6 / 189
第一章・光の精霊の国
06話・ぎゅーっとドンッ!
しおりを挟む
「ふぅ、危なかった」
アリスに手を引かれて、私はどこかの部屋に連れてこられた。
ここはいったいどこですか?
「あの、ア、アリスト……さん?」
アリスの耳がピンッと立ち、手をグイッと引かれ、顔が近づいてくる。
「アリスちゃんでいいよー?」
ニコニコしながら、圧をかけてくる。お、怒ってる? だんだん近づいてくる綺麗な顔にドキドキして、顔が赤くなる。
「アリスちゃん!」
よしっと言って、にこりとし、手と顔が離れた。ほっとしたのも束の間、目の前が急に真っ暗になった。これは、まさかのハグ?!
ぎゅっと、抱き締められて心臓が破裂しそうなほどドキドキしている。なんで私は抱き締められてるんだろう?!
「やっぱりいい匂いだねー」
あ、マタタビですか? そういえば、なんとなくおきっぱなしもなーって思って身につけてた。どこにとは言えないけど……。
「あのアリスちゃん! 聞きたいことが――」
なんとか拘束から抜け出して、確かめたいことを聞くことにした。少し残念そうな顔と垂れた耳が可愛かったがまずは確かめなくちゃ。
「まず、ここはどこ?」
「ボクの部屋」
おーのー。初男性の部屋。じゃなくて! 城の中にこんなお部屋があって、先程の王様やカトル王子に対する態度から推察するに、もしかして、
「えっと、アリスちゃんは王子様?」
「そうだよ? 第二王子だけどねー」
おーのー。綺麗なお姉さんどころか王子様。あれ、しかも年下だったりしますか? じゃなくって!
「さっきの、危なかったって? どういうことですか?」
アリスが指輪を指差す。これが何なんだろう?
「陛下の言う力を貸してくれ。忠誠を誓ってくれっていうのはね、この国と契約してくれってこと。ボクと先に契約してるから出来ないけどねー。国と契約しちゃうとさ、この国に縛られちゃうんだ」
「えっ」
「リサちゃんは元の世界に帰りたいんだよね? でも、国と契約してしまうとたとえ帰る方法が見つかっても帰ることが出来なくなっちゃうよね?」
「あ、そっか」
帰る可能性を消滅させるところだったのか。それはたしかに危なかった。
「だから国と契約しちゃ駄目だよ。ボクのは個人契約だから外せないことはないけど国の方は結んじゃうと外せなくなる」
その話、聖女の子はしっかり説明してもらったのかしら? 聞いて納得してるなら別にいいのだけど――。だけどもし、聞いてなかったら……? ぶるっと身震いする。
「ボクと契約しておけば、国と契約は結べないし、ボクの専属ってことで城の中で探し物ができる。ボクは第二王子だから、父上兄上より自由がきく、顔もきく。探し物するなら便利でしょ!」
「なるほど」
たしかに、とても助かる。でも、アリスにメリットはあるの? さっきも王様やカトル王子に怒られそうだったような。
「マタタビのお礼にしては、助けてもらいすぎなような?」
「んー、その契約っていうのはね、花嫁になるっていうことだよ。だから、ボクの花嫁さんだから何でも手伝うよ!」
どーーーーん。
ニコニコと笑いながら爆弾を落としてきた。は、花嫁?!
私、結婚しちゃったの?! しかも超美人な王子様と!?
アリスに手を引かれて、私はどこかの部屋に連れてこられた。
ここはいったいどこですか?
「あの、ア、アリスト……さん?」
アリスの耳がピンッと立ち、手をグイッと引かれ、顔が近づいてくる。
「アリスちゃんでいいよー?」
ニコニコしながら、圧をかけてくる。お、怒ってる? だんだん近づいてくる綺麗な顔にドキドキして、顔が赤くなる。
「アリスちゃん!」
よしっと言って、にこりとし、手と顔が離れた。ほっとしたのも束の間、目の前が急に真っ暗になった。これは、まさかのハグ?!
ぎゅっと、抱き締められて心臓が破裂しそうなほどドキドキしている。なんで私は抱き締められてるんだろう?!
「やっぱりいい匂いだねー」
あ、マタタビですか? そういえば、なんとなくおきっぱなしもなーって思って身につけてた。どこにとは言えないけど……。
「あのアリスちゃん! 聞きたいことが――」
なんとか拘束から抜け出して、確かめたいことを聞くことにした。少し残念そうな顔と垂れた耳が可愛かったがまずは確かめなくちゃ。
「まず、ここはどこ?」
「ボクの部屋」
おーのー。初男性の部屋。じゃなくて! 城の中にこんなお部屋があって、先程の王様やカトル王子に対する態度から推察するに、もしかして、
「えっと、アリスちゃんは王子様?」
「そうだよ? 第二王子だけどねー」
おーのー。綺麗なお姉さんどころか王子様。あれ、しかも年下だったりしますか? じゃなくって!
「さっきの、危なかったって? どういうことですか?」
アリスが指輪を指差す。これが何なんだろう?
「陛下の言う力を貸してくれ。忠誠を誓ってくれっていうのはね、この国と契約してくれってこと。ボクと先に契約してるから出来ないけどねー。国と契約しちゃうとさ、この国に縛られちゃうんだ」
「えっ」
「リサちゃんは元の世界に帰りたいんだよね? でも、国と契約してしまうとたとえ帰る方法が見つかっても帰ることが出来なくなっちゃうよね?」
「あ、そっか」
帰る可能性を消滅させるところだったのか。それはたしかに危なかった。
「だから国と契約しちゃ駄目だよ。ボクのは個人契約だから外せないことはないけど国の方は結んじゃうと外せなくなる」
その話、聖女の子はしっかり説明してもらったのかしら? 聞いて納得してるなら別にいいのだけど――。だけどもし、聞いてなかったら……? ぶるっと身震いする。
「ボクと契約しておけば、国と契約は結べないし、ボクの専属ってことで城の中で探し物ができる。ボクは第二王子だから、父上兄上より自由がきく、顔もきく。探し物するなら便利でしょ!」
「なるほど」
たしかに、とても助かる。でも、アリスにメリットはあるの? さっきも王様やカトル王子に怒られそうだったような。
「マタタビのお礼にしては、助けてもらいすぎなような?」
「んー、その契約っていうのはね、花嫁になるっていうことだよ。だから、ボクの花嫁さんだから何でも手伝うよ!」
どーーーーん。
ニコニコと笑いながら爆弾を落としてきた。は、花嫁?!
私、結婚しちゃったの?! しかも超美人な王子様と!?
0
あなたにおすすめの小説
召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
異世界に行った、そのあとで。
神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて
奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】
※ヒロインがアンハッピーエンドです。
痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。
爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。
執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。
だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。
ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。
広場を埋め尽くす、人。
ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。
この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。
そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。
わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。
国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。
今日は、二人の婚姻の日だったはず。
婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。
王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。
『ごめんなさい』
歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。
無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる