私は聖女じゃない?じゃあいったい、何ですか?

花月夜れん

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第一章・光の精霊の国

24話・欲しい

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 長い廊下を歩いてカナちゃんの部屋に着いた。
 誰にも気がつかれないのがとても不思議だ。ここにいるのに見えていないのかな。

「カナちゃん?」

 カナちゃんがベッドに寝ている。先ほど見た時と変わらない。

「リサ、こっちだ」

 ライトが指差す方向に、光の塊がふわりふわりと浮いていた。とても弱々しい光で今にも消えてしまいそう。

「この光がカナちゃん?」

 こくりとライトが頷く。
 えっと、ただの光の塊にしか見えないけれど…。
 私はそっと、ふわふわと浮く光へと近づいた。

「……誰?」

 かすかに声が聞こえた。

「あなたがカナちゃん?」
「……そう。私はカナ。あなたは?」
「私は莉沙。石井莉沙いしいりさよ」

 カナはチカリと小さく光った。

「日本人?」
「そう。私は日本からここにきた。あなたと同じ」
「……帰り方を知ってる?」

 息が止まる。帰れないという説明を受けていないのだろうか。この子も、帰り方を探してる?!
 答えにつまる。どこまで言ってもいいのだろうか。 

「ごめんね、私はここにきたばかりで。私も帰り方を探しているところなの」
「……」

 光が弱くなってしまった。

「カナちゃん、一緒に探そう。帰る方法。だから私とお話、しよう! 聞きたいこともあるし」

 何かを考えているのか、沈黙が少しだけ続いていた。

「……うん。リサさん、約束よ。帰る方法一緒に探してね」

 カナちゃんのお返事が貰えた。とたんに、光が強くなった。
 すると、急に壁の角から黒い生き物が飛び出した。

「ギューィギューィ、セイジョフッカツゼツボウセズセイジョフッカツ」

 一つ目の蛇に小さな蝙蝠の翼がついているそいつはとても耳障りな声で鳴いた。

「シッパイシッパイ」

 ジュゥゥと、黒い霧が吹き出し、黒い生き物は姿を消した。

「何? 今の?」

 ライトはそれをただじっと見ているだけだった。

「カナ、戻れるか?」
「……その声はライト?」
「あぁ」
「……戻れるわ」

 すっと光がカナちゃんのもとに行き、吸い込まれるように消えた。

「これで良かったの?」
「あぁ、カナは戻った」
「いったい何だったの?」

 ……。
 ライトは口をつぐんでしまった。
 教えたくないのかな。

 ーーー

 部屋に戻る。また廊下を通って。
 ぽつりぽつりとライトが喋った。

「カナは弱い。なぜ、リサが先にこの世界に呼ばれなかったのか」
「あの……?」
「リサ、お前なら僕の花嫁に相応しかったのに」

 先に進んでいたライトがくるりと振り向き、手を伸ばしてくる。
 私はびくりと、体を縮めた。
 ライトの手が一瞬止まって、ふわっと髪に触れてくる。ゆっくりと顔が近づいてきた。

「リサが欲しい」

 耳元で囁かれ顔が真っ赤に染まる。私は両手を前にだし、顔を隠した。人差し指で光る指輪に気付いたライトはそのままスッと離れていった。

「おやすみ、リサ。またね」

 そう言うと、ライトの姿が暗い廊下へと消えていった。
 ドキドキドキドキと心臓の音がうるさい程はやくなっていた。
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