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第一章 聖女と竜
第27話 青竜は置いていかれたくない
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「行くぞ、エマ」
「うん!」
二人で頷きあいリリーの走っていった方へと駆け出す。服がずり落ちそうになるけれど構っていられない。瘴気は噴き出してすぐに対処しなければ大変なことになる。ここはもうそうなってしまった場所かもしれないけれど、放っておいていい理由にはならない。ブレイドが守りたい場所で私には手伝うことが出来る力があるのだから。
「おい、エマちゃんまでオレを置いていくつもりか? 逃げるぞ? 逃げてええんかっ!?」
「ブレイドが置いていったってことは勝手にしろって事でしょ? 私も別にいいわ!」
呪いが完全になくなったわけではないみたいだけれど、キスしろって言われ続けるのも嫌だ。だから勝手にしろって言ってるのに、何故かスピアーはついてくる。いったい何が目的なの?
「あのなぁー、オレは……ブレイドに置いていかれたって何にも思わん。けど、アンタに置いていかれるんがいっちゃんイヤやっ!!」
「そんな事言われてもあなた、私の事何知ってるのよ。会ったばっかりじゃないっ」
「そりゃあ……」
口をヘの形で結んでスピアーは黙り込んでしまった。眉間にシワがよってるのは気のせいかな。機嫌悪そうにしているけどそのままついてくる。だけじゃなく追い抜いていく。
「こっち。オレなら場所もっと正確にわかるから」
ついて行って大丈夫だろうか。そう思う私と、ずっと嘘は言ってないと思う私がせめぎ合う。
「ついて行っていいと思う」
ルニアが後押ししてくれることで私はスピアーについていく事を決めた。
「ぴぃぃっ!! ぴぃ!!」
リリーの声が聞こえる。それに呼応するように、違う声がした。リリーよりも低い声。
「ほら、ついた。ありゃ、魔物化が進んでるなぁ」
「どういうこと?」
眼前にいるのは飛び跳ねるピンク色のスライムと黒い煙を纏う青色のスライム。
「あんまり近づくと、あぁ、ほら」
噴き出す瘴気がリリーへ手をのばす。
「ダメっ!!」
既のところでルニアがリリーを瘴気から引き離すとこちらへと戻ってくる。
「エマ、瘴気をっ」
そうだった。私はそれをなんとかしにきたんだ。
全部全部、消えますように。
祈りを空へと捧げる。私のただ一つ出来ること。
瘴気はゆっくりと消えていきあたりは晴れ渡っていく。
「おぉ、さすがはエマ! はやいな。腹はどうだ? すいてるか?」
「もうお城でのストレスがなくなったから大丈夫」
それに、呪いだってスピアーが解いてくれたらしい。だからもっと大丈夫になってるはず――。
ぐぅぅぅぅ
「…………、なんで?」
お腹すいてる!! すっごいお腹すいたぁぁぁ。
私はスピアーを睨む。全然呪いとけてないんじゃないですか?
「あのな、エマちゃん。それは呪いやのーて習慣や。だから、こっから太る分はオレの責任やないから気をつけてな」
「え、えぇぇぇ!?」
ここからは自己責任……。このお腹の空き具合との戦いが始まる!? 嘘でしょ。
ショックを受けていて気が付かなかった。青い方のスライムがいなくなっていることに。
「エマちゃん!!」
スピアーの腕の中に引き込まれる。何が起きたのかわからなかった。
すぐ横でにゅるんと何かが飛び出してくる。横にいたルニアとリリーが青い何かの中に取り込まれた。消えたと思っていたスライムがそこにいた。
「ルニアっ! リリーさん!!」
「あかん!! エマちゃんまで取り込まれる。スライムは中からの攻撃はほとんど吸収してしまう」
「じゃあ、どうしたら――」
この人に頼ってどうするんだ。何かしてもらえば何かを返さなくちゃいけない。今度は何を言われるかなんてわからないのに。でも――――。
目の前でルニアが、リリーが食べられるなんて嫌だ。
「アイツは体のほとんどが水や。だから、こうしてやればええ」
スピアーはつぶやく。魔法の言葉。
「よしっ!!」
ボコンとスライムが凹む。同時にルニアとリリーが飛び出してきた。ルニアは外の空気を感じ取ったのか目を開き口を大きくあけ息を吸い込む。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!」
彼女は体をひねり受け身をとる。転がり終えるとすぐに立ち上がった。
「ルニアぁ」
私は何も出来なかった。スピアーに助けられてしまった。
「わたしは大丈夫だっ!! それよりエマっ。そっちにいくぞ!!」
食べた物を吐き出させられ、怒り狂ったスライムはこちらへと伸びてくる。
ごめんね。せっかく食べたのに、とられるって嫌だよね。
でも、ルニアはダメ。だって、大事な友達だもの!!
「って、ちょっとスピアー!?」
抱きかかえられてはやいスピードで移動される。空腹のお腹にくる。
「オレの方がはやいだろ」
「それはそうかもだけどっ」
「いいから、任せとけって」
トントントンとリズムよくかけて行く。私なんて持ってないみたいに。
伸びてくるスライムの体を華麗に避け続けている。
「いつものやらないのか?」
「は? いつものって? スピアーこそさっきの魔法でなんとか出来ないの!?」
「ムリ」
「何でよ!」
「いいから、さっきオレにしただろ」
さっきと言われれば、祈りを集中して使う聖女の一撃のこと?
いまそれどころじゃないくらいお腹がすいてるんですけど。こんな状態で使ったら、私死んでしまうんじゃないでしょうか……。
あぁ、でもあの人も人間だったかもしれないんだよね。
覚悟を決めて私は力を集中させる。
「ぶつけるのはオレに任せとけっ」
「わかった」
息をすってスライムをまっすぐ見据える。
「いいよ!」
「おっけーっ!!」
ぐんと一気に近付く。手を前に出すとスライムに触れた。
「聖女の一撃っ!!!!」
「うん!」
二人で頷きあいリリーの走っていった方へと駆け出す。服がずり落ちそうになるけれど構っていられない。瘴気は噴き出してすぐに対処しなければ大変なことになる。ここはもうそうなってしまった場所かもしれないけれど、放っておいていい理由にはならない。ブレイドが守りたい場所で私には手伝うことが出来る力があるのだから。
「おい、エマちゃんまでオレを置いていくつもりか? 逃げるぞ? 逃げてええんかっ!?」
「ブレイドが置いていったってことは勝手にしろって事でしょ? 私も別にいいわ!」
呪いが完全になくなったわけではないみたいだけれど、キスしろって言われ続けるのも嫌だ。だから勝手にしろって言ってるのに、何故かスピアーはついてくる。いったい何が目的なの?
「あのなぁー、オレは……ブレイドに置いていかれたって何にも思わん。けど、アンタに置いていかれるんがいっちゃんイヤやっ!!」
「そんな事言われてもあなた、私の事何知ってるのよ。会ったばっかりじゃないっ」
「そりゃあ……」
口をヘの形で結んでスピアーは黙り込んでしまった。眉間にシワがよってるのは気のせいかな。機嫌悪そうにしているけどそのままついてくる。だけじゃなく追い抜いていく。
「こっち。オレなら場所もっと正確にわかるから」
ついて行って大丈夫だろうか。そう思う私と、ずっと嘘は言ってないと思う私がせめぎ合う。
「ついて行っていいと思う」
ルニアが後押ししてくれることで私はスピアーについていく事を決めた。
「ぴぃぃっ!! ぴぃ!!」
リリーの声が聞こえる。それに呼応するように、違う声がした。リリーよりも低い声。
「ほら、ついた。ありゃ、魔物化が進んでるなぁ」
「どういうこと?」
眼前にいるのは飛び跳ねるピンク色のスライムと黒い煙を纏う青色のスライム。
「あんまり近づくと、あぁ、ほら」
噴き出す瘴気がリリーへ手をのばす。
「ダメっ!!」
既のところでルニアがリリーを瘴気から引き離すとこちらへと戻ってくる。
「エマ、瘴気をっ」
そうだった。私はそれをなんとかしにきたんだ。
全部全部、消えますように。
祈りを空へと捧げる。私のただ一つ出来ること。
瘴気はゆっくりと消えていきあたりは晴れ渡っていく。
「おぉ、さすがはエマ! はやいな。腹はどうだ? すいてるか?」
「もうお城でのストレスがなくなったから大丈夫」
それに、呪いだってスピアーが解いてくれたらしい。だからもっと大丈夫になってるはず――。
ぐぅぅぅぅ
「…………、なんで?」
お腹すいてる!! すっごいお腹すいたぁぁぁ。
私はスピアーを睨む。全然呪いとけてないんじゃないですか?
「あのな、エマちゃん。それは呪いやのーて習慣や。だから、こっから太る分はオレの責任やないから気をつけてな」
「え、えぇぇぇ!?」
ここからは自己責任……。このお腹の空き具合との戦いが始まる!? 嘘でしょ。
ショックを受けていて気が付かなかった。青い方のスライムがいなくなっていることに。
「エマちゃん!!」
スピアーの腕の中に引き込まれる。何が起きたのかわからなかった。
すぐ横でにゅるんと何かが飛び出してくる。横にいたルニアとリリーが青い何かの中に取り込まれた。消えたと思っていたスライムがそこにいた。
「ルニアっ! リリーさん!!」
「あかん!! エマちゃんまで取り込まれる。スライムは中からの攻撃はほとんど吸収してしまう」
「じゃあ、どうしたら――」
この人に頼ってどうするんだ。何かしてもらえば何かを返さなくちゃいけない。今度は何を言われるかなんてわからないのに。でも――――。
目の前でルニアが、リリーが食べられるなんて嫌だ。
「アイツは体のほとんどが水や。だから、こうしてやればええ」
スピアーはつぶやく。魔法の言葉。
「よしっ!!」
ボコンとスライムが凹む。同時にルニアとリリーが飛び出してきた。ルニアは外の空気を感じ取ったのか目を開き口を大きくあけ息を吸い込む。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!」
彼女は体をひねり受け身をとる。転がり終えるとすぐに立ち上がった。
「ルニアぁ」
私は何も出来なかった。スピアーに助けられてしまった。
「わたしは大丈夫だっ!! それよりエマっ。そっちにいくぞ!!」
食べた物を吐き出させられ、怒り狂ったスライムはこちらへと伸びてくる。
ごめんね。せっかく食べたのに、とられるって嫌だよね。
でも、ルニアはダメ。だって、大事な友達だもの!!
「って、ちょっとスピアー!?」
抱きかかえられてはやいスピードで移動される。空腹のお腹にくる。
「オレの方がはやいだろ」
「それはそうかもだけどっ」
「いいから、任せとけって」
トントントンとリズムよくかけて行く。私なんて持ってないみたいに。
伸びてくるスライムの体を華麗に避け続けている。
「いつものやらないのか?」
「は? いつものって? スピアーこそさっきの魔法でなんとか出来ないの!?」
「ムリ」
「何でよ!」
「いいから、さっきオレにしただろ」
さっきと言われれば、祈りを集中して使う聖女の一撃のこと?
いまそれどころじゃないくらいお腹がすいてるんですけど。こんな状態で使ったら、私死んでしまうんじゃないでしょうか……。
あぁ、でもあの人も人間だったかもしれないんだよね。
覚悟を決めて私は力を集中させる。
「ぶつけるのはオレに任せとけっ」
「わかった」
息をすってスライムをまっすぐ見据える。
「いいよ!」
「おっけーっ!!」
ぐんと一気に近付く。手を前に出すとスライムに触れた。
「聖女の一撃っ!!!!」
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