えなわけだが、何色か答えなさい」
はぐらかしてきた。うまいなぁ。だからこそ、この人に皆、上手くコントロールされている線も消しきれない。
「君は本当に鋭いな。その顔つき、どこまで辿り着いた? よし、スカートをぴらーんとめくってしまおう。今日だけ特別だぞ?」
やり過ぎだ。嫌が応にも視線に入る。
やっぱりこの人は危険だ。
「わたしには興味ないくせに、乙女のパンツには興味があると。……君の将来が不安だよ」
ふざけんな!!
「勘弁して下さい。身が持ちません」
「はははっ! 可愛いやつめ!!」
また、からかわれてしまった。
「さっ、冗談はさておき研修を始めようか」
先ほどまでの顔つきとは変わり、仕事モードになったような気が……した。
──はい。気のせいでした。
◆◇
「基本は挨拶からだ」と、言葉遣いの研修からスタートした。しかし俺はここでつまづいてしまう。
「笑顔の基本はこぉだぞ」「ほら、こーこ」「ここだぞ」などと言い、ほっぺや唇を指で弄ばれる。
一般の男子クルーならご褒美に他ならないだろう。時給まで発生するのだから天に召されてもおかしくない。
でも、俺は違う。この人に対して異性の〝それ〟はもちあわせていない。
だからこそ、店長は楽しんでいるのかもしれない。
草原の美女なのだ。こんな事を食欲旺盛な血に飢えた魔物にしたら秒速で食べれられてしまう。
──1教えられるのに10からかわれる。
からかい方がいちいち卑猥なんだ。俺じゃなかったら絶対に誤解しているだろ。
結局、一日で終わらすと言っていた研修は終わらなかった。
◆◇
「いちごちゃんにはガッカリだよ。明日も挨拶の研修だな……」
俺もガッカリだよ!!
あんた、からかってただけだろ!!
17時から21時まで! 休憩も無かったぞ!!
「はぁ。疲れてしまったよ。いちごちゃん、肩の揉み合いっこでもするかい?」
この……クソッ!!
──俺はタイムリープする事を決意する。このままでは一ヶ月後も笑顔の研修をしているかもしれない。
飽きるまでおもちゃにされる。そんな不安すらある。
なってやるよ。S級クルーってやつに!!
時間は無限だ!! 明日の俺は一味違うぜ!!
うーん。でも、妖精さんになんて言おうか……。
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