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外界からの訪問者
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流星が、流れなくなった。
その報は、王国中で人口に膾炙する。殆どのものが、未知の事態に恐怖を抱いて話し合った。
そんな中、更に王国を揺るがす事態が起こった。
王国の外から、来訪者が有った。しかも、彼らは人間ではなかった。
小柄で小太り、それでいて膂力に優れた小人、長い耳を持ち不可思議な力を操る長身の一族。他にも、背に翼を持つものなど。
彼らは代表者を送り込んで、国王への謁見を求めた。
「『境界』が崩れたので、制約がとけたようですので、貴国へご挨拶をさせていただきたくはせ参じました」
彼らの言い分は要約するとそれだ。わからないことだらけで混乱する王国の重鎮達を尻目に、彼らは更に追い討ちをかけてきた。
「やはりもうここには精霊達はいないのですね」
「私どもはあなた方のご先祖に頼まれていたので、それを果たしに来ただけです。」
「二十年ほどもあれば、この土地は不毛の大地となりましょう」
「それまでに、貴国の民に身の振り方を考えさせると宜しかろう」
「旧き友人の頼みじゃ。人間時間で五十年くらいは面倒は見よう。じゃが、おぬしらは魔力もないし精霊達はおぬしらを嫌って居る。はようその先は決めるべきじゃぞ」
全てが寝耳に水の話だ。王宮内は彼らの言に混乱し、対策に明け暮れた。
魔法など、精霊など。御伽噺だと思っていたのに。彼らはいぶかしむ人間たちを前に、いとも簡単にさまざまな奇跡を起こして見せた。
「こんなもの、子供でも使えますよ」
そう、笑いながら。
人間たちは、愕然とした。
この世界には、精霊と言う存在がいて、この世界の様々な理にかかわっている事。精霊は基本的には誰に対しても無関心ではあるが、ひとたび心を許すと様々な恩恵を与えてくれること。…そして。
「…そんな、こと。知るわけがないではないか…」
国王は深夜の執務室で頭を抱えた。彼の手元には、沢山の種族から聞き取ったこの世界のあらましが記された書類が山となっている。その中の一つを流し読みしていた際、大きな衝撃を覚えた。
「…我が王国が、過去に精霊の力を欲し、その一人を捕らえてその力を吸い上げ、殺した。…それを知った精霊たちは、可愛がっていた末っ子がなついていた人間に殺されたことを怒り、結界でその周辺を覆い、それ以上の被害が出ないようにした上、全ての精霊が眠りについた…」
そもそも、精霊はひとところに長くは存在しないもの。数百年の周期で界をわたり、気に入った土地があればそこにいついて住むという。精霊はそこに存在するだけで土地を富ませる存在。その力に着目した過去の先祖は、その力を永遠に我が物にせんととある精霊を捕らえた。一匹分の力を吸い上げたところでその精霊は力尽きた。
…だが、死んだその精霊は精霊たちの界を渡るのに欠かせない何かしらの役割を持っていたらしく、身の危険を感じながらも、精霊たちはその土地を出ることがかなわず…仕方無しに、眠りについたと。
王国が長年『星降祭』とよんでいたあれは、精霊たちが界を渡りたいと願い、深い眠りの中であげた悲鳴のようなものだったなど。
今更、だ。しかし、王国外のものたちには、そう思えないものらしい。
彼らの中にはその当時を知るものも居るらしく、国王と謁見する際も、嫌悪感を隠そうともしないものもいた。
「命短いものほど、短慮なのですね」
秀麗な顔に、嫌悪感を滲ませ、吐き捨てるように告げた耳長族の里長は、それだけを告げて去っていった。
そして、去り際に一言だけぽつりと告げた。
「やっと、この閉じた世界に閉じ込められた哀れな精霊たちが、この頸木から解き放たれることを。私は大変うれしく思っておりますよ」
そういって国王を一瞥し、背中を向けたきり、一度も振り返ることはなかった。
あまりの無礼に騎士たちが剣に手をかけたが、他の種族も里長の無礼をとがめることはなく、頷くのみ。
「彼は亡くなった精霊と仲が良かったものですからな。未だに許せないのでしょう…」
「目の前に家族の敵がいて。平静でいられるほど、我等は情を失っているつもりはないのですよ」
口調は穏やかだったが、そのことばにはふんだんに棘が含まれていることを悟り、王は自らの立場を考え悩んだという。
------------------------------------------------------------
…気持ち良い。
とても穏やかで、安らかな気持ちだ。こんな気分になったのなんて、ずいぶんと久しぶりではないだろうか。
目を閉じたまま、周りの物音に耳を澄ます。
微かに、頭に響き渡る小さな鐘の音が聞こえる。いや、これは鈴の音か…
ずいぶん前に死んでしまったけれど、痩せた獣が我が敷地に迷い込んできたことがあった。
獣は野に捨て置くべきです、素人が手に負えるものではありませんと家人達は言い募ってきたけれど、長い闘病生活の果てに母を亡くしたばかりの私は、どうしてもその獣を見捨てられなかった。乾ききってしまった血糊や、痩せて骨の浮き出たあばらが、病に苦しんでいた母の姿と重なった。
今まで母を亡くした悲しみのあまりに、何物にも心を動かさなかった娘がようやく何かをする気になったか、と父はおざなりに飼育許可を出した。父は貴族らしい貴族であった。
母との婚姻も、家の存続のためだけのものであり、そこに愛など存在しない。一人娘を授かり、妻が子供を産めなくなったとわかると、さっさと愛人を作った。
しかしながら、結局妻を失っても、彼の元に跡継ぎは生まれなかった。仕方ないと、父は一人娘に婿を取る方向に切り替えた。近親から養子を取る考えもなくはなかったが、落ちぶれて久しい辺境領主の元に、子息を預ける酔狂な親戚は現れなかった。
目を閉じ、ふと物思いにふけっていると、鈴の音が近くまで来ていることに気がついて、彼女はふと目をあけた。
「まあ…!!」
そこには、満天の星空が広がっていた。いや、彼女は星空の中にいた。見渡す限りの宵闇の中、彼女は星空の中にたっていた。
首が痛くなるほどに上を見上げても、足元を見ていても、尽きぬ闇がそこには広がっている。
その中に、時折星の光がぽっかりと浮かんで、瞬いていた。よくよく目を凝らしてみてみると、その小さな星は様々な色彩を持っていて、ちかちかと頼りなげな光を放っている。
そんな中、りぃん、と先程の鈴の音が近づいてくるのを改めて感じ、彼女はゆっくりとその方角に足を向けた。
おそるおそる、一歩を踏み出してみると、闇を踏みしめるたびに、足の周りが僅かに光の波紋を描き、ふるる、と小さく震えている。何だかそれが酷く楽しくなって、彼女は最初の怖れを忘れ、どんどんと音のほうへと進んでいった。
鈴の音の導くまま、闇の中を水紋のようなものを描きながら弾むように進んだ先には、やはり昔拾った獣の姿があった。
拾ったからには、精一杯最期まで世話をしたいと、彼女が選んでつけてあげた青いリボンに、小さな鈴をつけた姿で。
この子は一週間ほどしか生きられなかった。しかし、彼女は拾ってからずっと、部屋に閉じこもって寝食を共にした。
人間用の傷薬を薄く延ばし、毎日清潔な包帯を換えて、僅かでも口に出来るものがあれば彼女が自ら与えた。
警戒心の塊でもあったので、わざわざ自分が口に含んで見せて、毒がないことを知らせて食べさせたり。清潔なタオルに包み、いつも抱きしめて暖めた。
最初の頃は噛み付くこともあった獣も、最期を迎えるときには、彼女に顔を擦り付けて、満足げにきゅうんと鳴きながらゆっくりと目を閉じ、安らかな表情で逝った。
わかっていた事だったが、世話をした獣が死んでしまったときには泣いた。
しかし、母のときとは違い、それこそおはようからおやすみまで、ずっと看病できた満足感が、彼女を立ち直らせるきっかけになったのだ。
そんな幼い頃の友人が、死に別れた頃の姿のまま、こちらを穏やかに見つめているのをみて、彼女は笑みをこぼした。
「お久しぶりね。あなたに会えたということは、私は死んでしまったのかしら…」
当時の癖のまま、彼女は獣に話しかけた。
孤独だったその頃、彼女はいつも獣に話しかけていたのだ。
獣は特に反応を示さなかったが、彼女の言うことを否定するでもなく、かといって逃げて無視するでもなかったので、いつも話しかける癖がついていたのだ。
その報は、王国中で人口に膾炙する。殆どのものが、未知の事態に恐怖を抱いて話し合った。
そんな中、更に王国を揺るがす事態が起こった。
王国の外から、来訪者が有った。しかも、彼らは人間ではなかった。
小柄で小太り、それでいて膂力に優れた小人、長い耳を持ち不可思議な力を操る長身の一族。他にも、背に翼を持つものなど。
彼らは代表者を送り込んで、国王への謁見を求めた。
「『境界』が崩れたので、制約がとけたようですので、貴国へご挨拶をさせていただきたくはせ参じました」
彼らの言い分は要約するとそれだ。わからないことだらけで混乱する王国の重鎮達を尻目に、彼らは更に追い討ちをかけてきた。
「やはりもうここには精霊達はいないのですね」
「私どもはあなた方のご先祖に頼まれていたので、それを果たしに来ただけです。」
「二十年ほどもあれば、この土地は不毛の大地となりましょう」
「それまでに、貴国の民に身の振り方を考えさせると宜しかろう」
「旧き友人の頼みじゃ。人間時間で五十年くらいは面倒は見よう。じゃが、おぬしらは魔力もないし精霊達はおぬしらを嫌って居る。はようその先は決めるべきじゃぞ」
全てが寝耳に水の話だ。王宮内は彼らの言に混乱し、対策に明け暮れた。
魔法など、精霊など。御伽噺だと思っていたのに。彼らはいぶかしむ人間たちを前に、いとも簡単にさまざまな奇跡を起こして見せた。
「こんなもの、子供でも使えますよ」
そう、笑いながら。
人間たちは、愕然とした。
この世界には、精霊と言う存在がいて、この世界の様々な理にかかわっている事。精霊は基本的には誰に対しても無関心ではあるが、ひとたび心を許すと様々な恩恵を与えてくれること。…そして。
「…そんな、こと。知るわけがないではないか…」
国王は深夜の執務室で頭を抱えた。彼の手元には、沢山の種族から聞き取ったこの世界のあらましが記された書類が山となっている。その中の一つを流し読みしていた際、大きな衝撃を覚えた。
「…我が王国が、過去に精霊の力を欲し、その一人を捕らえてその力を吸い上げ、殺した。…それを知った精霊たちは、可愛がっていた末っ子がなついていた人間に殺されたことを怒り、結界でその周辺を覆い、それ以上の被害が出ないようにした上、全ての精霊が眠りについた…」
そもそも、精霊はひとところに長くは存在しないもの。数百年の周期で界をわたり、気に入った土地があればそこにいついて住むという。精霊はそこに存在するだけで土地を富ませる存在。その力に着目した過去の先祖は、その力を永遠に我が物にせんととある精霊を捕らえた。一匹分の力を吸い上げたところでその精霊は力尽きた。
…だが、死んだその精霊は精霊たちの界を渡るのに欠かせない何かしらの役割を持っていたらしく、身の危険を感じながらも、精霊たちはその土地を出ることがかなわず…仕方無しに、眠りについたと。
王国が長年『星降祭』とよんでいたあれは、精霊たちが界を渡りたいと願い、深い眠りの中であげた悲鳴のようなものだったなど。
今更、だ。しかし、王国外のものたちには、そう思えないものらしい。
彼らの中にはその当時を知るものも居るらしく、国王と謁見する際も、嫌悪感を隠そうともしないものもいた。
「命短いものほど、短慮なのですね」
秀麗な顔に、嫌悪感を滲ませ、吐き捨てるように告げた耳長族の里長は、それだけを告げて去っていった。
そして、去り際に一言だけぽつりと告げた。
「やっと、この閉じた世界に閉じ込められた哀れな精霊たちが、この頸木から解き放たれることを。私は大変うれしく思っておりますよ」
そういって国王を一瞥し、背中を向けたきり、一度も振り返ることはなかった。
あまりの無礼に騎士たちが剣に手をかけたが、他の種族も里長の無礼をとがめることはなく、頷くのみ。
「彼は亡くなった精霊と仲が良かったものですからな。未だに許せないのでしょう…」
「目の前に家族の敵がいて。平静でいられるほど、我等は情を失っているつもりはないのですよ」
口調は穏やかだったが、そのことばにはふんだんに棘が含まれていることを悟り、王は自らの立場を考え悩んだという。
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…気持ち良い。
とても穏やかで、安らかな気持ちだ。こんな気分になったのなんて、ずいぶんと久しぶりではないだろうか。
目を閉じたまま、周りの物音に耳を澄ます。
微かに、頭に響き渡る小さな鐘の音が聞こえる。いや、これは鈴の音か…
ずいぶん前に死んでしまったけれど、痩せた獣が我が敷地に迷い込んできたことがあった。
獣は野に捨て置くべきです、素人が手に負えるものではありませんと家人達は言い募ってきたけれど、長い闘病生活の果てに母を亡くしたばかりの私は、どうしてもその獣を見捨てられなかった。乾ききってしまった血糊や、痩せて骨の浮き出たあばらが、病に苦しんでいた母の姿と重なった。
今まで母を亡くした悲しみのあまりに、何物にも心を動かさなかった娘がようやく何かをする気になったか、と父はおざなりに飼育許可を出した。父は貴族らしい貴族であった。
母との婚姻も、家の存続のためだけのものであり、そこに愛など存在しない。一人娘を授かり、妻が子供を産めなくなったとわかると、さっさと愛人を作った。
しかしながら、結局妻を失っても、彼の元に跡継ぎは生まれなかった。仕方ないと、父は一人娘に婿を取る方向に切り替えた。近親から養子を取る考えもなくはなかったが、落ちぶれて久しい辺境領主の元に、子息を預ける酔狂な親戚は現れなかった。
目を閉じ、ふと物思いにふけっていると、鈴の音が近くまで来ていることに気がついて、彼女はふと目をあけた。
「まあ…!!」
そこには、満天の星空が広がっていた。いや、彼女は星空の中にいた。見渡す限りの宵闇の中、彼女は星空の中にたっていた。
首が痛くなるほどに上を見上げても、足元を見ていても、尽きぬ闇がそこには広がっている。
その中に、時折星の光がぽっかりと浮かんで、瞬いていた。よくよく目を凝らしてみてみると、その小さな星は様々な色彩を持っていて、ちかちかと頼りなげな光を放っている。
そんな中、りぃん、と先程の鈴の音が近づいてくるのを改めて感じ、彼女はゆっくりとその方角に足を向けた。
おそるおそる、一歩を踏み出してみると、闇を踏みしめるたびに、足の周りが僅かに光の波紋を描き、ふるる、と小さく震えている。何だかそれが酷く楽しくなって、彼女は最初の怖れを忘れ、どんどんと音のほうへと進んでいった。
鈴の音の導くまま、闇の中を水紋のようなものを描きながら弾むように進んだ先には、やはり昔拾った獣の姿があった。
拾ったからには、精一杯最期まで世話をしたいと、彼女が選んでつけてあげた青いリボンに、小さな鈴をつけた姿で。
この子は一週間ほどしか生きられなかった。しかし、彼女は拾ってからずっと、部屋に閉じこもって寝食を共にした。
人間用の傷薬を薄く延ばし、毎日清潔な包帯を換えて、僅かでも口に出来るものがあれば彼女が自ら与えた。
警戒心の塊でもあったので、わざわざ自分が口に含んで見せて、毒がないことを知らせて食べさせたり。清潔なタオルに包み、いつも抱きしめて暖めた。
最初の頃は噛み付くこともあった獣も、最期を迎えるときには、彼女に顔を擦り付けて、満足げにきゅうんと鳴きながらゆっくりと目を閉じ、安らかな表情で逝った。
わかっていた事だったが、世話をした獣が死んでしまったときには泣いた。
しかし、母のときとは違い、それこそおはようからおやすみまで、ずっと看病できた満足感が、彼女を立ち直らせるきっかけになったのだ。
そんな幼い頃の友人が、死に別れた頃の姿のまま、こちらを穏やかに見つめているのをみて、彼女は笑みをこぼした。
「お久しぶりね。あなたに会えたということは、私は死んでしまったのかしら…」
当時の癖のまま、彼女は獣に話しかけた。
孤独だったその頃、彼女はいつも獣に話しかけていたのだ。
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