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第二章 赤の瞳と金の瞳
第91話 渡された物とあの人の名前
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「え、これは」
ミリアから赤い竜魔石のついた小さな竜魔道具を渡された。
「さっそくお話を聞いてきました。お話していた方からこちらを渡して欲しいとお願いされ持ってきたものです」
警戒していたのが拍子抜けする。笑顔でミリアが丁寧にお辞儀する。
「それと、ルフムイアがハヘラータに戦を仕掛けようとしているのはご存知でしょうか」
「えっ」
「さすがにこの国を通っては行かないでしょうけれど、隣国の事なので早急にブレイド様のお耳に届けようと思い、昨日の今日と急な訪問になってしまった事を謝罪します」
昨日と違い、引き気味の対応に戸惑ってしまう。
「どこからその話を?」
「わたくし達聖女はたくさんの国にいます。ですから、情報はすぐに届きます。まあ、たまに隠匿する子もいますが……。今回は聖女がいない国ルフムイアの話ですが、隣国にはたくさんいますから……。気になりますか? ブレイド様」
「そうだな。よっぽどの理由がなければ動かないルフムイアが動くというのは気になる。そうさせた理由があるのだろうか」
私の家がある場所だから気にしてくれたのかな。ブレイドが聞きたい事を聞いてくれる。話してくれるのかな。
「詳しく話してさしあげたいところですが、わたくし達の事を迎えいれてくださるとお約束いただけないと――」
「――そういう事なら、話さなくていい」
やっぱり無理だよね。情報は武器になる。この情報をハヘラータに届ければ準備が出来るし、逃げたりも出来る。急襲であればそんなことも出来ないかもしれない。選択肢が増えるのだ。
「それではわたくし達は行く場所があるのでこれで」
ミリアはクロウの手を引き、外に向かわせる。
「クロウ?」
クロウは私をじっと見ながら立ち止まっていた。
「あの、私に何か?」
「……ハヘラータに仕掛けたのは将軍の娘が産んだ子をないがしろにしたからだそうだ」
「ちょっと、クロウ!?」
「子の名前はラヴェル。ハヘラータの王になるはずだった男。本当なら、自国に等しくなるはずだった国を手中にするつもりなのではないか?」
「あ、あの……」
「クロウ!! 行きますよ!!」
「あぁ……」
ミリアに引っぱられながらクロウは竜になり、空へと消えていった。
なぜだろう。彼が会ったばかりの時のブレイドに見えた。
それにしても、またその名前を聞くなんて思ってもみなかった。
元婚約者、ハヘラータの王子ラヴェル。
ハヘラータの王レトーは更生させると言っていた。だから、私はそれを信じて瘴気の活動を抑える装置を起動した。
あの時はただラヴェルが婚約破棄しただけだって思ってたから。辛かったけど、太ってたのは事実だったし。
「ラヴェル……」
「エマ、大丈夫?」
「うん。大丈夫。ブレイド――」
「おーい、そろそろ瘴気の出る時間やで」
そうだった。先にそっちの対処に向かわないと。
「うん、いこ――」
「行くけど、エマは何もしないで」
「……うん」
ブレイドに言われ、私は頷いた。
このまま守られてるだけでいいのかな。瘴気が竜に悪くないって証明はどこにもないんだよね。
私は、たくさんのもやもやを抱えながら瘴気の出る場所へと向かった。
ミリアから赤い竜魔石のついた小さな竜魔道具を渡された。
「さっそくお話を聞いてきました。お話していた方からこちらを渡して欲しいとお願いされ持ってきたものです」
警戒していたのが拍子抜けする。笑顔でミリアが丁寧にお辞儀する。
「それと、ルフムイアがハヘラータに戦を仕掛けようとしているのはご存知でしょうか」
「えっ」
「さすがにこの国を通っては行かないでしょうけれど、隣国の事なので早急にブレイド様のお耳に届けようと思い、昨日の今日と急な訪問になってしまった事を謝罪します」
昨日と違い、引き気味の対応に戸惑ってしまう。
「どこからその話を?」
「わたくし達聖女はたくさんの国にいます。ですから、情報はすぐに届きます。まあ、たまに隠匿する子もいますが……。今回は聖女がいない国ルフムイアの話ですが、隣国にはたくさんいますから……。気になりますか? ブレイド様」
「そうだな。よっぽどの理由がなければ動かないルフムイアが動くというのは気になる。そうさせた理由があるのだろうか」
私の家がある場所だから気にしてくれたのかな。ブレイドが聞きたい事を聞いてくれる。話してくれるのかな。
「詳しく話してさしあげたいところですが、わたくし達の事を迎えいれてくださるとお約束いただけないと――」
「――そういう事なら、話さなくていい」
やっぱり無理だよね。情報は武器になる。この情報をハヘラータに届ければ準備が出来るし、逃げたりも出来る。急襲であればそんなことも出来ないかもしれない。選択肢が増えるのだ。
「それではわたくし達は行く場所があるのでこれで」
ミリアはクロウの手を引き、外に向かわせる。
「クロウ?」
クロウは私をじっと見ながら立ち止まっていた。
「あの、私に何か?」
「……ハヘラータに仕掛けたのは将軍の娘が産んだ子をないがしろにしたからだそうだ」
「ちょっと、クロウ!?」
「子の名前はラヴェル。ハヘラータの王になるはずだった男。本当なら、自国に等しくなるはずだった国を手中にするつもりなのではないか?」
「あ、あの……」
「クロウ!! 行きますよ!!」
「あぁ……」
ミリアに引っぱられながらクロウは竜になり、空へと消えていった。
なぜだろう。彼が会ったばかりの時のブレイドに見えた。
それにしても、またその名前を聞くなんて思ってもみなかった。
元婚約者、ハヘラータの王子ラヴェル。
ハヘラータの王レトーは更生させると言っていた。だから、私はそれを信じて瘴気の活動を抑える装置を起動した。
あの時はただラヴェルが婚約破棄しただけだって思ってたから。辛かったけど、太ってたのは事実だったし。
「ラヴェル……」
「エマ、大丈夫?」
「うん。大丈夫。ブレイド――」
「おーい、そろそろ瘴気の出る時間やで」
そうだった。先にそっちの対処に向かわないと。
「うん、いこ――」
「行くけど、エマは何もしないで」
「……うん」
ブレイドに言われ、私は頷いた。
このまま守られてるだけでいいのかな。瘴気が竜に悪くないって証明はどこにもないんだよね。
私は、たくさんのもやもやを抱えながら瘴気の出る場所へと向かった。
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