優しさだけでは付き合う事が叶わなかったので、別の方法で口説く事にしました♪

おひるね

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96話

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「元気ない顔してますよ? どうしたんですかぁ? あっ、もしかしてお腹空いちゃいました?」
「……お、おう」

 仲良く二人、電車の椅子に並んで座っている。平日のこの時間、都心部とは真逆の下り路線ということもあってか、車内はすぐにガラガラになった。

 ほぼ、二人きりの空間。普段なら会話に花を咲かせるところだが、いまはそれができない。普段通りの受け答えができないんだ。

 もっと、ちゃんと喋らなきゃいけないのに。言葉に詰まってしまう。


「はっ! これはまだダメですよー。我慢してくださぁい。向こうに着いてからですっ」
「……あ、あぁ」

 最側は膝上に置くバスケットを両手で抱え「だめー」と可愛げに言った。

 無理してる様子もなく、それは紛れもなく普段通りの最側だった。俺を元気付けようとしてくれてるのが伝わる。

 ”ほらっ、気にすることなんて何もないんですよ!”
 言葉と仕草の裏にこんな様子さえも隠れているのが伝わる。

 
 停学中なのを聞かなかった事にしてくれた。そのおかげでプラネタリウムを観に行ける。

 頭では受け入れてるのに、心が、気持ちが……それを許してくれない。
 
 言いたいこと、聞きたいこと。たくさんあるのに、それを言ってしまったらこの時間が壊れてしまいそうで。

 最側なりの優しさなんだ。
 でもそれは、らしくない。本来の最側ではないからこそ、不安にもなる。

 本当にこれで……いいのか?
 

 そうして、あからさまに元気なく単調にしか返せない会話を繰り返し、
「はぁ。もうっ」と、最側はプンスカしてしまった。

 当然の流れで、どこかでこうなることを期待していたのだと思う。

 でも、冗談まじりに怒ってみせる可愛いめのやつだった。本気では怒っていない。


「先輩がそんなんでどーするんですか? わたしと遊びたくて嘘までついて来たんですよね? しかも、30分も早く」

 バスケットを軸に頬杖をつき、うつむく俺の顔を覗き込んできた。

 30分も早くと言われるとおまえもだろっ! と、突っ込みたくもなるが……、

「そう……だな」

 今は言える雰囲気ではない。

「停学中に出歩くことはダメだってわかってるのに、それでもわたしと遊びたくて覚悟の上で今日も来たんですよね? 30分も早く家を出て!」

 覚悟の……上? 確かに覚悟はしてきたけど……なんだろう。噛み合ってない気がする。それに30分ってまた言いやがった……けど、

「そう……かな」

「じゃあ、何も言いません。だって先輩、捨て身じゃないですか。何も……言えませんよ」

 ドクンッ。鼓動が脈打つのを感じた。

 覚悟……捨て身。それが何を意味するのか……。考えると悍しくなった。

「あ、ありがとう」

 あれ……どうして俺は、お礼を言ってるんだろう。
 これで、なんの障害もなくこの世界で最後の想い出が作れるから? まだ、そんなことを……本気で……。

「いーえ。連絡先だって交換しちゃいましたし、これからほんと、どうするつもりなんですか。わたし、責任取れませんよ……」

 最側はこれから先のことを心配してくれている。
 明日、明後日。来週、来月、来年。

 俺が考えてこなかった未来のこと。だって……タイムリープするのだからこの世界での先のことなんて、何も……。

 誰にしもあるはずの未来は、未来にあるはずなのに、俺は過去を見ていた。まるで、未来が過去にあるかのように。


「わたしはてっきり彼女さんと何かあったのかと思ってたんですよー。傷心してるなら、励ましてあげないとって。と、友達ですし」


 ズレていた。
 この世界は間違っていると決めつけていた。

 いま、目の前に居る最側はどうしょうもなく本物で、何も間違ってなどいない。

 間違っているのは、俺だった。

 最側が望む世界は過去にしかないと本気で思っていた。

 妖精さんの言葉を思い出す。
 “幸せかどうかは本人が決めること”

 わかったつもりになっていて、なにもわかっていなかった。

 ……ただの独りよがりだった。



「違うんだ。俺、過去に戻れるから。タイムリープできるから……この世界での先のこと、なにも考えてなかった。ただ、おまえと一緒に居たくて。それだけで、行動してたんだ。ごめん。ごめんな……」

 もう、嘘はつきたくない。
 気付いたら俺は全てをぶちまけていた。
 
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