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すべてが終わる、その前に。

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あの人は買い物にいった。

こちらをちらちらと気にしていた。最近の私の挙動がおかしいとさすがに気づいたのだろう。

それなら、早くしなくては。

いらないものは、捨てた。

今私の部屋にあるものは、誰が見ても大丈夫なものだけだ。

ついでにあの子と一緒に買ったものも処分してしまったけど。許してくれるだろう。

お前も、私も。壊れてしまったね。

でも、今から私はいなくなるから。だから、少しは楽になるはず。だから、大丈夫だよ。

あの子はわりといい加減だから。ちゃんと勉強して、仕事をして。自立できるといいのだけど。

まぁ、私が気にすることでもないが。

今日がいい天気でよかった。

今まで、生きてきて。

楽しいことは少なかったけれど。

頑張った、つもりなんだ。ただ、結果が思わしくないことも多かった。一杯努力しても、報われることがないこともたくさんあると、知った。

自分を削り、壊しても、相手が理解してくれないこともある。血が繋がってるから、何でも理解できるわけでもないってことも。

…自分一人がいなくなっても、ちゃんと世界は回るだろう。悲しんで泣いてくれる友人たちも、いつしか私を忘れていくだろう。

家族は?どう思うのだろうか。ちゃんと泣いてくれるだろうか?一生おぼえていてくれるだろうか。

私は辛いから逃げる。

別に、彼らを苦しめたいわけではないけど。

いつまでも、私を忘れないでいてくれたら。

もしかしたら、嬉しい、かもしれない。

涙もでなくなってきて、自分がおかしいと思っていたけど。

…もし、次に出会うなら。

笑って色々話せたら、楽しい、かもしれない。

あぁ。

そうだね。

次、出会えたら。笑って話せたらいいね。

私は、ここでお別れ。

逃げる私が、言えることではないけれど。

お土産話、楽しみにしているよ。

私は先に、向こうで待っています。


さようなら。

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