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第三章・水の精霊の国
74話・猫と鼠
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歌が終わりを迎えたのか、彼女の歌声が細くなっていく。
「ラララァーー――――」
全ての人が彼女に視線を向ける。ペコリとお辞儀をして彼女は立ち上がった。
あ、足がもとに戻ってる。
彼女の横に、二人の男性が近づいていく。
「彼がこの国の王子、水の乙女は王子の近くに仕えることが出来るから、国中の女の子の憧れなんだ。特に結婚してない王子がいる時は」
なるほど、すごい競争率になるわけね。
二人の男性のうち一人が、彼女の手をとっている。彼が王子様なのかな?
「ライトコールみたいに、この国の王子も二人いるんだ。彼は弟のクレス王子だね」
あ、王子様二人いるんだ。じゃあ、もう一人も王子様なのかな? それともお付きの人?
「今は二人とも王子が結婚していないから、次の乙女を決めるのは大変だろうなぁ。まあ、それ以前に大変なんだろうけど」
なんだか、含みのある言い方……。
「何かあるの?」
「んー、後継問題……かな」
あー、あの弟王子様が自分こそ王に! とか、後ろ楯がなんちゃらとかなのかなぁ。
アリスは耳を伏せている。あまり続けたくない話題なのかな。
「二人いるなら、第一王子こそが王に成るべきです」
ルードが渾身の一撃をいれてくる。
あー、もうまた始まるんじゃないかな、舌戦……。
「そうだね」
あれ?
アリスは、乙女と手を繋ぐ弟王子を見ながらポツンと呟いた。
なぜだろう、アリスがとても寂しげな顔をしている。
ルードは、特に反論のないアリスを見て少しバツが悪そうだった。
彼らは、兄弟という何かが引っ掛かっているのかもしれない。そう思いながら、私はこのなんとも言えない雰囲気の中、欠伸をしてしまった。
ふぁぁ
我慢なんてできません! 眠たいんです!
アリスはお昼寝したから元気なんだろうけど!
「あぁ、ごめんね。リサちゃん。そろそろ寝に戻ろうか」
「すみません、お願いします」
普通の眠気と戦いながら、私達は湖をあとにした。
小さな精霊達がクスクスと笑いながら手をこちらに振っていることに誰も気がつかないまま。
ーーー
マルのおうちは宿屋も兼ねているそうで、部屋を貸して貰えた。アリスは各国の旅の途中で使う寝床をしっかり確保しているみたい。ドレンの時といい、今回といい。本当に顔が広い。いったいどれだけ知り合いや友達がいるんだろう。
今回から、ルードさんが加わったんだけど……。あれ?
何故か、部屋にいるのは私とアリス。あれ?
「リサちゃん、何で頭に? を浮かべてるのかな?」
「あ、えっと、ルードさんが見当たらないなぁーって」
キョロキョロと顔を動かす。なんだか、アリスがこっちに近づいてきてる! だんだんだんだんとこっちに――
「彼は別の部屋だよ。何で、ルードを同じ部屋にしないとダメなのかなぁ?」
「あ、別にそういう意味じゃ……」
「じゃあ、何で?」
近い近いちーかーいーーーー!
私は壁際に追い詰められる。猫に追い詰められ襲われかけてる鼠の気持ちぃぃぃっ!
青い眼がじっとこちらを見ている。
「あの、あの! あのっ!」
いっぱいいっぱいになって言葉が浮かんでこない。そうしてる間にもアリスの顔が目の前に迫ってきた。
私は、ぎゅっと目をつぶってしまった……。
「ラララァーー――――」
全ての人が彼女に視線を向ける。ペコリとお辞儀をして彼女は立ち上がった。
あ、足がもとに戻ってる。
彼女の横に、二人の男性が近づいていく。
「彼がこの国の王子、水の乙女は王子の近くに仕えることが出来るから、国中の女の子の憧れなんだ。特に結婚してない王子がいる時は」
なるほど、すごい競争率になるわけね。
二人の男性のうち一人が、彼女の手をとっている。彼が王子様なのかな?
「ライトコールみたいに、この国の王子も二人いるんだ。彼は弟のクレス王子だね」
あ、王子様二人いるんだ。じゃあ、もう一人も王子様なのかな? それともお付きの人?
「今は二人とも王子が結婚していないから、次の乙女を決めるのは大変だろうなぁ。まあ、それ以前に大変なんだろうけど」
なんだか、含みのある言い方……。
「何かあるの?」
「んー、後継問題……かな」
あー、あの弟王子様が自分こそ王に! とか、後ろ楯がなんちゃらとかなのかなぁ。
アリスは耳を伏せている。あまり続けたくない話題なのかな。
「二人いるなら、第一王子こそが王に成るべきです」
ルードが渾身の一撃をいれてくる。
あー、もうまた始まるんじゃないかな、舌戦……。
「そうだね」
あれ?
アリスは、乙女と手を繋ぐ弟王子を見ながらポツンと呟いた。
なぜだろう、アリスがとても寂しげな顔をしている。
ルードは、特に反論のないアリスを見て少しバツが悪そうだった。
彼らは、兄弟という何かが引っ掛かっているのかもしれない。そう思いながら、私はこのなんとも言えない雰囲気の中、欠伸をしてしまった。
ふぁぁ
我慢なんてできません! 眠たいんです!
アリスはお昼寝したから元気なんだろうけど!
「あぁ、ごめんね。リサちゃん。そろそろ寝に戻ろうか」
「すみません、お願いします」
普通の眠気と戦いながら、私達は湖をあとにした。
小さな精霊達がクスクスと笑いながら手をこちらに振っていることに誰も気がつかないまま。
ーーー
マルのおうちは宿屋も兼ねているそうで、部屋を貸して貰えた。アリスは各国の旅の途中で使う寝床をしっかり確保しているみたい。ドレンの時といい、今回といい。本当に顔が広い。いったいどれだけ知り合いや友達がいるんだろう。
今回から、ルードさんが加わったんだけど……。あれ?
何故か、部屋にいるのは私とアリス。あれ?
「リサちゃん、何で頭に? を浮かべてるのかな?」
「あ、えっと、ルードさんが見当たらないなぁーって」
キョロキョロと顔を動かす。なんだか、アリスがこっちに近づいてきてる! だんだんだんだんとこっちに――
「彼は別の部屋だよ。何で、ルードを同じ部屋にしないとダメなのかなぁ?」
「あ、別にそういう意味じゃ……」
「じゃあ、何で?」
近い近いちーかーいーーーー!
私は壁際に追い詰められる。猫に追い詰められ襲われかけてる鼠の気持ちぃぃぃっ!
青い眼がじっとこちらを見ている。
「あの、あの! あのっ!」
いっぱいいっぱいになって言葉が浮かんでこない。そうしてる間にもアリスの顔が目の前に迫ってきた。
私は、ぎゅっと目をつぶってしまった……。
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