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三十五話
シリウス様と広場のベンチでクレープを食べてから、転移で王城の部屋に戻ってきた。
そしてその時にシリウス様から午後からの訓練はシリウス様じゃなくアンディナさんが同行すると聞かされた。
シリウス様は午前中に私と街に出かける為に忙しい中、予定を調整してくれたんだと思ってお礼を言うと。
「よいのだ、我がリゼットと街に出てみたかったのだ。
とても楽しく良い経験であった、また一緒に参ろう」
「はい!私も楽しかったです、また連れて行って下さいね」
「ああ、また晩にくる」
と私の頭を撫でながら言ってシリウス様は部屋を出て行った。
昼食を食べるとアンディナさんが迎えに来てくれた。
「魔王ファーシリウスとのデートは楽しかったかや?」
「でーと?」
アンディナさんに言われて、私は首を傾げる。
「おや?リゼット様は知らないのかえ?
ヒト族の間で好きな者同士が一緒に街に出かけたりすることをデートと言うそうじゃ」
私はアンディナさんの言葉に目を見開いて顔が赤くなり、口をパクパクさせる。
「フフッ、ほんに可愛らしい初の反応じゃ」
「!……」
私は口をパクパクさせたまま言葉が出てこない。
「魔王ファーシリウスが満足そうな顔をしとったでな、まあ良い時間であったんじゃろ」
アンディナさんやナリナさんたちに笑顔で見守られている感じがして、私は余計恥ずかしくなった。
その後、アンディナさんの転移で私たちは訓練所に向かう。
中に入ると、ウルフ族とスネイク族の面々十名がいた。
アンディナさんに気付いてみんなが礼を取る。
「よいぞ楽にせよ、今日は妾が見守るのじゃ。
前回はリゼット様はヒラノとリランと対戦したのじゃったな」
アンディナさんが言うと輪の中の後方にいたヒラノさんとリランさんが少し前に来て、拳を握り締めて悔しそうな顔をしている。
私に負けたのが悔しいのだろう。
でも私も絶対に負けたくはないからまた対戦したら、絶対勝つ!
「そうじゃのぉ~今日はどうするかの~」
アンディナさんが腕を組みながらふむと考え込む仕草をする。
「アンディナ様いいですか?」
そこにグレーの短髪のツンツン頭で鋭い金の瞳をした男がアンディナさんに声をかけてきた。
「ファブリか何じゃ?」
「今日は俺とジェンドをリゼット様と対戦させて下さい」
ファブリというウルフ族だろう男性が言い出した。
「ほぉ~ここで一番強いウルフ族のファブリとスネイク族のジェンドがリゼット様と対戦したいとな」
「はい、前回のヒラノとリランもウルフ族とスネイク族を幹部。
その幹部をリゼット様は破ったのです。
俺たちと対戦するには十分かと思いますが」
ファブリさんがチラッと私を睨むように視線を向けてからアンディナさんの方へ戻した。
ヒラノさんとリランさんは幹部だったのか、ということはファブリさんとジェンドさんはそれ以上ということだよね。
「ふむ、いいじゃろ。
それではの、ファブリとジェンドが一度にリゼット様と対戦するというのはどうかえ?」
「「えっ?」」
アンディナさんの提案にファブリさんとジェンドさんが同時に声を上げ目を見開いて驚きの表情を
している。
他のウルフ族スネイク族の方たちも目を見開いている。
「…俺たちはリゼット様がそれでいいなら構わないですが、なあ」
「ああ、俺も構わねえ、…です」
ファブリさんの隣のジェンドさんも同意する。
ジェンドさんは肩過ぎまである深い緑色の髪を後ろでキッチリひとつに結んでいて、大きな赤い瞳をしている。
身長はファブリさんより少し低い位くらいだけど、かなりの高身長でスラリとしている。
ファブリさんは10代後半くらいのまだ若い青年に見えるけど、ジェンドさんは彼より少し年上の20代前半に見える。
人間の見た目で言っているので、実際の年齢とは違うだろうけど。
「リゼット様どうじゃろ?」
アンディナさんがニンマリとして私を見上げてくる。
その裏に何かありそうであり、楽しそうでもあるイタズラな目つきはアンディナさんが本当に悪魔なんだなと思わせるものだ。
「大丈夫です、よろしくお願いします」
私が真剣にアンディナさんを見つめると。
「決まりじゃな」
アンディナさんがフフッと楽しそうに笑った。
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