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前編
ない、ない……
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「おい、どうすりゃいいんだ? こいつは!」
「だーかーらー、影なの! 影っ!」
「影が何だっ!? この真っ黒いのだろ!」
「そいつの影が本体だから獣を攻撃しても意味がないの!」
今日のボスはシャドウパンサー。影のような黒い毛並みの豹だ。
そして、本体は豹の影。動く豹自身を切ってもただの影なのだ。
アルテが何度も何度も豹の方を攻撃している。
そして私には、上からはっぱや小枝がさっきから嫌というほど降ってくる。はやくなんとかしなきゃ、不幸がとまらない。
ただ、この子の弱点は光魔法で影を照らして弱め、動きを鈍くしたところで一気に本体を叩く。だから光魔法が欲しいのだけど、持ってるキャラクターはそう先ほどお別れした、魔術師グリードが使える魔法なのよ……。
「おぉい! すばしっこいぞ、コイツ!」
「わかってる、もうっ!」
そうは言ったものの、私の手持ちの駒にはいい手がない。
「あいたっ」
また一つ小枝が落ちてきて、上を見上げた時だった――。
「リリーナ!!」
アルテの声で、パッと視線を戻すと目の前まで影の豹が迫ってきていた。
「ライト!!」
誰かが低い声で、光魔法を唱え、影の豹を照らす。
「ギャィン!!」
影の豹はまるでものすごい衝撃があったかのように後ろへと飛びうずくまった。
視線を声の方に向けると銀の髪、赤い瞳の魔術師、グリードが少し離れた場所に立っていた。
「いまだっ!」
その声で、私とアルテが動く。
弓で、影の中心を射る。そこを目印に、アルテは大剣をざくりと突き立てた。
すると煙がかき消える様にジュァッと影の豹が姿を消した。
「や、やったぁ」
安堵の息をつくと、アルテが走ってきて、抱きしめられた。
ちょっ、人前! っていうか、何で抱きしめるの!?
「すまん、危険に晒した」
あ、さっきの? でも、何とかなったし、タイミングよく彼が――、そうだ。
私は、アルテを押し返し、グリードの方へ顔を向けた。
グリードは、後ろを向いてザイラのいる方へと向かっていた。
優しさが痛いっ!
「グリード様、ありがとうございました! 助かりました」
私が叫ぶと、アルテも後ろからお礼を言っていた。
「ありがとう、助かった」
ザイラがこちらに手を振っている。片方の手には獲物と思われる獣を携えて。
さすが……、大きな鍋を振り回す腕力の持ち主って感じ?
グリードは、こちらを見ることなくザイラの肩を掴み、エスケープを唱えて消えた。
「この先に用があったわけじゃないのか。わざわざここまで来たのは何でだ?」
「さぁ、たまたま近くまできてたのかな?」
私達は、首を傾げつつ宝物の場所へと向かった。
(もしかして……、私のことを確かめたかったりするのかな)
「あぁぁぁぁぁぁっ!」
「どうした、リリーナ!」
「ない……」
「ん、何かなくなったのか?!」
アルテがキョロキョロとあたりを見回す。
ない。ないの……。
「新しいお宝ぁ」
「そっちかよ!」
いい感じにツッコミが入った。
今日はびしょびしょになったり、倒すのに苦労したけど、報われなかった。悲しい。
しょんぼりしながら私はエスケープを唱える。
アルテがよしよしと頭を撫でて慰めてくれた――。
「だーかーらー、影なの! 影っ!」
「影が何だっ!? この真っ黒いのだろ!」
「そいつの影が本体だから獣を攻撃しても意味がないの!」
今日のボスはシャドウパンサー。影のような黒い毛並みの豹だ。
そして、本体は豹の影。動く豹自身を切ってもただの影なのだ。
アルテが何度も何度も豹の方を攻撃している。
そして私には、上からはっぱや小枝がさっきから嫌というほど降ってくる。はやくなんとかしなきゃ、不幸がとまらない。
ただ、この子の弱点は光魔法で影を照らして弱め、動きを鈍くしたところで一気に本体を叩く。だから光魔法が欲しいのだけど、持ってるキャラクターはそう先ほどお別れした、魔術師グリードが使える魔法なのよ……。
「おぉい! すばしっこいぞ、コイツ!」
「わかってる、もうっ!」
そうは言ったものの、私の手持ちの駒にはいい手がない。
「あいたっ」
また一つ小枝が落ちてきて、上を見上げた時だった――。
「リリーナ!!」
アルテの声で、パッと視線を戻すと目の前まで影の豹が迫ってきていた。
「ライト!!」
誰かが低い声で、光魔法を唱え、影の豹を照らす。
「ギャィン!!」
影の豹はまるでものすごい衝撃があったかのように後ろへと飛びうずくまった。
視線を声の方に向けると銀の髪、赤い瞳の魔術師、グリードが少し離れた場所に立っていた。
「いまだっ!」
その声で、私とアルテが動く。
弓で、影の中心を射る。そこを目印に、アルテは大剣をざくりと突き立てた。
すると煙がかき消える様にジュァッと影の豹が姿を消した。
「や、やったぁ」
安堵の息をつくと、アルテが走ってきて、抱きしめられた。
ちょっ、人前! っていうか、何で抱きしめるの!?
「すまん、危険に晒した」
あ、さっきの? でも、何とかなったし、タイミングよく彼が――、そうだ。
私は、アルテを押し返し、グリードの方へ顔を向けた。
グリードは、後ろを向いてザイラのいる方へと向かっていた。
優しさが痛いっ!
「グリード様、ありがとうございました! 助かりました」
私が叫ぶと、アルテも後ろからお礼を言っていた。
「ありがとう、助かった」
ザイラがこちらに手を振っている。片方の手には獲物と思われる獣を携えて。
さすが……、大きな鍋を振り回す腕力の持ち主って感じ?
グリードは、こちらを見ることなくザイラの肩を掴み、エスケープを唱えて消えた。
「この先に用があったわけじゃないのか。わざわざここまで来たのは何でだ?」
「さぁ、たまたま近くまできてたのかな?」
私達は、首を傾げつつ宝物の場所へと向かった。
(もしかして……、私のことを確かめたかったりするのかな)
「あぁぁぁぁぁぁっ!」
「どうした、リリーナ!」
「ない……」
「ん、何かなくなったのか?!」
アルテがキョロキョロとあたりを見回す。
ない。ないの……。
「新しいお宝ぁ」
「そっちかよ!」
いい感じにツッコミが入った。
今日はびしょびしょになったり、倒すのに苦労したけど、報われなかった。悲しい。
しょんぼりしながら私はエスケープを唱える。
アルテがよしよしと頭を撫でて慰めてくれた――。
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