【本編完結、番外編は不定期更新】蔑まれ虐げられ裏切られた無能と言われた聖女は魔王の膝の上で微睡む

asamurasaki

文字の大きさ
36 / 96

三十五話




 シリウス様と広場のベンチでクレープを食べてから、転移で王城の部屋に戻ってきた。

 そしてその時にシリウス様から午後からの訓練はシリウス様じゃなくアンディナさんが同行すると聞かされた。

 シリウス様は午前中に私と街に出かける為に忙しい中、予定を調整してくれたんだと思ってお礼を言うと。

「よいのだ、我がリゼットと街に出てみたかったのだ。

 とても楽しく良い経験であった、また一緒に参ろう」

「はい!私も楽しかったです、また連れて行って下さいね」

「ああ、また晩にくる」

 と私の頭を撫でながら言ってシリウス様は部屋を出て行った。


 昼食を食べるとアンディナさんが迎えに来てくれた。

「魔王ファーシリウスとのデートは楽しかったかや?」

「でーと?」

 アンディナさんに言われて、私は首を傾げる。

「おや?リゼット様は知らないのかえ?

 ヒト族の間で好きな者同士が一緒に街に出かけたりすることをデートと言うそうじゃ」

 私はアンディナさんの言葉に目を見開いて顔が赤くなり、口をパクパクさせる。

「フフッ、ほんに可愛らしい初の反応じゃ」

「!……」

 私は口をパクパクさせたまま言葉が出てこない。

「魔王ファーシリウスが満足そうな顔をしとったでな、まあ良い時間であったんじゃろ」

 アンディナさんやナリナさんたちに笑顔で見守られている感じがして、私は余計恥ずかしくなった。


 その後、アンディナさんの転移で私たちは訓練所に向かう。

 中に入ると、ウルフ族とスネイク族の面々十名がいた。

 アンディナさんに気付いてみんなが礼を取る。

「よいぞ楽にせよ、今日は妾が見守るのじゃ。

前回はリゼット様はヒラノとリランと対戦したのじゃったな」

 アンディナさんが言うと輪の中の後方にいたヒラノさんとリランさんが少し前に来て、拳を握り締めて悔しそうな顔をしている。

 私に負けたのが悔しいのだろう。

 でも私も絶対に負けたくはないからまた対戦したら、絶対勝つ!

「そうじゃのぉ~今日はどうするかの~」

 アンディナさんが腕を組みながらふむと考え込む仕草をする。

「アンディナ様いいですか?」

 そこにグレーの短髪のツンツン頭で鋭い金の瞳をした男がアンディナさんに声をかけてきた。

「ファブリか何じゃ?」

「今日は俺とジェンドをリゼット様と対戦させて下さい」

 ファブリというウルフ族だろう男性が言い出した。

「ほぉ~ここで一番強いウルフ族のファブリとスネイク族のジェンドがリゼット様と対戦したいとな」

「はい、前回のヒラノとリランもウルフ族とスネイク族を幹部。

 その幹部をリゼット様は破ったのです。

 俺たちと対戦するには十分かと思いますが」

 ファブリさんがチラッと私を睨むように視線を向けてからアンディナさんの方へ戻した。

 ヒラノさんとリランさんは幹部だったのか、ということはファブリさんとジェンドさんはそれ以上ということだよね。

「ふむ、いいじゃろ。

 それではの、ファブリとジェンドが一度にリゼット様と対戦するというのはどうかえ?」

「「えっ?」」

 アンディナさんの提案にファブリさんとジェンドさんが同時に声を上げ目を見開いて驚きの表情を
している。

 他のウルフ族スネイク族の方たちも目を見開いている。

「…俺たちはリゼット様がそれでいいなら構わないですが、なあ」

「ああ、俺も構わねえ、…です」

 ファブリさんの隣のジェンドさんも同意する。

 ジェンドさんは肩過ぎまである深い緑色の髪を後ろでキッチリひとつに結んでいて、大きな赤い瞳をしている。

 身長はファブリさんより少し低い位くらいだけど、かなりの高身長でスラリとしている。

 ファブリさんは10代後半くらいのまだ若い青年に見えるけど、ジェンドさんは彼より少し年上の20代前半に見える。

 人間の見た目で言っているので、実際の年齢とは違うだろうけど。

「リゼット様どうじゃろ?」

 アンディナさんがニンマリとして私を見上げてくる。

 その裏に何かありそうであり、楽しそうでもあるイタズラな目つきはアンディナさんが本当に悪魔なんだなと思わせるものだ。

「大丈夫です、よろしくお願いします」

 私が真剣にアンディナさんを見つめると。

「決まりじゃな」

 アンディナさんがフフッと楽しそうに笑った。


あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

【完結】「元カノが忘れられないんでしょう?」と身を引いた瞬間、爽やか彼氏の執着スイッチが入りました

恋せよ恋
恋愛
「元カノが忘れられないなら、私が身を引くわくべきよね」 交際一周年、愛するザックに告げた決別の言葉。 でも、彼は悲しむどころか、見たこともない 暗い瞳で私を追い詰めた。 「僕を捨てる? 逃げられると思っているの、アン」 私の知る爽やかな王子の仮面が剥がれ落ち、 隠されていた狂おしいほどの独占欲が牙を剥く。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

姉の方を所望していたと言った婚約者に、突然連れ帰られて気づいたら溺愛されています

もちもちほっぺ
恋愛
侯爵家の地下室に住み、姉の食べかけで飢えをしのぎ、婚約者には初対面で「老婆のようだ、姉の方がよかった」と言われた令嬢リリアーナ。 ある日その婚約者に問答無用で公爵邸に連れ帰られた。 庭の恵みを口にするたびに肌が輝き、髪が艶めき、体に力が満ちていく。首に巻いたお守りの秘密、十数年続く国の不作の真実、虐げられ続けた令嬢の出生の謎。 全てが明かされる時、地下室令嬢の逆転劇が始まる。 なお婚約者は今日も庭でグルメリポートを最後まで聞いている。

【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。

扇レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋 伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。 それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。 途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。 その真意が、テレジアにはわからなくて……。 *hotランキング 最高68位ありがとうございます♡ ▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス

王宮の万能メイド、偏屈魔術師を餌付けする

葉山あおい
恋愛
王宮で働く勤続八年のメイド、エレナ・フォスター。仕事は完璧だが愛想がない彼女は、いつしか「鉄の女」と呼ばれ恐れられていた。 そんな彼女に下された辞令は、王宮の敷地内にありながら「魔窟」と呼ばれる『北の塔』の専属メイドになること。そこの主である宮廷魔術師団長・シルヴィス・クローデルは、稀代の天才ながら極度の人嫌い&生活能力ゼロの偏屈男だった! ゴミ屋敷と化した塔をピカピカに掃除し、栄養失調寸前の彼に絶品の手料理を振る舞うエレナ。黄金色のオムレツ、とろける煮込みハンバーグ、特製カツサンド……。美味しいご飯で餌付けされた魔術師様は、次第にエレナへの独占欲を露わにし始めて――? 意地悪な聖女や侯爵夫人のいびりも、完璧なスキルで華麗に返り討ち。平民出身のメイドが、身分差を乗り越えて幸せな花嫁になるまでの、美味しくて甘いシンデレラストーリー。

王宮地味女官、只者じゃねぇ

宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。 しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!? 王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。 訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ―― さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。 「おら、案内させてもらいますけんの」 その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。 王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」 副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」 ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」 そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」 けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。 王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。 訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る―― これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。 ★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。

【完結】帳簿係の地味令嬢、商会の不正を見抜いて王宮に見出されました。

夏灯みかん
恋愛
王都の商工会議所で働く、地味な帳簿係エミリー。 真面目に記録をつけることだけが取り柄の彼女は、同僚から軽く扱われ、雑用を押しつけられる日々を送っていた。 そんなある日――エミリーは、孤児院への配給物資の記録に、わずかな“ズレ”があることに気づく。 数量は合っている。 だが、なぜか中身の重量だけが減っている。 違和感を覚えたエミリーは、自ら倉庫へ足を運び、現物を確認する。 そこで見つけたのは、帳簿では見えない“静かな不正”だった。 しかしその矢先――不正の責任を押しつけられ、職場から追い出されそうになってしまう。 それでもエミリーは諦めない。ただ一つ、自分が積み上げてきた“記録”を信じて。 「では、正式な監査をお願いいたします」 やがてその記録は、王宮の政務監査官リオンの目に留まり―― 隠されていた不正はすべて暴かれる。 そして、彼女を軽んじていた者たちは、その代償を支払うことになる。 これは、地味で目立たなかった一人の帳簿係が、 “正しく記録した”ことで不正を暴き、王宮に見出されるまでの物語。