私は聖女じゃない?じゃあいったい、何ですか?

花月夜れん

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第七章・闇の精霊の国

143話・闇の精霊の国

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 ――波打ち際。ざざーん、ざざーんと白波が打ち寄せては遠くへと帰っていく。
 頬をでる風が少し塩っぽくて、重たい。
 広い砂場が広がる海岸に私達は立っていた。

「ここがタカマガハラから一番近いとされている場所だ」
「アリスちゃん、黒いもやがあそこにかかってる気がする」
「どこ?」
「あそこ」

 その場所に向かって指を指すが、彼の目に止まることがない現象なのだろうか、わからない様子だ。

「あそこが、タカマガハラが眠っている場所っすね」
「眠っている?」
「そうっす」

 スペードには見えているみたいで、答えてくれた。
 あそこにタカマガハラが――。

「あそこに行くにはまず、浮上させないとっすね」
「浮上?」

 どういうことなのだろう。水の精霊の国で見たお城みたいに、魔力に反応するとかなのかな?

「ここからは、皆さん、浮上するまでここで待機してもらっていいっすか? 僕とリサだけで行ってくるんで」

 え……。まさかの二人っきり? どうやってタカマガハラに行くの? 全然わからないんですけど!

「どういうことだ? ボクも一緒に!」

 私が言いたいことを先に言われてしまった。本当にどういうことですか?
 面倒めんどうだなーという顔をしながら、帽子を押さえスペードは話す。

「彼女が、乗せるのは認めた者だけなんでねっす」

 ピィーーーーと、スペードが指笛を吹いた。
 彼女……?

 クルルルルーーー

 変わった鳴き声で、スペードに呼ばれたは空からこの砂浜に降り立った。
 白色に見える鱗の長い身体、光が反射する場所は虹のように輝く。細くてきれいなたてがみも光をまとって神々こうごうしい。

りゅう――」
「ドラゴン――」
「世界の担い手――」

 それぞれがその姿を見て、声をあげる。

「そう、彼女はこの世界を支える二柱の一本。光のドラゴン、グリッター。その背には、リサと僕以外乗せられないっす。申し訳ないけれど、浮上するまで待っててくださいっす」
「認めたって、どういう――」
「僕とリサ以外は彼女が嫌がるんで、我慢しろっていってるんだ! ……すぐに済むっすから、魔力の無駄遣むだづかいはせずにそこでじっとしていろってことっす」

 タカマガハラに行くには、彼のやり方に従うしかないのかもしれない。
 彼が、イラつき始めている気がするので私は従う事を決めた。

「スペード、行こう。私も行かないと駄目なんでしょう? アリスちゃん、ルードさん、ここで待ってて」
「リサ様、お気をつけて」

 ルードはすぐに、返事をしてくれたけれど、アリスは渋っている。

「大丈夫、ちゃちゃっと頑張ってくるね。だからアリスちゃんは、浮かんだらすぐ迎えにきてね」
「うん……」

 垂れた耳を立て直し、彼は告げる。

「すぐ行くね」
「うん」

 頷いて、竜とスペードの元へと近付いた。近くで見てもその輝きはとても美しい。
 あれ、この腕輪……。
 竜の前肢まえあしに、黒と白のリングがはまっている。
 同じ……。
 私は自分の腕輪をちらりと見て確かめた。

「それじゃあ、お願いしますっす、グリッター」

 クルルルル

 姿に似合わない可愛い声で鳴いて、彼女は羽を広げる。

「風の精霊よ」

 ふわりと、スペードに持ち上げられグリッターの背に乗る。座って、横に手を添えると鱗なので冷たいかと思っていたその場所は温かかった。

「いくっすよ」
「はい」

 バサリと大きな羽ばたきをしたグリッターは勢いよく空に駆け上がり、地上にいるアリス達はすぐに小さくなった。

「黒い靄がかかってる場所に着いたら水の結界をはってもらえますかっす?」
「いいけれど、何故?」
「水の中に、潜るっす」
「え゛…………」
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