94 / 106
94話
しおりを挟む「もうっ先輩! ぜんぜんダメですっ。自然に笑ってくださいよーっ」
「お、おう」にぱぁー。
〝パシャリ〟
「うーん。なぁーんか、嘘くさいんですよねー。やり直し!」
駅のホームのベンチに座り出発の記念撮影をしていた。平日のこの時間は電車待ちの人も少なく割と静かな雰囲気。……だから、目立っちゃったのかもしれない。
思い出の1ページってやつだろうか。最側との2ショット。顔も近いし小っ恥ずかしくなる。なんならほっぺも一回触れました。
うん。これは友達同士のなんてことない2ショット。
〝パシャリ〟
撮った写真を二人で確認する。俺と最側は当然バッチリ写ってるけど、右端に……誰かいる。ピントはあってないが遠くからこちら見ている。制服を着崩した様子で茶髪の髪。
あ、もしかしたらまずいかも? そう思った時だった。隣にドンッと誰かが座った。振り向くとそこに居たのは龍王寺だった。
「やっぱ八ノ瀬だわ」
この時間は学校のはず。遅刻か昼帰りか……中抜けか。でも、学校に行くなら三番線。ここは二番線だぞ。いや、それよりも今この場で出会すことは最悪に他ならない。
「つーか、お前さ、停──」
「あー、龍王寺! 今日学校は?」
俺は龍王寺の言葉を遮るように質問を飛ばした。停学中と言うことだけは最側に知られてはならない。絶対に。
「ん? あぁ寝坊しちまってな。これから行くんだよ。まじだりぃ」
「そうなんだ!」
どーでも良い会話。でも隣のホームからわざわざ来たのかと思うと、停学中の俺に注意を施す為だけとは思えない。まさか……?
龍王寺の口からボソッと「浮気か……」と溢れると、最側と俺の顔を険しい顔で交互に見た。
やっぱり。これが本当の目的だ。そりゃそうだ。側から見たら浮気。こいつは柄にもなく俺とちほのことを応援していた。
ドクンッ。最悪のシナリオが脳裏を過ぎる。
「じゃ、ねーな。まじ焦ったわー。超仲良さげだったからさっ。従姉妹かなんかか? 義理の妹とか?」
ズコー。
失礼極まりない。その言葉の裏に隠れるそれはおおよそ察しがつく。しかも、従兄妹って。でもこれは嬉しい誤解。なんて答えるかと考えていると、
「あのっ、先輩とわたしは、と、と……友達なんですっ!!」
最側は口を尖らせ友達の部分を恥ずかしそうに噛んでしまった。うつむき、頬を赤く照らして。純粋に友達と口にするのが恥ずかしい。嘘偽りない真実のみで形成された言葉。なのだが……。怪しさ満点。
龍王寺は眉間にシワを寄せると、何かを疑う眼差しに変わった。
まずい。なんとかしないと。せっかく誤解してくれたのに……。
「も、元々バイト仲間で、バイト辞めちゃったからさ。じゃあ俺らって何? 友達? 的な。そんな感じだから、まだ不慣れなんだよ。新人だった俺に色々教えてくれて、後輩だけど先輩? 的な? うん、そんな感じなんだわ!」
たぶん、めっちゃ早口だったと思う。自分でも何を言い出しちゃってるのかわからない。
「そうなんです。と、ともっ……だ、だちなんですっ!」
またしても友達の部分を噛んだ。しかも今度はちゃんと言えてない。加えてもじもじしだした。っと思ったらバスケットに顔を埋めてしまった。ふぁーー!!
気持ちはわかる。すごいわかるよ? けどなっ今だけは……お願いだから。頼むから喋らないでくれ……。俺もロクなこと喋れてないけど。あぁ、もう俺らズタボロだな……。
恐る恐る龍王寺の顔を見ると、歪んでいた。ペットボトルのジュースを飲もうとしたのか、蓋を開ける手は完全に止まっていた。
「お前ら何? まさか、浮気じゃねーよな?」
「えっ、勘弁してくださいよ。どうしてわたしが先輩なんかと?!」プイッ。ムッスー。
ナイスプイッ! 今度は照れる様子などなく、純度100%の否定顔。これはこれで傷付くけど……でかした!
「ははっ、なんかよくわかんねーけど、そりゃそーだよな。あははっ、疑って悪かったな」
「お、おう。気にしてないから大丈夫だよ」
何がそうなのか。ちょっと傷つくけど良いっ。今は良い!! 不釣り合い。まじ最高!
でも、ちほにデレデレだった龍王寺が最側には一切デレない。これが意味することを考えると妙な胸騒ぎがした。
◇
「それよりお前、停学中だろ? こんなとこ居ていいの? まぁ家に居てもつまんねーだろうから仕方ねーけどさ」
浮気との疑いが晴れて完全に油断していた。妙にハイテンションにすらなっていた。浮気と誤解されるよりも大切なことが抜け落ちていたんだ。
その言葉は龍王寺なりの優しさから出たもので罪はない。
悪いのは嘘をついてこの場に居る俺。
浮気かと言われれば本心では否定できない。
そうやって、当たり前のように嘘をついてきた。
俺と最側の心の距離は埋まったようにみえて、レールが違う。どんなに近付いても最後はすれ違う。路線と目的地が違うのだから。
「まぁ、風間のことは一度シメておきてーと思ってたからな。八ノ瀬がぶっ飛ばしたって聞いてスカッとしたんだわ。出歩いてることはセンコーにチクったりしねーから、見つからないように気を付けろよ」
そうして、全てを暴露される。
嘘で固めて作られた時間は脆いのかもしれない。
──三番線に電車が参ります。白線の~
「っと、やべー、電車来るわ。じゃあ、また学校でな。まじで気を付けろよ」
◇
このタイミングで電車が来てくれたことは不幸中の幸い。欲を言えば、もっと早く電車が来てくれれば。
この後に及んで、どうにかして嘘を突き通せなかったのかと考えている。次の瞬間には過去に戻ってやり直すことさえも考えてしまう。
俺は、どうしようもない嘘つき野郎だ。
最後の想い出を望む資格なんてなかったんだ。
0
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる