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第六章・土の精霊の国
137話・理由と説明
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「アリスちゃん、何処にいったんだろう」
今、私はポツンと一人、宿の部屋にいる。時刻はもう、三つの月が昇った夜だ。暗いなか、アリスは用事をしに外へと出掛けた。
土の精霊さんとはまだ連絡が取れていない。本当に向こうから来てくれるのかなぁ?
「あら、寂しいならアタシが話し相手になる?」
「サラ」
横にポフンッと座って足を投げ出したサラが、にこりと笑いかけてくれた。この世界で、仲良くお喋りできる数少ない女友達の姿にホッとする。
「貴女達が二人っきりになりたーーい! ってずーーっと思ってるからなかなか姿を見せにくいのよねー」
え、まって。それって……。
サラの話からすると、まさか、精霊達があまり姿を見せないのって……。
「そうよー。一応空気読んでるし、邪魔にならないように出来るだけ隠れてたんだけどね。それにしても二人とも奥手ねー」
ボンッと、頭から蒸気が噴き出す気がした。
「みみみみみ、見てたの!?」
サラはうふふと目を細めて笑っている。
「大丈夫よ、その時は流石に覗かないから」
「あの、――普段も出来ればお願いします」
クスクスと彼女は笑う。
うぅぅ、これからは居るかもしれないと思いながら過ごさないとなのかしら。というか、その時って……。
「気にしなくていいのに。精霊なんてそこにもそこにもどこにだっているんだから」
「わかってるけど……」
それでも、喋ることが出来る相手に見られるというのは、ねぇ。
「何か話したいこととかある?」
「あ、うん。その、今日あったことなんだけど」
「なぁに?」
「人が魔物になることってよくあるの?」
サラは、あぁと、たぶん今日の事を思い出しながら答えてくれた。
「ないわ。あれは大きな魔力の塊があったからよ」
「じゃあ、大きな力は――、私の魔力は大丈夫なの?」
「……。今はまだ大丈夫よ。魔物にはならないわ。不安にならないで」
「いつかは、可能性があるの?」
サラが困った顔になった。これは可能性があるということなのかな。
「そうね、あなたの力は成長を続けているの。いったいどこまで成長するのかアタシにもわからないわ」
「成長してる――」
「ええ、そういえば前に説明が途中だったわね。彼に貰った指輪も精霊に貰った指輪も、相手と魂を繋ぐ力があるの。そして、誓いの指輪は、相手を守れるようにとお互いの力を引き上げる力があるわ。貴女達、とても相性が良かったのね。普通はちょっと増えて終わりなのに――。会った時からすでにすごい力だったリサの力はその後もずっと増え続けているのよ」
私はアリスにもらった指輪を見た。左手の人差し指にぴたりとはまったこの指輪が、やっぱり私の力を強くしたんだ。
このまま強くなりすぎたら、もしかして私も?
「聖なる力も成長しているから、大丈夫よ」
サラはそう言ってくれるが、不安が拭えない。
だって、アリスが側にいない、この瞬間も感じたくない猜疑心がこちらを見ている気がする。
もしかして、またリンのところに? ――なんて。
「あら、帰ってきたわ」
「え?」
「あいつの気配が近くに来てる」
あ、そっか。アリスとウォータは一緒にいるから。
サラはよっと、反動をつけて立ち上がり振り返る。
「それじゃあ、アタシはまた消えておくわね」
頑張ってと、手を振りながらサラは姿を消した。
頑張れって、――。
あぁ、そうだ。私、言おうと決めてたんだ。
この話をしても、彼は……。私は……。
ぎゅうっと、目を瞑ってアリスが部屋に戻ってくるのを待った。
すぐに、コンコンと小さくノックする音がした。
今、私はポツンと一人、宿の部屋にいる。時刻はもう、三つの月が昇った夜だ。暗いなか、アリスは用事をしに外へと出掛けた。
土の精霊さんとはまだ連絡が取れていない。本当に向こうから来てくれるのかなぁ?
「あら、寂しいならアタシが話し相手になる?」
「サラ」
横にポフンッと座って足を投げ出したサラが、にこりと笑いかけてくれた。この世界で、仲良くお喋りできる数少ない女友達の姿にホッとする。
「貴女達が二人っきりになりたーーい! ってずーーっと思ってるからなかなか姿を見せにくいのよねー」
え、まって。それって……。
サラの話からすると、まさか、精霊達があまり姿を見せないのって……。
「そうよー。一応空気読んでるし、邪魔にならないように出来るだけ隠れてたんだけどね。それにしても二人とも奥手ねー」
ボンッと、頭から蒸気が噴き出す気がした。
「みみみみみ、見てたの!?」
サラはうふふと目を細めて笑っている。
「大丈夫よ、その時は流石に覗かないから」
「あの、――普段も出来ればお願いします」
クスクスと彼女は笑う。
うぅぅ、これからは居るかもしれないと思いながら過ごさないとなのかしら。というか、その時って……。
「気にしなくていいのに。精霊なんてそこにもそこにもどこにだっているんだから」
「わかってるけど……」
それでも、喋ることが出来る相手に見られるというのは、ねぇ。
「何か話したいこととかある?」
「あ、うん。その、今日あったことなんだけど」
「なぁに?」
「人が魔物になることってよくあるの?」
サラは、あぁと、たぶん今日の事を思い出しながら答えてくれた。
「ないわ。あれは大きな魔力の塊があったからよ」
「じゃあ、大きな力は――、私の魔力は大丈夫なの?」
「……。今はまだ大丈夫よ。魔物にはならないわ。不安にならないで」
「いつかは、可能性があるの?」
サラが困った顔になった。これは可能性があるということなのかな。
「そうね、あなたの力は成長を続けているの。いったいどこまで成長するのかアタシにもわからないわ」
「成長してる――」
「ええ、そういえば前に説明が途中だったわね。彼に貰った指輪も精霊に貰った指輪も、相手と魂を繋ぐ力があるの。そして、誓いの指輪は、相手を守れるようにとお互いの力を引き上げる力があるわ。貴女達、とても相性が良かったのね。普通はちょっと増えて終わりなのに――。会った時からすでにすごい力だったリサの力はその後もずっと増え続けているのよ」
私はアリスにもらった指輪を見た。左手の人差し指にぴたりとはまったこの指輪が、やっぱり私の力を強くしたんだ。
このまま強くなりすぎたら、もしかして私も?
「聖なる力も成長しているから、大丈夫よ」
サラはそう言ってくれるが、不安が拭えない。
だって、アリスが側にいない、この瞬間も感じたくない猜疑心がこちらを見ている気がする。
もしかして、またリンのところに? ――なんて。
「あら、帰ってきたわ」
「え?」
「あいつの気配が近くに来てる」
あ、そっか。アリスとウォータは一緒にいるから。
サラはよっと、反動をつけて立ち上がり振り返る。
「それじゃあ、アタシはまた消えておくわね」
頑張ってと、手を振りながらサラは姿を消した。
頑張れって、――。
あぁ、そうだ。私、言おうと決めてたんだ。
この話をしても、彼は……。私は……。
ぎゅうっと、目を瞑ってアリスが部屋に戻ってくるのを待った。
すぐに、コンコンと小さくノックする音がした。
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