私は聖女じゃない?じゃあいったい、何ですか?

花月夜れん

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第二章・火の精霊の国

60話・ぴーちゅんの

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「どうしたんですか?」

 声をかけると若い鬼さんは、すいません急いでいるので! と叫び再び馬に跨がり城へと走って行った。彼の走って行ったあとに赤黒い血らしき水玉が点々と数個落ちていた。ドレン達に何かあったのだろうか。

「アリスちゃん…」
「んー? どうせ気になるって言うんでしょ」

 バレている。

「ボクも気になるし、行こうか。番の巣に。ただ、ルードがいるから、リサちゃんをここに置いて行けない。一緒になるよ? いい?」

 私はコクンと頷く。

「何が起こるかわからないから、ボクから離れないでね」

 アリスが指笛を吹くとすぐにぴーちゅんが飛んできた。

「よろしくね、ぴーちゅん」

 そう言って、魔力を渡そうと指を近づけるとぴーちゅんがぷいっと首をふった。

「あれ、ぴーちゅん?」

 アリスが指を近づけても近づけてもその度にぷいっぷいっと首をふる。五回目くらいにぴーちゅんがパタパタとアリスの肩から私の頭に移動してきた。

「あー、リサちゃんの魔力が食べてみたいのかな……?」

 ん? 私の?
 ぴーちゅんは肯定しているのか、ピチュと一回鳴いた。

「いいよ、どうすればいいの?」
「指を近づけて、魔法を使うときみたいに魔力を渡すんだ」
「こう?」

 私は指をぴーちゅんのくちばしに近づけて、大きくなーれと思いながらツンと触れてみた。

 ボフン

 いつものように大きくなったぴーちゅん……? あれ?
 なんだかいつもより一回り大きいし、黒い飾り羽が頭についている。あんなのあったっけ? まるでソーイのあの時に見た寝癖みたい。

「食べさせた人の魔力が影響するんだ。ボクの時は尾が銀色だったでしょ」

 なるほど、そういえば。え、まって実は私アホ毛生えてる!?
 頭を手でポンポンと急いで確認し、私はアホ毛の存在の有無を調べた。
 ない……よね?
 隣ではクックッと一応おさえながら笑うアリスがいた。しっぽは楽しそうに全力でフリフリしてますけど!

「じゃあ、急ごうか」
「うん」

 まだ少し顔が赤い気がするけれど、私達は番の巣へとむかうためぴーちゅんに乗った。

 後ろから、アリスト様ー! という叫びが聞こえてきた気がしたけれど、聞こえないフリです。ごめんなさい、ルードさん。
 バサッと、羽を広げぴーちゅんは飛び立った。風に乗り、空高く舞いあがった時に下から笛の音が響いた。

 ピィーーーー!
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