暴走♡アイドル2 ~ヨゾラノナミダ~

雪ノ瀬瞬

文字の大きさ
57 / 142
中編

鳳凰イデア

しおりを挟む
 萼の鉄拳が顔のど真ん中に炸裂した。綺夜羅は殴り飛ばされ転がった。

『どうしたんや、もう終わりか?』

『ジョーダン言うな。お前だけは倒していく』

 とは言ったものの綺夜羅はタイマンでこれ程押されているのは初めてだった。

 反対側ではさっきまであんなに暴れまくっていた掠が50人近くを相手にしてさすがにバテてきているらしく、手を出すより出される方が圧倒的に多くなってきてしまっている。

『綺夜羅!掠!』

 咲薇は2人を助ける為立ち上がった。落ちている木刀を拾うと囲まれている掠の方に目をやった。

 すると暴走侍の群れの向こうから誰かが暗闇の中こちらへ歩いて向かってくるのに気づいた。

『誰や、あれ』

 見えるのは真っ白い髪と肌。近づいてくるとその顔立ちは日本人のものでないことがよく分かった。真っ赤な着物のような物を羽織っていて、その人物はすぐそこまで来ると喋り始めた。

『ここらで最近有名な狐言うんはどいつでっしゃろか?』

 その場にいる全員に十分行き届く張りのある声で女が言うと、綺夜羅と萼、掠と暴走侍の女たちも手を止め、その声の主に注目させられていた。

『え?言葉が通じないんか?こん中に白狐言う腐れ外道はおるんかおらんのか、どっちどすか?』

 外国人のような顔をしているが使う言葉は流暢で京都の方の訛りらしい。それを見て誰かが言った。

『まさか…不死鳥の鳳凰イデア?』

 その名が出た瞬間暴走侍たちは1歩下がってしまった。

『鳳凰イデアやて?』

 萼は綺夜羅との決着など構いもせずその人物の顔を見に歩いて近づいていく。

『鳳凰イデア言うたら超有名人やないか。こんなとこで何しとんねん』

『質問しとるのはこっちどす。ここに狐はおるんかおらんのか、早よ答えなはれ』

『ほーお、京都の方まで狐を知っとるなんて狐も名が上がったなぁ』

 ここは暴走侍の集まる場所、言わばアジトだ。ましてやこのケジメという場に綺夜羅たちに続いて、たった一人で乗りこんできたという事実は萼からしたら完全に舐められているという以外言い表しようがなかった。

 明らかな不快感を顔に出している。対するイデアは顔色1つ変えない。

『まさか、あんさんが狐はんどすか?』

『…さぁな。そしたらなんやねん』

 咲薇はイデアから溢れでるような殺気を感じた。

 イデアは懐に手を忍ばせ萼を鋭い視線でにらみつけた。

『…斬る』

『萼!よけや!』

 咲薇が叫んだのとほぼ同時にイデアは懐から短い刀を抜き払った。

『うぉっ!』

 萼は間一髪の所で刀をよけた。

 短刀というのだろうか。50センチもないが、短い、でも立派なちゃんとした刃物だ。

 今イデアは完全に斬るつもりだった。咲薇が叫ぶのが一瞬でも遅かったらバッサリやられていた。

『このくそあまぁ!』

 萼は落ちていた木刀を拾い構えた。

『そんな棒きれでは相手になりまへんぞ』

『うっさいわ!』

 2人は間合いを取り、武器を向けながらにらみ合った。

 時刻はもう午前2時を過ぎ月には雲がかかり始めた。夜の闇が深くなり広がっていくのが目に映る周りの景色から感じられた。

 やがて月の明かりが完全に消えてしまうと、誰もいないはずだった影からもう1体白い人影現れた。

 それは真っ直ぐ萼とイデアの方に向かって走りだした。

『なんだ、あいつ…』

 いち早くその存在に気づいたのは綺夜羅だった。白装束のような物を着て何か奇妙な模様の面を被っている。その姿は極めて不気味で直感で嫌なものを感じた。

『おい!何かそっちへ行ったぞ!』

 綺夜羅が叫ぶと萼とイデアもその存在に気づいた。見るとその人物は刀を持っている。イデアの持っているような短い物ではなく、長くちゃんとした日本刀だ。走りながらそれを抜くと萼に斬りかかった。

「カキィィン!!」

 勢いよく振り下ろされた日本刀を意外にもイデアがその間に入り短刀で食い止めた。

『なんや…こいつ』

『貴様が白狐どすな?』

 確かに狐の化物のような面で、白装束と思った物も白いまっさらな特攻服のようだ。

 どうやら本当に白狐本人らしい。やはり亡霊ではなく実在する人間だったのだ。

 白狐は大きく刀を振り回し萼とイデアを退けると今度は逃げるように走りだした。

 しかしその方向には咲薇が立ち尽くしている。

『咲薇!』

 綺夜羅は言葉より先に走りだしていた。

 白狐は咲薇に向かって先程と同じように刀を振り下ろした。咲薇は1歩も動けないでいる。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』

本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」 かつて、私は信じていた。 優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な── そんな普通のお兄ちゃんを。 でも── 中学卒業の春、 帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、 私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった! 家では「戦利品だー!」と絶叫し、 年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、 さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!? ……ちがう。 こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない! たとえ、世界中がオタクを称えたって、 私は、絶対に── お兄ちゃんを“元に戻して”みせる! これは、 ブラコン妹と 中二病オタク姫が、 一人の「兄」をめぐって 全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──! そしていつしか、 誰も予想できなかった 本当の「大好き」のカタチを探す、 壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...