61 / 189
第二章・火の精霊の国
60話・ぴーちゅんの
しおりを挟む
「どうしたんですか?」
声をかけると若い鬼さんは、すいません急いでいるので! と叫び再び馬に跨がり城へと走って行った。彼の走って行ったあとに赤黒い血らしき水玉が点々と数個落ちていた。ドレン達に何かあったのだろうか。
「アリスちゃん…」
「んー? どうせ気になるって言うんでしょ」
バレている。
「ボクも気になるし、行こうか。番の巣に。ただ、ルードがいるから、リサちゃんをここに置いて行けない。一緒になるよ? いい?」
私はコクンと頷く。
「何が起こるかわからないから、ボクから離れないでね」
アリスが指笛を吹くとすぐにぴーちゅんが飛んできた。
「よろしくね、ぴーちゅん」
そう言って、魔力を渡そうと指を近づけるとぴーちゅんがぷいっと首をふった。
「あれ、ぴーちゅん?」
アリスが指を近づけても近づけてもその度にぷいっぷいっと首をふる。五回目くらいにぴーちゅんがパタパタとアリスの肩から私の頭に移動してきた。
「あー、リサちゃんの魔力が食べてみたいのかな……?」
ん? 私の?
ぴーちゅんは肯定しているのか、ピチュと一回鳴いた。
「いいよ、どうすればいいの?」
「指を近づけて、魔法を使うときみたいに魔力を渡すんだ」
「こう?」
私は指をぴーちゅんのくちばしに近づけて、大きくなーれと思いながらツンと触れてみた。
ボフン
いつものように大きくなったぴーちゅん……? あれ?
なんだかいつもより一回り大きいし、黒い飾り羽が頭についている。あんなのあったっけ? まるでソーイのあの時に見た寝癖みたい。
「食べさせた人の魔力が影響するんだ。ボクの時は尾が銀色だったでしょ」
なるほど、そういえば。え、まって実は私アホ毛生えてる!?
頭を手でポンポンと急いで確認し、私はアホ毛の存在の有無を調べた。
ない……よね?
隣ではクックッと一応おさえながら笑うアリスがいた。しっぽは楽しそうに全力でフリフリしてますけど!
「じゃあ、急ごうか」
「うん」
まだ少し顔が赤い気がするけれど、私達は番の巣へとむかうためぴーちゅんに乗った。
後ろから、アリスト様ー! という叫びが聞こえてきた気がしたけれど、聞こえないフリです。ごめんなさい、ルードさん。
バサッと、羽を広げぴーちゅんは飛び立った。風に乗り、空高く舞いあがった時に下から笛の音が響いた。
ピィーーーー!
声をかけると若い鬼さんは、すいません急いでいるので! と叫び再び馬に跨がり城へと走って行った。彼の走って行ったあとに赤黒い血らしき水玉が点々と数個落ちていた。ドレン達に何かあったのだろうか。
「アリスちゃん…」
「んー? どうせ気になるって言うんでしょ」
バレている。
「ボクも気になるし、行こうか。番の巣に。ただ、ルードがいるから、リサちゃんをここに置いて行けない。一緒になるよ? いい?」
私はコクンと頷く。
「何が起こるかわからないから、ボクから離れないでね」
アリスが指笛を吹くとすぐにぴーちゅんが飛んできた。
「よろしくね、ぴーちゅん」
そう言って、魔力を渡そうと指を近づけるとぴーちゅんがぷいっと首をふった。
「あれ、ぴーちゅん?」
アリスが指を近づけても近づけてもその度にぷいっぷいっと首をふる。五回目くらいにぴーちゅんがパタパタとアリスの肩から私の頭に移動してきた。
「あー、リサちゃんの魔力が食べてみたいのかな……?」
ん? 私の?
ぴーちゅんは肯定しているのか、ピチュと一回鳴いた。
「いいよ、どうすればいいの?」
「指を近づけて、魔法を使うときみたいに魔力を渡すんだ」
「こう?」
私は指をぴーちゅんのくちばしに近づけて、大きくなーれと思いながらツンと触れてみた。
ボフン
いつものように大きくなったぴーちゅん……? あれ?
なんだかいつもより一回り大きいし、黒い飾り羽が頭についている。あんなのあったっけ? まるでソーイのあの時に見た寝癖みたい。
「食べさせた人の魔力が影響するんだ。ボクの時は尾が銀色だったでしょ」
なるほど、そういえば。え、まって実は私アホ毛生えてる!?
頭を手でポンポンと急いで確認し、私はアホ毛の存在の有無を調べた。
ない……よね?
隣ではクックッと一応おさえながら笑うアリスがいた。しっぽは楽しそうに全力でフリフリしてますけど!
「じゃあ、急ごうか」
「うん」
まだ少し顔が赤い気がするけれど、私達は番の巣へとむかうためぴーちゅんに乗った。
後ろから、アリスト様ー! という叫びが聞こえてきた気がしたけれど、聞こえないフリです。ごめんなさい、ルードさん。
バサッと、羽を広げぴーちゅんは飛び立った。風に乗り、空高く舞いあがった時に下から笛の音が響いた。
ピィーーーー!
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
異世界に行った、そのあとで。
神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!?
元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる