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三つの国

もとの場所は

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 テトとフェレリーフが床に手をつく。

「異世界に向かった魂を呼び戻し、再びこの地に!」

 ズハリが叫ぶと白い光が溢れ、まるでここにきた時のように包み込まれていく。

「嫌、私は、私は――!!」

 ◇

「おはよう、すずちゃん」

 外から結愛の声がする。

「すずめ、行くわよー!」

 この声は麻美だ。

「はーい、今行くよー」

 ずっと仲良しの私達。一度はバラバラになりかけた。あの日、結愛が言ったのだ。私は、普通の女の子になりたいと。だから、私達は皆で決めた。ただの女の子に戻ろうって。

「男の子に告白された?」
「あはは、何人目だろう」
「あみちゃん、さすがだねー」

 三人で学校に向かう。それぞれの教室に入って、自分の机に向かう。

 カサリ

 机の中に手紙が入っていた。

『――――鈴芽さんへ
 放課後、理科室前に来てもらえませんか。
 伝えたいことがあります。
 ――――中井敦』

 理科室前、放課後は人気がない場所。
 私は、言われた通りに向かった。

「好きです。付き合って下さい」

 野球部の男の子。よく日焼けした顔が赤くなってる。

「あ、えっと」

 私、好きな人は――――。あれ、なんで私答えにこんなに困っているんだろう。好きな人なんて今までいなかったはずなのに。

「――駄目」
「え、あ、あははは、駄目ですか」

 自分でもわからないけれど、駄目という言葉が頭の中でこだました。絶対に答えないでと私の中の私が言う。

「ごめんなさい」

 ダッと走ってその場から離れる。どうして駄目なの?
 私……、私はどうしてここにいるの?

「ヨウ! ヨウ!!」

 家に帰って着替えて、外を走る。夕焼けがもう落ちそうで、暗い空が面積を占めていく。

「私、ここは、何で?」

 ここは私の世界。でも確かに私はヨウに触れてた。

「ヨウ! ヨウ!」

 あんな怪我してて、そのままなんて何かあったらどうしよう。
 走って走って探すけれど、どこまで行っても私の知ってる世界。
 どうして、私ヨウを守らなくちゃいけないのに。

 テトのことが好きなのに?

 違う、私は、私は!

 そうだ、今ならわかる。私は、私はっ!

「ヨウが好きなの!!!!」

 暗くなった空に叫ぶ。道行く数人が振り返った。

「私はヨウが好き。私の歌、ほめてくれた。大好きだって言ってくれた。私も、私も……」
「……すずめ」
「誰!」
「ロウが待ってる!!」

 この声は、この声は――。

「スズ!?」

 気がつくと真っ暗な場所にいた。

「私は向こうで生きていく。普通の女の子として」

 光の中で見たスズがソコにいた。

「あなたはどうしたい?」
「私、ヨウの横で歌いたい。大好きなヨウの横で」

 スズはにこりと笑って手を引っ張った。

「大丈夫だよ。私達なら!!」
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