優しさだけでは付き合う事が叶わなかったので、別の方法で口説く事にしました♪

おひるね

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82話

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 もう、止まれなかった。
 やられたらやり返す。意地と意地のぶつかり合い。
 
 三往復。モンブランをのせたフォークは俺と最側の口の中を交互に旅をした。

 フォークが口の中を旅する度、俺と最側を隔てる大切な何かが壊れていくのを感じた。

 ううん。きっともう、全部壊れてしまった。

 そして、最後の一口を……いま、最側に膝枕をされながら食べる。

 フォークを取り合う中、すっぽりと太ももに頭がジャストフィット。

 心地が良く動けなくなってしまった。
 最側はそれを良しと思ったのか、フォークを手に取りニッコリ。

 ──負の連鎖。……それとは違う。けど、言葉にならない。


「これが最後の一口ですッ」
「お、おう」

 モンブランは優しくゆっくりと俺の口元へと運ばれる。
 膝枕をされているからか、不思議と最側が大人っぽくみえる。年下で生意気なやつなのに。

 パクっ。

 これでおしまい。なにをしているのか。いや、してしまっているのか。答えを探すようにモグモグする。

 もぐもぐもぐもぐ。

 飲み込んでしまえば終わりだ。

 もぐもぐもぐもぐ。

 どうしてだろう。飲み込むことを惜しいと思ってしまう。

 もぐもぐもぐもぐ。

 それでも、飲み込まなければいけない。
 こんなこと、許されるはずがないのだから。

 もぐもぐもぐもぐ。

 ダメだ。
 早く……飲み込まないと。

 もぐもぐ……も……ぐ。

「あの、先輩……赤ちゃんみたいで、ちょっと気持ち悪いですっ」

 ハッ! やばいっ。

 ゴックンっ! 

「う、うるせーよ!!」
 勢いよく起き上がるも適切な言葉が思い浮かばない。

「あはっ、あははっ。じょーだんですよぉーっ」

 お腹を抱えて笑う最側をみてとりあえず安心する。
 ほんと、どうかしている。自分で自分のことをおかしいと思うも、その答えが見つからない。


「先輩ってたまに強引なときありますよねー」
「それはおまえもだろ。そもそも──」
「まぁ、お互い様ってことで。今回は特別に不問にしてあげます♪」

「お、おう。ありがとうな」

 いつもなら突っかかってるところだが、今は後ろめたさが勝る。ちょっと腹立つけど。

 カタッ!
「えーっ? どうしてそこでお礼を言うんですかぁ……やっぱり先輩、初めから間接キスが──」
「それは違う。絶対に違うっ!!」
「ははっ、仕方ないのでそういうことにしといてあげますッ!」

 うん。やっぱり突っかかっておくべきだった。
 こいつはそういうやつだ! やなやつ!!

 でも、なんて言うか、一緒に居ると楽しいんだよな。
 それだけは、もう……はっきりした。

 ◆

 時刻は20時を回りすっかり夜になっていた。

「うーん。非常に残念ですけど……またの機会にしますか」
「そうだな。残念だけど」

 一緒に残念がってみたけど、内心ホッとしていた。
 思い返せば今日まで、ハンカチを買いに行く予定が俺たちを繋げていたような気がするからだ。

 ハンカチを買い終わったら次のステージがあるのか。それは、たぶん……あってはいけない。


 ──だって俺には、彼女が居るのだから。


 ◆

 帰り際、「七日のバイト終わり、空けておいて下さぁい。一杯行きますよー」と、誘われいつものことだと思い一言返事にOKをした。

 後になって、この日が七夕だという事を知った。

 一度、間違った方向に舵を切られた船はどこまでも間違ったまま進んでしまうのかもしれない。

 いつだって自分のことで精一杯だった。俺はもっと、相手のことを思いやるべきだったんだ。
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