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第1話
私セシリアは両親がおらず、親戚の家を転々としておりましたが、最終的に修道院へと厄介払いされました。
しかし修道院には衣食住が揃っていて、私にとっては今までのどんな家よりも住み心地が良かったのです。
頼る身内もいない子供でしたので、将来は教会に関する仕事に就き、自立したいと修行に励んでおりました。
そんな中、司教様から私に聖女になる資格があるとお言葉をいただいたのです。
それは今まで生きてきた中で、一番の希望となりました。
私は一層、修行に励みました。
しかし、私が聖女の資格を持つことにやっかみを持つ子供たちもいました。
特にその傾向が強かったのが、公爵令嬢のヘスターでした。
ヘスターは嗜みとして昼間だけ修道院に預けられていた貴族の子供で、自分には婚約者がいて結婚するから修道院の修行なんてしなくていいと公言するような子供でした。
へスターは自分にはない聖女の資格を持つ私を馬鹿にし、虐めてきました。
靴を隠されたり、食事のスープを顔にかけられたり。グループで私を囲み悪口や叩く蹴る、髪を引っ張るなんて事は日常茶飯事でした。
私は毎日泣いていました。
それでも私の心には聖女になれるという希望で満たされていました。神に祈りを捧げるとき、この上のない幸福感に包まれていました。
それがどんなに目を覆うような虐めにあっても、私の心を支えてくれたのでした。
しかし、事件は起きました。
聖女を任命する大切な儀式の日、私は虐めグループに隠された儀式のための法衣を探していました。そして用具倉庫に自分の法衣を見つけ、取りに入ったところ、外から扉を閉ざされ閉じ込められてしまったのです。
私は泣き叫びながら開けてくれるよう頼みましたが誰も応えてはくれませんでした。
私は数時間、閉じた扉を叩き続け、両手が血まみれになったところで修道女に発見されました。
儀式はすでに終了し、私は聖女にはなれませんでした。
遠くで少女たちの笑い声が聞こえる。
へスターの声だ。
憎い、と思った。
聖女への憧れを心の支えにしていた頃とは違い、今まで抱かなかった黒い感情が一気に噴き出してきた。
遊び半分で奪った私の人生、どうしてくれるのかと呪いに呪った。
数日後、聖女という希望を失った私を不憫に思った司教様が、お子様のいない貴族の老夫婦への養子縁組を勧めてくださいました。
夢を失った私は頑なな態度を取る他なかったのですけれど、後の両親となるこのご夫婦はとても愛情深い方々で私を迎えてくださりました。
初めての家族の愛情を少しづつ受け取りながら、私は16歳になりました。
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