32 / 97
前編
スタート
しおりを挟む
『それでは、レースを開始します!』
わー! と、歓声が上がる。気球みたいな乗り物がぷかりと浮いていて、そこから、実況解説が聞こえてくる。
『今回のレースはなんと、我が国の王女様! メイラ様の婚約者を決めるレースとなっております!!』
そう、そう。それで、誰を勝たせるかで好感度が変わるのよね。まあ、今は関係ないけれど。
「皆様、本日は、ご参加ありがとうございます。全員が勝利することは出来ませんが、皆様が全力で挑んでいる姿をこの目に焼き付けようと思っております。頑張って下さい」
メイラが、メイン観客席の一番上。王族用の席だろう、そこに立って挨拶をしている。
そのとなりには、あの弟王子の姿もあった。
手をふる彼女は、何度見返してもとてもきれいでステキなお姫様。見た目も中身も敵わない。
にこりと笑う顔が、こちらをじっと見ている気がした。
相思相愛なのかな……。
『――――ハイエアートを操縦し、途中のこの魔法で作ったサークルポイントを一ヶ所につき五本くぐり抜け、――』
レースの説明が会場に響く。
「おい、リリーナ。シルフの用意を」
「あ、ごめんね。シルフ!」
ちびアルテを呼び出し、風の盾を用意する。
今日は私の右肩に乗ってきた。頭の上と違って、表情が見える。少し、緊張してる? 私が緊張してるからかな。
『――ゴールポイントには、筆頭魔術師グリード様が審判として待機しております! さぁ、彼が困る程のデッドヒートはあるのか!!』
「大丈夫だ。リリーナはいつも通りにしてくれればいいからな」
「うん」
アルテに当たっている足をもう少しだけ近付ける。ぎゅっと、操縦桿を握り、魔法核に魔力を込めた。
ポッと身体に魔力が流れるのがわかる。自分の物じゃない、アルテのあたたかい流れも。
「いくぞ!」
「はい!」
『――カウント開始します!』
『5』
絶対に!
『4』
勝って!
『3』
腕輪を、
『2』
返してもらう!!
『1』
そして、――。
『0! スタートです!!』
ハイエアートの飛び立つ音が一斉に響く。スタートが速いのは、私達、アルベルトとアナスタシア、それと、アレン!?
このレースに参加するアレンのルートも確かにあった。けど、彼の後ろには、知らない金色の髪の女の人。誰だろう、あの人……。
『さぁ、最初のポイントまでは直線です。速さが大事な場所ですね!』
「スピードなら負ける気がしないな!」
「うん、まかせて!」
いけない、いけない、レースに集中しないと。
うしろには他にもたくさんの参加者のハイエアートが飛んでいる。
「今日は相手がいるから、やっぱ燃えるな!」
すごく楽しそうに笑うアルテの横顔が少しだけ見えた。
わー! と、歓声が上がる。気球みたいな乗り物がぷかりと浮いていて、そこから、実況解説が聞こえてくる。
『今回のレースはなんと、我が国の王女様! メイラ様の婚約者を決めるレースとなっております!!』
そう、そう。それで、誰を勝たせるかで好感度が変わるのよね。まあ、今は関係ないけれど。
「皆様、本日は、ご参加ありがとうございます。全員が勝利することは出来ませんが、皆様が全力で挑んでいる姿をこの目に焼き付けようと思っております。頑張って下さい」
メイラが、メイン観客席の一番上。王族用の席だろう、そこに立って挨拶をしている。
そのとなりには、あの弟王子の姿もあった。
手をふる彼女は、何度見返してもとてもきれいでステキなお姫様。見た目も中身も敵わない。
にこりと笑う顔が、こちらをじっと見ている気がした。
相思相愛なのかな……。
『――――ハイエアートを操縦し、途中のこの魔法で作ったサークルポイントを一ヶ所につき五本くぐり抜け、――』
レースの説明が会場に響く。
「おい、リリーナ。シルフの用意を」
「あ、ごめんね。シルフ!」
ちびアルテを呼び出し、風の盾を用意する。
今日は私の右肩に乗ってきた。頭の上と違って、表情が見える。少し、緊張してる? 私が緊張してるからかな。
『――ゴールポイントには、筆頭魔術師グリード様が審判として待機しております! さぁ、彼が困る程のデッドヒートはあるのか!!』
「大丈夫だ。リリーナはいつも通りにしてくれればいいからな」
「うん」
アルテに当たっている足をもう少しだけ近付ける。ぎゅっと、操縦桿を握り、魔法核に魔力を込めた。
ポッと身体に魔力が流れるのがわかる。自分の物じゃない、アルテのあたたかい流れも。
「いくぞ!」
「はい!」
『――カウント開始します!』
『5』
絶対に!
『4』
勝って!
『3』
腕輪を、
『2』
返してもらう!!
『1』
そして、――。
『0! スタートです!!』
ハイエアートの飛び立つ音が一斉に響く。スタートが速いのは、私達、アルベルトとアナスタシア、それと、アレン!?
このレースに参加するアレンのルートも確かにあった。けど、彼の後ろには、知らない金色の髪の女の人。誰だろう、あの人……。
『さぁ、最初のポイントまでは直線です。速さが大事な場所ですね!』
「スピードなら負ける気がしないな!」
「うん、まかせて!」
いけない、いけない、レースに集中しないと。
うしろには他にもたくさんの参加者のハイエアートが飛んでいる。
「今日は相手がいるから、やっぱ燃えるな!」
すごく楽しそうに笑うアルテの横顔が少しだけ見えた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
50
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる