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第二章 赤の瞳と金の瞳
第71話 再来?
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「エマちゃん見とると、思い出すわ」
「スピアー?」
くるくるまわりながら空中を泳ぐスピアーは私達を見て泣いているような笑っているような複雑な表情をしていた。
「めっちゃむかーしな、エマちゃんみたいな女の子がおってん。赤い瞳をした食べる事が大好きな子」
「むかーし?」
「そ、むかーしや」
竜の寿命って人と違ったりするのかな。今の言い方だとずいぶん前に聞こえるけれど。
「何年前くらい?」
「んー、そうやなぁ。エマちゃんが二十回くらい生まれる前やないかなぁ」
「え、何年……」
余計にわからない……。私が二十回生まれるって意味がわからないんだけど。どう考えたらいいの。
「あーまあ、大昔や」
そういうとスピアーは空中で座るようにとまった。
「スピアー、何歳……?」
「ん、オレは二十歳やで」
「余計に意味がわからないよ。それって」
「まあまあ、聞きや。オレなぁ約束した事があってな」
約束という言葉にブレイドがぴくりと反応する。
「女の子はその手で救える者全員を救うと決めとった。えらい大仕事やのになぁ。だからか、まあ、まわりに仲良しよーさんおったわ。オレも含めてな。皆で支えたろって――。懐かしいなぁ」
昔、赤い瞳、皆を救う……、まるでアメリアの話みたいだ。ただ、伝説の竜がスピアーかと言われると納得しがたいというかなんというか……。
「ある日女の子は頼んだんや。私を食べて欲しいって」
「え!? 食べるって、食べる!?」
「そうやで。食べる。だからオレが食べたろって思っとった」
「どうして、そんな事」
スピアーはそれに答えないまま話し続けた。
「だけどなぁ、他のやつに横から盗られたんや。オレは目の前でその子の最後を……約束守れなかったんが悔しかったなぁ」
スピアーはちらりとこちらを見下ろす。
「だから今度はオレが食べたろって思ってるんや。なー、エマちゃん」
「は、え? 遠慮しますっ! って、何で私!?」
いやいや、私はスピアーに食べて欲しいなんて一言もお願いしてないから。知らない人と混同しないでよ。
でも、お願いされてて横から違う人にされてしまうのは辛かっただろうなとも思ってしまう。食べられたくはないけど、私も婚約してて、いきなり知らない人に追い出されたから多少気持ちはわかる。わかるけれどもこれとそれは話が別だ!!
「んー、やっぱりわからんかぁ。エマちゃん、その女の子の生まれ変わりやで」
「……えぇ? 生まれ変わり?」
「そや。魂いうのかな、おんなじ形や」
「そんな事、言われても……」
「スピアー、エマを困らせるなら――」
ブレイドの声がいつもより怖かった。こんな声が出せるんだ。
「ブレイド、自分もそこにおったんやで……」
「……」
「やっぱり、覚えてないか。まあ、しゃーない。オレは別に無理やり食べよーって訳やないから心配せんでええよ」
「普通に怖いよ?」
「その時になったらエマちゃんがお願いしてくるからそばにおれればそれでええんや」
「ないない! ないから!!」
なははと笑いながらスピアーはくるりと一回転した。
なんだか、からかわれただけな気がする。どこまでが嘘でどこまでが本当なのか。でも、気になるところはいくつもあった。もっと聞きたい……。
「ねぇ、スピアー」
「んー? なんや。……あー、話の続きはまたな」
「え?」
ブレイドとスピアーが廊下の先に視線を向ける。
「噂をすれば……ってヤツやな」
外から聞き覚えのある叫びが聞こえてきた。竜の唸り声。まさか、黒竜がまた来たの?
ブレイドが走り出す。何故か私を抱え上げて。
「な、なっ!?」
「流石にさっきの話をされて、あそこには置いておけない」
どう考えても邪魔にしかならない私なのに――。
もし、本当に黒竜だったら……。私を抱えたまま戦うなんて無理だよ……。
「スピアー?」
くるくるまわりながら空中を泳ぐスピアーは私達を見て泣いているような笑っているような複雑な表情をしていた。
「めっちゃむかーしな、エマちゃんみたいな女の子がおってん。赤い瞳をした食べる事が大好きな子」
「むかーし?」
「そ、むかーしや」
竜の寿命って人と違ったりするのかな。今の言い方だとずいぶん前に聞こえるけれど。
「何年前くらい?」
「んー、そうやなぁ。エマちゃんが二十回くらい生まれる前やないかなぁ」
「え、何年……」
余計にわからない……。私が二十回生まれるって意味がわからないんだけど。どう考えたらいいの。
「あーまあ、大昔や」
そういうとスピアーは空中で座るようにとまった。
「スピアー、何歳……?」
「ん、オレは二十歳やで」
「余計に意味がわからないよ。それって」
「まあまあ、聞きや。オレなぁ約束した事があってな」
約束という言葉にブレイドがぴくりと反応する。
「女の子はその手で救える者全員を救うと決めとった。えらい大仕事やのになぁ。だからか、まあ、まわりに仲良しよーさんおったわ。オレも含めてな。皆で支えたろって――。懐かしいなぁ」
昔、赤い瞳、皆を救う……、まるでアメリアの話みたいだ。ただ、伝説の竜がスピアーかと言われると納得しがたいというかなんというか……。
「ある日女の子は頼んだんや。私を食べて欲しいって」
「え!? 食べるって、食べる!?」
「そうやで。食べる。だからオレが食べたろって思っとった」
「どうして、そんな事」
スピアーはそれに答えないまま話し続けた。
「だけどなぁ、他のやつに横から盗られたんや。オレは目の前でその子の最後を……約束守れなかったんが悔しかったなぁ」
スピアーはちらりとこちらを見下ろす。
「だから今度はオレが食べたろって思ってるんや。なー、エマちゃん」
「は、え? 遠慮しますっ! って、何で私!?」
いやいや、私はスピアーに食べて欲しいなんて一言もお願いしてないから。知らない人と混同しないでよ。
でも、お願いされてて横から違う人にされてしまうのは辛かっただろうなとも思ってしまう。食べられたくはないけど、私も婚約してて、いきなり知らない人に追い出されたから多少気持ちはわかる。わかるけれどもこれとそれは話が別だ!!
「んー、やっぱりわからんかぁ。エマちゃん、その女の子の生まれ変わりやで」
「……えぇ? 生まれ変わり?」
「そや。魂いうのかな、おんなじ形や」
「そんな事、言われても……」
「スピアー、エマを困らせるなら――」
ブレイドの声がいつもより怖かった。こんな声が出せるんだ。
「ブレイド、自分もそこにおったんやで……」
「……」
「やっぱり、覚えてないか。まあ、しゃーない。オレは別に無理やり食べよーって訳やないから心配せんでええよ」
「普通に怖いよ?」
「その時になったらエマちゃんがお願いしてくるからそばにおれればそれでええんや」
「ないない! ないから!!」
なははと笑いながらスピアーはくるりと一回転した。
なんだか、からかわれただけな気がする。どこまでが嘘でどこまでが本当なのか。でも、気になるところはいくつもあった。もっと聞きたい……。
「ねぇ、スピアー」
「んー? なんや。……あー、話の続きはまたな」
「え?」
ブレイドとスピアーが廊下の先に視線を向ける。
「噂をすれば……ってヤツやな」
外から聞き覚えのある叫びが聞こえてきた。竜の唸り声。まさか、黒竜がまた来たの?
ブレイドが走り出す。何故か私を抱え上げて。
「な、なっ!?」
「流石にさっきの話をされて、あそこには置いておけない」
どう考えても邪魔にしかならない私なのに――。
もし、本当に黒竜だったら……。私を抱えたまま戦うなんて無理だよ……。
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