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後編
見つかったのに
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「エリナ、帰るか?」
「え……」
「……説明ならしておこう」
今戻るの? でも、私――。
「戻れないよ。ナホと話したい。一人でなんて戻れないよ。だって、大事な……、大事な友達なんだよ……。何も知らないまま、一人に出来ないよ」
私が何をして彼女を傷つけたのか、知りたい。それと、二人で帰りたい。もう、彼女を一人にしたくない。
アルテがそっと頭を撫でてくれた。
そうだ、聞かなくちゃ。ナホに。
「……そうか」
グリードが、頷く。そして、指を差し出した。
「あの……?」
「……「魅了」の指輪だ」
「え?」
「アナスタシアの帰る鍵はコレだ」
え? え? えぇぇぇぇ?!
「あの、え?」
「お前もあっちの人間なのか?!」
グリードは目をそらしながら、向こうをむく。答える気がないのかな。
「……あちらに戻りたい。だから、手伝おう」
彼はそう言ったあと、口をつぐんだ。
「わかった、アナスタシアを探さないとだな」
「……うん」
これで、全部揃ったんだ。やることはあとは、レースとアナスタシアと話すこと。
「じゃあ、戻るね。エスケープ」
グリードは、誰で、どうしてここにいるかは、教えてもらえないのかな。
話したくないと態度で示す彼は、聞いたところで教えてくれないのかな。
◇
「おかえりなさい」
「お帰りー」
「おかえりなさいませ」
家にいた三人が出迎えてくれる。
「整備は済んだよ。いつでも飛べるから」
「ありがとう」
「あれ? 髪飾り、かわった?」
ルミナスがめざとく気がつく。
「見つかったんだ。もと俺の腕輪の宝石だとさ」
「あ、見つかったんだ」
彼に、なぜかじーっと見つめられる。あの、何ですか?
私が疑問に思っていると、メイラが頬に手をあてながら嬉しそうに聞いてきた。
「見つかったのに、手を繋いでいらっしゃるのですか?」
………………?!
「あ、えっと! これは、その――」
「あ、これは、その……だな!」
二人して焦っていると、出迎えてくれた三人がそれぞれその人らしく笑っていた。
◇
「――これがカオルの気持ちなんだ」
「そうか――」
離れてルミナスとアルテが話してる。あちらの話、私は部外者だから、終わるまでメイラと紅茶を飲みながら待っていた。
「やっと、戻れるのですね」
「えぇ、でも」
「お友達ですか――」
「はい」
こちらはこちらで重い話になってしまいそう。
「正直、羨ましいですね。私の立場だと、一緒にいる人は誰かに選ばれた人か、私の地位を見る人だけですから。一緒に楽しく遊ぶなんて、夢のまた夢です」
「お姫様ってキラキラしてるけど、やっぱり大変ですよね」
「そうですね。だけど、この前から同じ立場のからかう相手……、あら、一緒に仲良く出来る相手が出来て嬉しいですわ」
今、からかうって言った?! それってやっぱり……。
「本当に大切なお友達は一生に一人かもしれない。きちんとお話が出来るといいですわね」
にこりとどこかアルベルトに似た美人が微笑む。
「そうですね。そう思います」
「終わったぞー」
向こうも終わったみたい。今日はいろんな事が一気に起こりすぎて頭がくらくらしそう。
「今日から寝るところがわけられるな。あっちの部屋片付けてくる。グリード達も別の部屋用意するか?」
アルテがそう言って、男性陣は寝室のある場所に向かう。
そうだ、手を握る必要がなくなってしまった。一緒の部屋である必要がなくなってしまったんだ。
どうしよう。アルテに気持ちをきちんと言いたい。けれど、私の……、本当の私の事を彼は知ってる。アルテが好きなのはエリーナなのかな。だって、むこうの私はこんなに美人じゃないし、あんなだし……。
この姿で告白して、成功して、私はそれでいいの?
この世界に……、むこうに戻らなければ……?
ぷるぷると首をふって、私も部屋の整頓を手伝いに行った。
「え……」
「……説明ならしておこう」
今戻るの? でも、私――。
「戻れないよ。ナホと話したい。一人でなんて戻れないよ。だって、大事な……、大事な友達なんだよ……。何も知らないまま、一人に出来ないよ」
私が何をして彼女を傷つけたのか、知りたい。それと、二人で帰りたい。もう、彼女を一人にしたくない。
アルテがそっと頭を撫でてくれた。
そうだ、聞かなくちゃ。ナホに。
「……そうか」
グリードが、頷く。そして、指を差し出した。
「あの……?」
「……「魅了」の指輪だ」
「え?」
「アナスタシアの帰る鍵はコレだ」
え? え? えぇぇぇぇ?!
「あの、え?」
「お前もあっちの人間なのか?!」
グリードは目をそらしながら、向こうをむく。答える気がないのかな。
「……あちらに戻りたい。だから、手伝おう」
彼はそう言ったあと、口をつぐんだ。
「わかった、アナスタシアを探さないとだな」
「……うん」
これで、全部揃ったんだ。やることはあとは、レースとアナスタシアと話すこと。
「じゃあ、戻るね。エスケープ」
グリードは、誰で、どうしてここにいるかは、教えてもらえないのかな。
話したくないと態度で示す彼は、聞いたところで教えてくれないのかな。
◇
「おかえりなさい」
「お帰りー」
「おかえりなさいませ」
家にいた三人が出迎えてくれる。
「整備は済んだよ。いつでも飛べるから」
「ありがとう」
「あれ? 髪飾り、かわった?」
ルミナスがめざとく気がつく。
「見つかったんだ。もと俺の腕輪の宝石だとさ」
「あ、見つかったんだ」
彼に、なぜかじーっと見つめられる。あの、何ですか?
私が疑問に思っていると、メイラが頬に手をあてながら嬉しそうに聞いてきた。
「見つかったのに、手を繋いでいらっしゃるのですか?」
………………?!
「あ、えっと! これは、その――」
「あ、これは、その……だな!」
二人して焦っていると、出迎えてくれた三人がそれぞれその人らしく笑っていた。
◇
「――これがカオルの気持ちなんだ」
「そうか――」
離れてルミナスとアルテが話してる。あちらの話、私は部外者だから、終わるまでメイラと紅茶を飲みながら待っていた。
「やっと、戻れるのですね」
「えぇ、でも」
「お友達ですか――」
「はい」
こちらはこちらで重い話になってしまいそう。
「正直、羨ましいですね。私の立場だと、一緒にいる人は誰かに選ばれた人か、私の地位を見る人だけですから。一緒に楽しく遊ぶなんて、夢のまた夢です」
「お姫様ってキラキラしてるけど、やっぱり大変ですよね」
「そうですね。だけど、この前から同じ立場のからかう相手……、あら、一緒に仲良く出来る相手が出来て嬉しいですわ」
今、からかうって言った?! それってやっぱり……。
「本当に大切なお友達は一生に一人かもしれない。きちんとお話が出来るといいですわね」
にこりとどこかアルベルトに似た美人が微笑む。
「そうですね。そう思います」
「終わったぞー」
向こうも終わったみたい。今日はいろんな事が一気に起こりすぎて頭がくらくらしそう。
「今日から寝るところがわけられるな。あっちの部屋片付けてくる。グリード達も別の部屋用意するか?」
アルテがそう言って、男性陣は寝室のある場所に向かう。
そうだ、手を握る必要がなくなってしまった。一緒の部屋である必要がなくなってしまったんだ。
どうしよう。アルテに気持ちをきちんと言いたい。けれど、私の……、本当の私の事を彼は知ってる。アルテが好きなのはエリーナなのかな。だって、むこうの私はこんなに美人じゃないし、あんなだし……。
この姿で告白して、成功して、私はそれでいいの?
この世界に……、むこうに戻らなければ……?
ぷるぷると首をふって、私も部屋の整頓を手伝いに行った。
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