私は聖女じゃない?じゃあいったい、何ですか?

花月夜れん

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第六章・土の精霊の国

132話・狐の獣人

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 そっか、リンに会いたいからあそこにいたわけじゃないんだ。
 アリスも問題を解決するために――。

「彼女をライトコールに連れて行っても、ボクは第二王子だから、兄上と対立するようなことはしたくない。彼らを保護する権限を持てない可能性がある。それに、ライトコールは光の精霊と逆の闇の精霊、獣人の姿を嫌っている。王子なのに、この耳と尻尾で産まれてしまって――。」

 アリスがあの時言っていた、初めて言われたの意味はもしかしてそういうことだったのかな……。

「かといって、王家の血を外にだす訳にもいかないんだ。だから、彼女をボクが娶ることはないよ」

 アリスはリンとのことを話し続ける。私はそんなことを聞きたいわけじゃない……。だって、それじゃあ、血や国の問題が無かったら? 私の中にどろどろした感情が湧き出す。
 また、左の腕輪が熱くなる。黒い腕輪は魔なる力――だっけ?
 あぁ、そっか。私が最初、魔なる力が高い魔女だったのはもしかして――。

「もう、大丈夫だよ。ごめんね、急に泣いてしまって。狐の獣人さんにはやく盗ったものを返してもらって問題解決しよう!」
「狐?」

 こくんと一度頷いて私は続ける。

「土の精霊さんが言っていたの。狐獣人から盗られた物を取り戻して欲しいって」

 アリスは、何か掴んだのか顎に指を当て、耳をピンとたてていた。

「あそこにいる狐獣人はコウ君だけだ」
「知り合い?」

 こくりとアリスは頷いた。

 ーーー

「リサ様、アリスト様!」

 入り口でルードが待っていた。リンとスペードの姿は無い。

「お二人はすぐに戻ってくるからと、ここで待つようにスペード様から」
「あ、ごめんね」
「いえ、リサ様、大丈夫ですか?」

 ルードも心配してくれている。

「大丈夫、大丈夫」

 今度は笑えた。よかった、リンがここにいたらきっとまたへたれてしまうところだったかもしれない。
 もしかして、スペードが連れ出してくれたりしたのかな……。

「狐獣人だとわかったのなら、リンに聞かなくても彼の住居は知ってる。行こう」
「――わかりました」

 三人で、狐獣人のコウという人の家へと向かった。

 ーーー

 ドワーフの家と昔の日本に出てくる家を足して半分にしたような家が建ち並んでいる。

「この辺は建物が違うのね」
「このあたりはもともとタカマガハラとの国交用にあった街だからね」
「不思議な感じ。私の国の建物に似てる」
「リサちゃんの?」
「うん、でも私の住んでる国の昔話とかに出てくるような感じかな」
「そうなんだ」

 てくてくと歩いていくと、火事でもあったかの様な黒いあとのある場所に着いた。ここはいったい?

「アリスト様?」
「ここに住んでいた家族の一人がコウ君。火事で一人生き残った狐獣人最後の一人なんだ」
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