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第二話 ぶらりおパンツ一人旅

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 あれから一週間。僕は洗濯機を漁るのが日課になっていた。もちろん、自分のおパンツの所在を確認する為だ。

 妹のパンツには触れないよう最善の注意を払いながら且つ、妹にバレぬよう洗濯機を漁る。

 ガサガサゴソゴソ。ガサゴソ。

「ない……」

 現在時刻は深夜0時。僕のパンツは行方をくらましていた。

 でも焦らない。朝には洗濯機の中に戻っていることがわかっているからだ。

 この一週間、漁り続けた甲斐あっていつ無くなるのかおおよその時間まで把握している。

 片道切符なら由々しき事態だ。でも戻ってくる。ちゃんと帰ってくるんだ。

 これはおパンツの日帰り旅行。きっと一人旅。だと思いたい。

 ……けど、たぶん海乃との二人旅。

 この家には僕と海乃しか居ない。両親は海外赴任中。
 戸締りもしっかりしているし。状況が全てを物語る。

 愕然と事実に浸っていると、背後に気配が。そして、

「えっ、お兄? 何やってんの?」

 う……そ? 洗濯機漁ってるのバレた?!
 いや、海乃のパンツには一切触れてない。漁っても焦るなべからず! 落ち着け。誤魔化せ。

「あっ、シャワー浴びてから寝ようかなと思ってさ。あははっ」

 やばい。海乃の顔をみれない。

「ふーん。珍しいね。こんな時間に」
「たまには……ね?」

 めっちゃ疑ってる。腕組んで首傾げちゃったよ。

「バスタオルも着替えも持たずに?」
「あー、お兄ちゃんうっかりしちゃったなぁ~。疲れてるのかなぁ。あははぁ……」

 やばい。まずい。誤魔化しきれない。

「片腕、洗濯機に入れて?」
「あー、これはその……さっき使ったバスタオルがあったらそれ使っちゃおうかなー。とか。あははぁ……」


 終わった。苦し過ぎる。
 おい、僕の右手。何やってんだよ。なんてところに手を突っ込んでるんだよ。大馬鹿やろう。


「なぁーんだ。そういうことか。疑うわけじゃないけどさ、二人でこの家に住む時に決めたこと覚えてる?」

 え、笑った? 海乃が少し笑ってる。
 でもなんだろこれ……安堵の笑顔?
 
「も、もちろん。洗濯当番は海乃」
「うん。じゃあ、もう二度とこういうことはしないで。ただでさえ色々と気使うことが多いんだからさ。紛らわしいことしないでよ」

 あ……れ? それだけ? 

「う、うん。これからは気をつけるね!」
「はぁ。着替えとタオル持ってきてあげるからシャワー浴びてていいよ」

 優しい。海乃どうした?!


 ──そして答え合わせをするかのようにシャワーから戻るとさっきまで僕が履いていたおパンツさえも……日帰り旅行へと旅立っていた。


 海乃が何を考えているのかわからない。僕のことを嫌ってるはずだ。なのにどうして……パンツ持って行っちゃうんだよ?!
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