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三十六話
ウルフ族のファブリさんとスネイク族のジェンドさん二方と対戦することが決まり、他のウルフ族とスネイク族たちがゾロゾロと部屋の隅へと移動していった。
私たちが真ん中で向かい合ったところで。
「用意はいいのかえ?それでは始め!」
アンディナさんの合図の直後、ファブリさんがいきなり火魔法を撃ってきた。
かなりの威力で上級魔法だ、その時魔法の軌道の上からジェンドさんが一気に跳躍して飛びかかってきていた。
私は何とかファブリさんの撃った魔法は寸前で避けることが出来たが、同時に飛びかかってきたジェンドさんの蹴りがお腹に当たって吹き飛ばされて、部屋の端の壁に強かに打ち付けられた。
「あらら…」
とその対戦を提案したアンディナさんが心配そうに私の方を見てきた。
でも対戦中だからか私に近寄ってはこない。
誰かが手を差し伸べたりしたらそこが負けが決まるから。
アンディナさんの隣に私の視線の端に見えたナリナさんたちは口に両手を持っていって、悲壮な顔つきをしている。
ナリナさんたちも心配してくれているんだね、ありがとう!でも大丈夫。
この訓練所は防御結界と治癒結界が張ってあるので、痛みは感じるし、皮膚が切れて出血もするけど出血はすぐ止まるし、しばらくしたら痛みも感じなくなって、傷はすぐ治癒していくようになっている。
だけど受けたダメージはちゃんと身体に残るという考えれば、訓練においてこれ以上ないような仕組みになっている。
蹴られたお腹は直後めちゃくちゃ痛かったし、口からも血が流れてきている、危なかった…。
ジェンドさんの蹴りが私のお腹に入る直前、受け身を取って少しでも衝撃を柔らげるように避けることが出来たから、まともには当たらなかったから致命傷にはならなかった。
もしまともに受けてしまったら私はもう立てなかっただろう。
ファブリさんの上級魔法といえどその威力もジェンドさんの早さ、すべての攻撃がやはりヒラノさんとリランさんとは段違いだ。
それに双方が連携して一度に攻撃を仕掛けてくる。
今までみたいに相手の攻撃を見て避けて対処していたのでは間に合わない。
こちらからも仕掛けていかないと勝ち目はない。
どうする?恐らく身体強化による攻撃だけでは勝てない。
今までの対戦では最上級魔法は使ってこなかった。
でも実は夜一人になった時に部屋で防御結界を張って自分であらゆる魔法の訓練してきた。
まず私が最上級を使って相手を引かせないと、さっきの攻撃をされたら…それにファブリさんジェンドさんが最上級を使ってくる可能性も十分ある、いやさっきは様子見だったと思うから次は最上級を使ってくると思う。
私から積極的に仕掛けて魔法を撃ちまくって相手の攻撃を潰していく!
私が壁に激突してからしばらく動かなかったから、ファブリさんとジェンドさんは勝負はついたと余裕の表情だけど、私はサッと立ち上がった。
それに彼らは驚き、目と口を見開いている。
かなりの自信があったのだろう、確かにまともに食らっていたら即終わっていた。
「アンディナさんまだ勝負は付いていないですよね?」
「ああ、リゼット様が立ち上がったし、まだ戦えるなら勝負は続行じゃ」
アンディナさんがニッコリとした。
「はい!まだ続行で」
私はそう言ってから最上級魔法を展開して、撃った。
出来た!最上級を撃つのは初めてだけど、ちゃんとコントロール出来た。
「早い!」
誰かの声が聞こえたけど、魔法を撃ちながら私は仕掛る。
ファブリさんたちが私の魔法を避けて、ジェンドさんが魔法を撃つ構えをして、今度はファブリさんが飛びかかってきたけど、空中でファブリさんの攻撃を身を翻して避けて今度は私が身体強化してファブリさんに蹴りを入れる。
そしてジェンドさんが撃ってきたのはやはり最上級の水魔法でそれを弱点である最上級の雷魔法で相殺して、すぐに続けて魔法を展開して、最上級の雷魔法を撃った。
ファブリさんもジェンドさんも私の攻撃を避けて、そこからお互いが魔法と攻撃を相殺したり、避けるを繰り返す。
ファブリさんとジェンドさんが魔法を撃ってくるより、私の方が早く撃てるので、私は相手が魔法を撃ってくる前に連続して最上級魔法を撃って、相手の攻撃を避けながら拳や蹴りを相手に打ち込んでいく。
どれくらい経っただろうか、攻防の中でファブリさんとジェンドさんの魔法の威力が落ちてきた。
お互い最上級魔法ばかり撃っていたのと、ファブリさんたちが完全に避けて切れていない時もあったので、多少なりともダメージを受けていて、それが蓄積していってスタミナも魔力も少なくなっていく。
ダメージを受けると自然と魔力が回復の方に取られるからだ。
ファブリさんとジェンドさんの魔力がだんだんと少なくなっていて、それに伴って身体強化の力も落ちてきていて、魔法も体術も威力が弱くなっている。
だけど私は魔力を使い多少のダメージは受けているけど、まだまだ平気で、魔力もスタミナも十分ある。
そこで私が連続して最上級魔法を撃つと二発目に撃ったのがファブリさんに当たり、吹き飛ばされ後ろの壁に激突した。
そしてその時に跳躍して空中にいた私がジェンドさんに蹴りを入れるとそれも当たり、ジェンドさんが地面に叩き付けられた。
私は地面に降りる前にもう一度最上級魔法をファブリさんとジェンドさんに向かい撃ち込み、それが当たって勝負ありだった。
ファブリさんもジェンドさんももう立ち上がれなくなったのだ。
「…勝負ありじゃの。
ほんにリゼット様は底が知れんのじゃ…」
アンディナさんが呆れたように呟いた。
私は立てなくなったファブリさんとジェンドさんに歩み寄り、手を差し伸べて立ち上がらせる。
ファブリさんもジェンドさんも戸惑っていたけど、私の手を取り立ち上がった。
「ありがとうございました。
とても貴重な経験をさせてもらきました」
と私が言うと、ファブリさんが目をキョロキョロと泳がせてから。
「それはこっちの言うことです。
俺たち完敗です!あんなに早く凄い威力の連続魔法が撃てるなんて…」
「ほんとに!威力もスゲェ、ですし何よりも早いっす!
スタミナも魔力も化けもんだな、です」
ファブリさんとジェンドさんが次々に言う。
ジェンドさんが敬語が苦手なのか喋り方が面白くて私は思わず「ハハハ」と声に出して笑ってしまった。
そんな私にファブリさんとジェンドさんが目を丸くする。
「とてもつよくて面白い楽しい方たちですね、お二方の連携が凄くて相性が良いのですね」
「そんなことねぇ、…ですよ。
俺たちいつもケンカしてっか、…ますから」
ジェンドさんが頭をかきながら顔が赤く、照れているようだ。
「フフフッまた対戦して頂けますか?」
「俺たちで良ければぜひ!」
ファブリさんがそう言って手を差し出してくれた。
私はファブリさんジェンドさんと握手する。
「うんうん良い戦いであったのじゃ」
アンディナさんの声が聞こえて私は振り向く。
「アンディナさん!ありがとうございました!
アンディナさんのお陰で最上級魔法を思いきって使うことが出来ました!」
「フフッそう言ってもらって良かったのじゃ。
わざと無理な対戦を勧めたと思われたかもと思っていたのじゃ」
「いいえ、私の力を引き出そうとする為に言ってくれたのわかってました…ってわぁ!」
私の言葉が言い終わらないうちにアンディナさんが抱きついてきた。
「ほんに賢いリゼット様は可愛いのじゃー」
いえいえ可愛いのはアンディナさんですよ。
私は微笑んでアンディナさんの背中に手を回した。
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