51 / 96
五十話
ファーシリウスside
自分もヒト族と戦うとキッパリと言ったリゼット。
「わかった…我はリゼットに何でも協力しよう」
「シリウス様ありがとうございます。
それでシリウス様は魔国に上陸したヒト族を排除するつもりですよね?
その後はどうするつもりなのですか?」
リゼットは魔国に上陸してきたヒト族だけでなく、ゲオング王国とカナンゲート聖王国をどうするのか?と聞いてきているのだ。
「…魔国に上陸してきたヒト族を排除した後、ゲオング王国とカナンゲート聖王国を滅ぼすことにする。
アヤツらを許すことは出来ぬ」
我は正直に答えた。
「そうですか」
「そのことについてリゼットの意見を聞こうと思っていたのだ」
我はリゼットの瞳をジッと見つめる、リゼットも目を逸らさず我を見つめてくる。
「私も同じ考えです、そうすべきです。
今回のことはゲオング王国とカナンゲート聖王国だけが関わっているのですか?他の国はどうなのですか?」
「調べたがゲオング王国とカナンゲート聖王国だけだ、他国は関わっていない」
「そうなのですね…わかりました。
まずはゲオング王国とカナンゲート聖王国なのですね、もちろん私も行きます」
「…わかった」
リゼットが以前より毅然としていて、さらに凛とした美しさに我は見惚れた。
まだ体調が万全でないリゼットをまた寝かせて、ナリナたちに頼んでから我は側近たちと応接室に戻ってきた。
そこで我は今までリゼットにしか話していなかったあの神との邂逅を側近たちに話した。
側近たちや他の魔族たちも今回のことで、ヒト族にさらなる憎しみを持ったことだろう。
ゲオング王国、カナンゲート聖王国だけでなくすべてのヒト族を滅ぼしたいと思っているかもしれぬ。
デーモン族とドラゴン族以外の者たちはそれぞれ大陸で暮らしていた時にヒト族から酷い扱いを受け、親などを殺されている者もいる。
ドラゴン族も大陸で暮らしている時にヒト族に敵と見做されて同種を殺されている。
デーモン族は少し特殊であるが、彼らを召喚するヒト族はみなあらゆる負の感情に支配されている者たちばかりだ。
デーモン族もそんなヒト族ばかりを見てきて、良い感情など持ってはいないだろう。
魔族はみなヒト族を恨み憎んでいるのだ。
されどあの神がいる限り、あの神に勝たなければすべてのヒト族を滅ぼすことは出来ない。
あの神はヒト族の国のひとつやふたつ滅ぼすことは自分が楽しむ為には良いとなどと言っていた。
だから今回のことでゲオング王国、カナンゲート聖王国を滅ぼすことは問題にならないだろう。
しかし他の国もとなると我が関わらずとも、あの神が邪魔をして阻止してくるに違いない、今の我らではあの神には勝つ方法を見つけないことには勝てない。
我は昔ヒト族をすべて滅ぼしたかったがあの神のせいで出来なかった。
悔しいが、あの神と我の力の差は歴然としている。
「…そんな…」
フロムウェルが我の話に呆然とする。
「魔王ファーシリウスよ、そうであったのじゃな…」
アンディナも深刻な顔をしながら呟く。
「みながそれぞれヒト族に憎しみを持っているであろう、しかしもしみなが全ヒト族を滅ぼしたいのならば、あの神を何とかせねば手を出せないのだ。
あの神と我の契約であるが他の者たちが全ヒト族を滅ぼそうとしても、あの神は必ず阻止してくるはずだ」
「ファーシリウス様そうだったのですな…」
ドラキエスもグッと歯を食いしばる。
「その神に勝つ方法は?…」
「まだ見つかっておらぬ、我は5000年以上その方法を探してきたがな…」
「そうなのですか…私たちはファーシリウス様の思いをわかっておりませんでした…」
クラウスに聞かれて答えた後、コムシジャが我を気遣う言葉を言った。
「我とてヒト族に対する恨み憎しみはなくなっておらぬ、だがそれよりこの世界に生きる者を自分の楽しみの為だけの物であるように見ているあの神が許せないという思いの方が年々強くなってきて、今本当にすべての全ヒト族を滅ぼしたいのかどうなのかわからなくなってきておる」
我の正直な今の思いを伝えた。
「そうでしょうな、そんなに長くファーシリウス様が苦しんでおられたことワシたちは知りませんでした。
ワシたちはゲオング王国とカナンゲート聖王国のことは絶対許せないと思っております。
しかしワシたちも長年この魔国で平和に暮らしてきて、以前よりはヒト族に対しての恨み憎しみの感情は弱くなってきてるように感じます、そうでない者もいるでしょうが」
ドラキエスの言葉にみながふむという納得という顔になる。
「そうですね…リゼット様と知り合って接するようになって変わってきたこともありますね」
「フロムウェルリゼットと接するようになってどう変わってきたのだ?」
我はフロムウェルに尋ねる。
「…その、…何ていうかヒト族にもいろいろといるのだな…と。
だからと言ってヒト族に対する恨みはなくなっていませんが…」
「…そうか」
「妾もじゃ、リゼット様はどう望まれるのじゃろ?」
「リゼットはどう望むとは?」
「妾たちの命を救ってくれたのは魔王ファーシリウスとリゼット様じゃ。
リゼット様が自分の命を賭けて浄化と解毒をしてくれなければ、妾たちはみな死んでいたのじゃ。
今や妾にとってリゼット様は魔王ファーシリウスと同じく自分の命以上となったのじゃ。
妾は魔王ファーシリウスとリゼット様が望む世界で生きたいのじゃ。
もしリゼット様があのふたつの国以外のヒト族を生かすと言うのなら妾はそれでよいと思っておるじゃ」
「ワシもです、私もヒト族に同種を殺された恨みは消えておりません。
ですが、ファーシリウス様とリゼット様が望むことこそが大切であります」
アンディナに続きドラキエスも同じことを言った。
「アンディナとドラキエス以外の者たちはどう考えるのだ?」
我はみなを見渡す。
「私も同じ考えでございます。
ファーシリウス様とリゼット様の考えが私の考えであります」
「俺もです」
「私もです」
クラウス、フロムウェル、コムシジャが答えた。
みなは今は我だけでなくリゼットが何を望むか、どうしたいかの方が自分たちより重要になっているのだな、アンディナ以外の者たちもそれほどにリゼットが何よりも自分たちより大切になったという証拠だ。
「そうかわかった、とにかく今は魔国にやってくるヒト族全員叩き潰す。
それからその後、ゲオング王国とカナンゲート聖王国に同時侵攻して、ふたつの国を滅ぼす。
まあ、それだけで他国のヒト族には脅威となるであろう。
それでも魔国に攻めてくるのなら、魔国に来る者は残らずすべて殲滅するがな。
あの神の契約では2つ以上の国を滅ぼすことは許されておらぬが、魔国に侵攻してくる者を排除は出来るのだ。
その後のことはリゼットも含めそなたたちと話し合うとしよう、それでよいな?」
「「「「「はっ!」」」」」
我は側近たちの返事を聞いてから自室に戻った。
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
【完結】「元カノが忘れられないんでしょう?」と身を引いた瞬間、爽やか彼氏の執着スイッチが入りました
恋せよ恋
恋愛
「元カノが忘れられないなら、私が身を引くわくべきよね」
交際一周年、愛するザックに告げた決別の言葉。
でも、彼は悲しむどころか、見たこともない
暗い瞳で私を追い詰めた。
「僕を捨てる? 逃げられると思っているの、アン」
私の知る爽やかな王子の仮面が剥がれ落ち、
隠されていた狂おしいほどの独占欲が牙を剥く。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
姉の方を所望していたと言った婚約者に、突然連れ帰られて気づいたら溺愛されています
もちもちほっぺ
恋愛
侯爵家の地下室に住み、姉の食べかけで飢えをしのぎ、婚約者には初対面で「老婆のようだ、姉の方がよかった」と言われた令嬢リリアーナ。
ある日その婚約者に問答無用で公爵邸に連れ帰られた。
庭の恵みを口にするたびに肌が輝き、髪が艶めき、体に力が満ちていく。首に巻いたお守りの秘密、十数年続く国の不作の真実、虐げられ続けた令嬢の出生の謎。
全てが明かされる時、地下室令嬢の逆転劇が始まる。
なお婚約者は今日も庭でグルメリポートを最後まで聞いている。
【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
扇レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋
伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。
それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。
途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。
その真意が、テレジアにはわからなくて……。
*hotランキング 最高68位ありがとうございます♡
▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス
王宮の万能メイド、偏屈魔術師を餌付けする
葉山あおい
恋愛
王宮で働く勤続八年のメイド、エレナ・フォスター。仕事は完璧だが愛想がない彼女は、いつしか「鉄の女」と呼ばれ恐れられていた。
そんな彼女に下された辞令は、王宮の敷地内にありながら「魔窟」と呼ばれる『北の塔』の専属メイドになること。そこの主である宮廷魔術師団長・シルヴィス・クローデルは、稀代の天才ながら極度の人嫌い&生活能力ゼロの偏屈男だった!
ゴミ屋敷と化した塔をピカピカに掃除し、栄養失調寸前の彼に絶品の手料理を振る舞うエレナ。黄金色のオムレツ、とろける煮込みハンバーグ、特製カツサンド……。美味しいご飯で餌付けされた魔術師様は、次第にエレナへの独占欲を露わにし始めて――?
意地悪な聖女や侯爵夫人のいびりも、完璧なスキルで華麗に返り討ち。平民出身のメイドが、身分差を乗り越えて幸せな花嫁になるまでの、美味しくて甘いシンデレラストーリー。
王宮地味女官、只者じゃねぇ
宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。
しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!?
王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。
訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ――
さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。
「おら、案内させてもらいますけんの」
その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。
王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」
副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」
ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」
そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」
けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。
王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。
訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る――
これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。
★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。
【完結】帳簿係の地味令嬢、商会の不正を見抜いて王宮に見出されました。
夏灯みかん
恋愛
王都の商工会議所で働く、地味な帳簿係エミリー。
真面目に記録をつけることだけが取り柄の彼女は、同僚から軽く扱われ、雑用を押しつけられる日々を送っていた。
そんなある日――エミリーは、孤児院への配給物資の記録に、わずかな“ズレ”があることに気づく。
数量は合っている。
だが、なぜか中身の重量だけが減っている。
違和感を覚えたエミリーは、自ら倉庫へ足を運び、現物を確認する。
そこで見つけたのは、帳簿では見えない“静かな不正”だった。
しかしその矢先――不正の責任を押しつけられ、職場から追い出されそうになってしまう。
それでもエミリーは諦めない。ただ一つ、自分が積み上げてきた“記録”を信じて。
「では、正式な監査をお願いいたします」
やがてその記録は、王宮の政務監査官リオンの目に留まり――
隠されていた不正はすべて暴かれる。
そして、彼女を軽んじていた者たちは、その代償を支払うことになる。
これは、地味で目立たなかった一人の帳簿係が、
“正しく記録した”ことで不正を暴き、王宮に見出されるまでの物語。